活動期間 : 2024年9月30日~10月5日
活動参加者 : 小倉記念病院消化器内科主任部長
白井保之(医師)
AMDA理事長 佐藤拓史(医師)
AMDA副理事長 難波妙(調整員)
活動場所 : 日本モンゴル教育病院
2016年9月より開始したモンゴルにおける内視鏡技術移転事業は、コロナ禍の2020年、2021年を除いて毎年実施され、日本人医師、モンゴル医師がともに治療にあたることで、モンゴルの内視鏡治療技術の向上を目指しています。
本年度もモンゴル医師免許の下、Tsogt-ochir Byambajav 医師の率いる日本モンゴル教育病院内視鏡医チームとともに以下の治療を実施しました。
治療:胃静脈瘤 ヒストアクリル3例
EISL 1例
食道静脈瘤 EISL 6例
ダブルバルーン小腸内視鏡 1例
検査:上部、下部内視鏡検査 6人
この他にも白井医師による門脈圧亢進症についての講義や、佐藤医師によるシミュレーターを使ってのフェローに対する下部内視鏡のトレーニングなども行いました。
白井医師の感想
モンゴルにおける内視鏡技術移転プロジェクトは今回3回目となりました。
モンゴルは肝硬変の頻度が高く、食道胃静脈瘤の治療を必要としている人が多くいることを実感しました。日本ではめったに見ないような大きな静脈瘤の症例を短い期間にたくさんモンゴルで経験しました。そして内視鏡の技術や治療戦略、デバイスや薬剤が十分でなく、日本で行われているような治療が十分なされていないという現実をまのあたりにしました。
モンゴルに十分な静脈瘤治療を届けたいという気持ちが沸き上がりました。
2022年、最初の研修では、モンゴルにあるデバイスを用いて効率よく治療をする戦略を伝授しました。
そして翌年、2回目の研修で、モンゴル初の内視鏡的静脈瘤硬化結紮術(EISL)という治療を紹介しました。そのためにモンゴルの全国消化器学会でレクチャーを行い、実技練習を重ね、日本から持ち込んだ薬やデバイスで実際に治療を行いました。
今回3回目の研修では、胃静脈瘤に対してヒストアクリルという瞬間接着剤を静脈瘤の中に打ち込む治療をより安全に行う方法をレクチャーし、実際に治療を行いました。また昨年行ったEISLを必要としている患者が多く待機しておりその治療も行いました。
リスクの高い大きな静脈瘤に対する治療が多く、冷や汗もでましたが、トラブルなく治療を終えることができて安心しました。
モンゴルの医師たちは非常に勉強熱心で、知識・技術が急速に成長しておりこの治療をモンゴルで行うことが可能であると実感しました。今後、この治療が広く普及していくことを望んでいます。そしてまだモンゴルに普及していない新しい治療の必要性を講義やディスカッションを通じてお伝えしました。これから食道胃静脈瘤についてモンゴル医療が目指すべき道が見えてきました。
モンゴルの医師やスタッフは、なにかとよく接してくれて、来るたびに楽しい時間が過ごせており感謝しています。このプロジェクトがお互いにとって非常にいい経験になっていると思います。