ルワンダ学校保健プロジェクト2020年度報告(業務委託) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ルワンダ学校保健プロジェクト2020年度報告(業務委託)

プロジェクトオフィサー 橋本 千明


登校時における児童の検温

福島県にあるNPO法人ルワンダの教育を考える会の学校保健(学校健診)プロジェクトに対し、AMDAが協力を開始して5年半が経過しました。これまで岡山県、長崎大学、岡山大学、フェリシモ、岡山医療センター、有志ボランティアなど多くの方が関わって下さいました。ルワンダの教育を考える会としては最終的に学校健診がルワンダのすべての学校で行われるよう、ルワンダ政府を含む多くの関係諸機関と協力していくことを目指しています。

2020年度はルワンダも新型コロナウイルスの影響を受けました。特にルワンダ全土のロックダウン、学校の休校により活動計画の変更を余儀なくされました。こうした状況を受けAMDAは2020年11月、学校再開のタイミングに合わせ子どもたちへの緊急対応を目的に業務委託契約を締結し、ルワンダ人看護師による感染対策のサポートを行っています。

活動拠点であった首都キガリのウムチョムイーザ学園では、以前看護師さんを常駐させていました(ルワンダでも大変珍しい取り組みです)。学校健診でも毎回協力してくれていた前任の看護師さんが、コロナ禍で病院勤務へ戻るため退職されてしまい、学校内で急務となっていた感染対策を行える人がいないことが問題となっていました。

そこで業務委託の中で看護師を配置し、新たにルワンダ人看護師のナタリーさんという方(保護者の中で看護師資格を持つ方です)が、子どもたちへのマスク着用、手洗いやソーシャルディスタンスの確保の指導を学校の先生と協力して実施しています。
これまでのAMDAのからの協力経緯とともに、現地から届いた2020年度の活動報告をご紹介させて下さい。

 ◇これまでの経緯

2015年:

  • ルワンダの教育を考える会よりAMDAに、「運営するルワンダの首都キガリの学校で健康面の理由から学業を続けられない子どもが多くいるという課題があり、日本式の学校健診を試験的に導入したい」という相談を受ける。具体的にはルワンダ人医師への学校保健(学校健診)の知識・技術を得たいと協力要請を受ける。
  • AMDAが岡山県へ現状を説明、岡山県ローカルトゥローカル国際貢献技術移転事業を通じて事業提案を行い、ルワンダの教育を考える会が推薦するルワンダ人医師(アキンティジェ・シンバ・カリオペ)が研修員として来岡。学校保健・学校健診の知識・技術について研修を受けルワンダへ帰国。
  • 帰国後カリオペ医師が試験的に学校健診を実施してみたところ、両親、PTA、地域、自治体などへの説明が必要。
  • 日本人医師の同席を希望される。

2016年~2019年:
〈ルワンダの教育を考える会〉

  • カリオペ医師が、学校健診を試験的に導入。
  • 包括的な学校保健を目指し、学校給食、栄養支援等を実施。
  • 期間限定で看護師資格を持つ児童の保護者をキーパーソンとして歯磨き、手洗い指導を実施。

〈AMDA〉

  • 年1回9月に1週間程度、岡山より小児科医師を派遣。学校健診をルワンダ人医師らと実施。

※派遣に関して、岡山県、長崎大学、岡山大学、有志ボランティアの協力を得る。
※AMDAより合計医師4人、看護師1人派遣。

2020年:
〈ルワンダの教育を考える会〉

  • 新型コロナウイルスの影響で活動地の学校が政府の指示により休校となる。
  • 学校健診は実施できず。
  • 2020年11月より学校を再開するにあたり、感染予防対策が可能な看護師雇用について協力要請を受ける。

〈AMDA〉

  • 小児科医師の派遣は計画せず。
  • ルワンダの教育を考える会へ、新型コロナウイルス対応を含む学校保健について、「学校保健プロジェクト」として事業業務委託を行う。

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以下、現地から届いた2020年度の活動報告となります。

◇2020年度ルワンダ学校保健事業 (学校健診プロジェクト)

2020年4月から2021年3月まで実施したルワンダ学校保健事業は、主にキガリ市にあるウムチョムイーザ学園を対象に行われた。このほか、同プロジェクトでは、北部ギクンビ地域ミヨベ村の児童達に対しても健康観察を行った。
注)

◆プロジェクト実施期間:2020年4月~2021年3月
(2020年度の現地でのプロジェクト実施期間 ※AMDAとの業務委託契約は2020年11月~)

◆従事者(役割、肩書、所属含む):
1. アキンティジェ・シンバ・カリオペ
(医師、ルワンダの教育を考える会 ルワンダ事務局長)
2. トゥワヒルワ・ナタリー
(ルワンダの教育を考える会 学校看護師)

◆責務:

  • 児童を対象とした健康診断の実施
  • 疾病のスクリーニングと予防に関するサービスの提供
  • リプロダクティブヘルス・性教育
  • 身体の衛生管理
  • 環境教育
  • 緊急時におけるケガの手当てや身体的不調のケア
  • 児童の栄養状態に関するモニタリング
  • 保護者に対する児童の健康状態のフィードバック

◆現地チーム構成:
医師による指導の下、当プロジェクトを担当する学校看護師が一連の業務を監督、遂行した。

学校看護師の責務には以下が含まれる:

  • 疾病のスクリーニングと予防に関するサービスの提供
  • 6年生を対象としたリプロダクティブヘルスおよび性教育
  • 児童と教師を対象とした衛生教育(口腔衛生、手洗い、入浴など)
  • 緊急時におけるケガの手当てや身体的不調のケア
  • 保護者に対する児童の健康状態のフィードバック

◆受益者数:

  • ウムチョムイーザ学園:児童250名
  • ミヨベ村:児童89名および22名の妊婦と授乳中の母親達

◆活動のまとめ:
1. 新型コロナウイルスの蔓延により一時的に閉鎖されていた学校が2020年11月より再開。児童に対し、手洗いとソーシャルディスタンスについて指導した。またウムチョムイーザ学園では、忙しい教師達にかわり、朝、子供達や来校者に対して看護師が検温を行った。これは学校のリーダー達に大いに喜ばれた。

2. 同じく11月、全ての児童や職員に対し、緊急時におけるケガの手当てや身体的不調のケアを開始した。加えて、新型コロナウイルスの感染予防を中心とした健康教育を実施。これらの活動の際、次のような症状やケガが児童に見られた。

  • 軽度のケガ、外傷
  • 鼻炎
  • 頭痛
  • 胃炎
  • 動悸
  • 腰痛など

児童を対象とした定期的な健康観察や緊急時における対応は、教師達および学校長より称賛された。その理由は、これらの活動を開始して以来、病気で学校を欠席する児童の数が劇的に減った為である。総じて生徒達の心身の健康改善と学業向上に貢献しているといえる。

3. 12月、児童を対象にリプロダクティブヘルスおよび性教育に関する授業を行った。思春期における身体の変化や、望まない妊娠を避ける上での心構え、また性交渉を介して感染する病気などについてプレゼンテーションを行った。子供達には、本人達がこれまで他人に訊くことができなかったことを質問する機会を与えることができ、大変有意義な時間となった。生徒達は熱心にプレゼンテーションに聞き入っており、沢山の質問が寄せられた。この時間を通じて多くを学んだ様子であった。子供達の民度を高め、きちんとした教育を受けた子供達の数を増やす上では、こういった機会は必須であるといえる。

◆活動写真:


ケガをした児童に処置を施す学校看護師


リプロダクティブヘルスに関する授業

 

◆関係者の声(ウムチョムイーザ学園のスクールリーダーおよび生徒達より):

1. シナメニェ・チャールズ(ウムチョムイーザ学園代表)

「私自身、ウムチョムイーザ学園に何年もおりますが、これまで看護師が在籍したことはありませんでした。かつて多くの生徒が様々な病気により学校を休んでいましたが、看護師がやってきてから病欠者の数が劇的に減りました。現在では彼女と一緒に、若い世代に対し、望まない妊娠や性感染症、その他非感染症の予防について指導しています。またこのコロナ禍において、生徒達の検温を定期的に実施することで、教師側の感染リスクを抑えています。これにより、教師達も安心して授業を行うことができます。ルワンダの教育を考える会の皆さんをはじめ、AMDAの皆さんには、ルワンダの子供達に対し、このような唯一無二の機会を与えて下さり、厚く御礼申し上げます。また同NPOのカリオペ先生には、私達の学校でこのプロジェクトを実施して頂いたのみならず、事業継続に必要なリソースを日本から絶えず調達して下さり、本当に感謝しています。一方、地方に暮らす子供達は、様々な健康上の問題を抱えています。こうしたことを念頭に、いかに現在の活動を他の学校へと広げていくかを考える時期に差し掛かっていると思います。」

2. アカリザ・ベリンダ (2年生)

「私の名前はベリンダです。ウムチョムイーザ学園の2年生です。これまで、時々心臓がどきどきして、思うように勉強ができませんでした。でも、同じ症状が起きたら、今は看護師さんのところへ行くようにしています。看護師さんは、私を休憩できる場所に連れて行って下さり、動悸がおさまるまで一緒にいてくれます。動悸がおさまると、私は教室に戻ります。私達の健康にとって、看護師さんはとても大切です。ありがとうございます。」

3. ジサ・アルナウド(6年生)

「僕の名前はジサ・アルナウドです。ウムチョムイーザ学園の6年生です。学校に看護師さんがいることは本当に重要なことだと思います。なぜなら、僕達は看護師さんが提供してくれる様々なケアを受けることができるからです。看護師さんは薬をくれたり、ケガの手当てをしてくれたりします。この前、腕をケガした時、家に帰るかわりに看護師さんのところへ行きました。マッサージをしてもらい、今はもう大丈夫です。おかげで、気持ちよく過ごせています。ありがとうございます。」

【文責】トゥワヒルワ・ナタリー(学校看護師)
【承認】アキンティジェ・シンバ・カリオペ(医師、ルワンダの教育を考える会 ルワンダ事務局長)