アジアを視野に医療ネットワークを – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

アジアを視野に医療ネットワークを


11月3日。ベトナムのホーチミン市にある国防省の175病院のソン院長と懇談。175病院は南沙諸島を含めた旧南ベトナム全体をカバーしている。400億円かけて新病院を建築中である。

175病院内に国際クリニックを設立して日本の医療機関と連携、日本人医師の派遣と両国の若手医師の交流、必要があればベトナム人患者の治療を日本の医療機関でお願いしたい。ベトナムの富裕層はシンガポールで治療を受けている。昨年、175病院と連携協定を締結した岡山済生会総合病院で3カ月間の研修中である外科部長のタオ医師の体験にもとづいた提案である。アカデミックな交流に加えて本格的な医療連携の期待である。なお、中国からの要望もある。日本式医療への高い評価である。

国際医療貢献には2種類ある。一つは、平均寿命世界一の日本モデルの啓蒙と普及。もう一つは、日本の高い質の医療を日本国内でアジアの患者に提供することである。シンガポールは複数の国家戦略プログラムを構築。その一つが医療立国である。人材育成をするシンガポール大学はアジアナンバーワンの格付けである。他に二つの医学部。大規模総合病院群に加えて種々の専門病院群を基盤としてアジア各国に医療ビジネスを展開している。ただし、個人の富裕層が対象であり、治療費は驚がくする金額である。

一方、岡山と倉敷には二つの医学部(岡山大学と川崎医科大学)と八つの総合病院(岡山大学病院、川崎医科大学附属病院、岡山済生会総合病院、岡山医療センター、岡山赤十字病院、岡山市立市民病院、岡山労災病院、倉敷中央病院)に加えて心臓病センター榊原病院、チクバ外科胃腸科肛門科病院、おおもと病院、倉敷成人病センターなどの専門病院群がある。連携すれば規模も内容的にもシンガポールに負けない。ポイントは医療ビジネスではなく国際医療貢献のコンセプトのもとに展開すること。国民的合意が得られる。

この構想におけるシンボルは11月をもって岡山大学を退官、カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授に就任した佐野俊二氏である。世界的レベルの心臓手術と心筋再生研究能力で招へいされている。1年間に2カ月間は海外での心臓手術が可能である。アジアの難治性心臓疾患の小児を持つ親が彼の手術を受けるために確実に岡山に来る。

八つの総合病院とそのほかの専門病院群にはアジアの患者が必要とするレベルの高い専門医がたくさんいる。優秀な医師の県外からの招へいも考えられる。アジアの患者を受ける医療機関ネットワークを構築し、実力のある医師たちをアジアに積極的に紹介すれば新基軸の国際医療貢献になる。

石井正弘知事が制定した岡山県国際貢献推進条例にもとづいて4年間、年1回開催してきた国際医療貢献フォーラムが、来年から「国際医療貢献プラットフォーム」として活動を開始する。この団体の活動の一つとしてアジアの有力な医療機関群と岡山を中心とした医療機関ネットワークの学術交流と治療連携の推進がある。ただし治療費はシンガポールにおける治療費の5~7割。連携する国内外の医療機関にはアジアの災害などに関する緊急人道支援活動もお願いしたい。

「オープン相互扶助」による尊敬と信頼の醸成。世界平和への道である。なお、この構想にはミッション産業としての企業の参加も不可欠。大歓迎である。経済界との新たな連携分野の開拓である。「西のジュネーブ、東の岡山」の具現化ともいえる。

国際医療貢献分野における新基軸としてご理解とご支援をいただければ幸いである。