2018年度年次報告 健康増進 医療技術移転事業(2019/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度年次報告 健康増進 医療技術移転事業(2019/7発行)

インド・AMDAピースクリニック看護師 ネパールにて研修


◇実施場所 ネパール・AMDAダマック病院
◇実施期間 2018年4月15日〜29日

◇研修参加者 バビータ・クマリ/看護師/インド・AMDAピースクリニック
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDAダマック病院

◇参加者の声
「研修中に学んだ患者ケアの重要性および知識を今後の活動に生かしたい。」

◇事業内容
インド・AMDAピースクリニック(以下APC)で働き始めて4年目になるバビータ看護師が隣国ネパールにあるAMDAダマック病院で母子保健サービスを中心に研修を受けた。最初は言葉や環境に対する不安が大きかったが、ナビン同病院院長先生をはじめスタッフの方々の温かい対応により、学びの多い充実した研修となった。研修を受けた看護師は「AMDAダマック病院はAPCに比べてかなり規模の大きい病院で外来、手術室、救急外来など24時間体制で動いている。スタッフも責任をもって患者さんに対応している様子に感動した。研修中に学んだ患者ケアの重要性および知識を今後の活動に生かしたい。」と語った。

看護師は帰国後、研修で得た知識を積極的にAPCで共有している。6月にAPCで開催した健康教室でも、早速ネパールで学んだ離乳食を参加した妊婦・褥婦に紹介。「高い市販の離乳食を購入しなくても、栄養価の高い離乳食を安価な材料で作ることができる。」と話し、続く栄養プログラムでは6カ月以上の乳児にトウモロコシ、豆、ナッツ、麦、大豆の種を粉状にしたものを牛乳に混ぜた離乳食を提供した。教室参加者からは「予算内で手に入る材料を使った離乳食で、赤ちゃんの健康にも良い。早速、自分でも作りたい。」という声も聞かれた。

 

モンゴル医師研修受入 (2018年度岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業)


◇実施場所 岡山済生会総合病院 (岡山市北区)
◇実施期間 2018年8月9日〜9月26日

◇招聘者 バトラフ・ムンフバヤル/医師/モンゴル国立医科大学講師

◇受益者の声
「日本人はお互いが助け合うという相互扶助の気持ちがあり感動した。私も今後はAMDAのメンバーとして役立ちたい。」

◇事業内容
2018年7月末、モンゴル国立医科大学よりバトラフ医師が岡山県の国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業の助成を受け7月末に来岡、翌月より岡山済生会総合病院にて内視鏡の技術や環境衛生など包括的な医療を学んだ。

消化器内視鏡について、モンゴルで最も求められている胃がんの早期発見のための画像診断技術向上を第一目的とし、診断内視鏡から治療内視鏡まですべての手技について研修を受けた。岡山済生会総合病院は外国人医師が短期的に医療行為を行うための実習病院として国から認可されているため、バトラフ医師は午前中は消化器内視鏡の実習、午後からは肝疾患の研修に励むことができた。加えて内視鏡カンファレンスへの出席の機会も得た。また同院附属看護専門学校でのモンゴル紹介の際には学生からの要望に応えてモンゴル国家を堂々と歌った。

医師は研修期間中に、当時AMDAが活動していた西日本豪雨災害被災者緊急支援活動の活動場所を訪れ、避難者たちに「頑張って!」と日本語で激励の言葉をかけたり、炎天下で作業活動を行う方たちに冷たいおしぼりを配るなど行った。遠いモンゴルからの来訪者に、驚いた様子とともに、喜びの声をあげてくださる方も多かった。バトラフ医師は、今回の訪問を通じて、被災地の惨状に心を痛め、これほどの困難にみまわれた子どもと高齢者に対する心のケアの必要性を出席した総社市災害対策本部会議で強調した。

研修後、「学んだ技術を祖国で普及させ、患者サービスの向上に努めたい。」と意欲を示した。

 

ルワンダ小児医療・学校保健


◇実施場所 ルワンダ・キガリ市内及びギクンビ地区
◇実施期間 2018年9月14日〜24日

◇派遣者
頼藤貴志/医師/岡山大学大学院環境生命科学研究科准教授、浦山健治/医師/国立病院機構岡山医療センター小児科、古賀翔馬/医師/名瀬徳洲会病院
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
NPO法人ルワンダの教育を考える会、長崎大学熱帯医学研究所

◇受益者 950人

◇事業内容
2015年以降学校健診の普及を目指し、毎年日本より医師を派遣しルワンダで健診を実施している。2018年は前年同様ルワンダ行政の依頼を受け、首都キガリのウムチョムイーザ学園とキバガバガ小学校、そしてミヨベ幼児期児童発達センターの合計3カ所で学校健診を行った。今年度は本部からの派遣者や地元協力者に加え、長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎医師を含む研究チームも一緒に活動した。

また、今回通訳兼アシスタントして現地の医学生5人がボランティアとしてこの活動に参加。様々な病気を発見し早期治療するのに大変有効である健診の重要性などを学ぶことができた、と語った。

さらに、この学校健診の活動に当初から関わり、今回も参加したルワンダ医師、カリオペ・シンバ・アキンティジェ氏(長崎大学熱帯医学研究所留学中)は「子どもたちのために新しい事業に参画することに大いなる感動を覚え、またチャレンジしていくことに誇りに感じた。」と語った。

 

モンゴル医療セミナー


◇実施場所 モンゴル・ウランバートル
◇実施期間 2018年9月17日〜19日

◇派遣者
佐藤拓史/医師/東亜大学医療学部教授・AMDA理事、難波妙/調整員/AMDA GPSP支援局長

◇受益者数 延べ210人
◇受益者の声
「モンゴルの救急医療の為にも、このような貴重なセミナーを我々だけが独占してはならないと思う。翌年は是非ウランバートルだけでなく郊外の救命救急医にもセミナーを行いたい。」

◇事業内容
2017年に引き続き、2018年も9月17日から2日間、モンゴルの救急医療サービスセンターにて佐藤医師による救命救急についてのセミナーが行われた。

モンゴルでは、医師が救急車に同乗するため、医師の治療の知識と技術が向上すれば救命率は確実に上がることから、今回同センターの主力10名の医師を対象に、モンゴルの救急の現場ではまだ実施されていない骨髄輸液、輪状甲状靱帯切開術、心タンポナーデの治療などを、個別の技術指導を中心として実施した。セミナーを終えたトレーニング担当課長は、翌年は是非ウランバートルだけでなく郊外の救命救急医にもセミナーを行いたいと、更なる意欲を語った。

同月19日には、ウランバートル保健局80周年記念シンポジウムに佐藤医師が演者として招待を受け、当日200人以上の前で災害時の感染症対策について講演。シンポジウム終了後、佐藤医師は「モンゴルの災害医療危機管理に携わる様々な関係者との意見交換もでき、将来に繋がる協力関係を築いていくことの重要性を改めて実感した。」と語った。

 

ネパール・AMDAダマック病院事務局長研修受入


◇実施場所 岡山市、岡山県倉敷市、岡山県総社市、徳島県吉野川市、徳島県美馬市
◇実施期間 2018年9月30日〜10月10日

◇招聘者
ビム・ダマラ/ネパール・AMDAダマック病院事務局長

◇受益者の声
「病院内は最新の設備が整備され、清潔ですばらしい。医師も薬を出すだけでなく、患者が安心するようカウンセリングをしている姿に感動した。」

◇事業内容
AMDAネパール支部が運営するネパールのAMDAダマック病院のビム事務局長が来日、国内の医療機関を見学し、病院運営などを学んだ。

今回の研修は、AMDAインターナショナル菅波代表が2年前にダマック病院長より研修の要請を受け、AMDA本部と同病院の合同事業として実施。岡山市の岡山済生会総合病院を始め、倉敷市、総社市及び徳島県内5カ所の医療機関で、病院の運営管理や会計処理、医療廃棄物の処理方法をはじめ、病棟やナースステーションなどを見学した。

見学を終え、「日本で学んだ病院運営のノウハウを祖国で生かしたい。」と抱負を述べた。

 

ベトナム医師研修受入


◇実施場所 岡山済生会総合病院 (岡山市北区)
◇実施期間 2018年10月1日〜12月27日

◇招聘者
ズォン・ホアン・ミン/医師/ベトナム国防省軍175病院、グエン・ヴァン・マイン/医師/ベトナム国防省軍175病院
◇受益者の声
・「この3か月で、本当に多くの知識と技術を得ることができた。済生会病院とAMDAに感謝している。」
・「済生会病院では分野だけでなく、仕事への情熱と献身の重要性を学ぶことができた。温かく自分を受け入れてくれた周りの皆様に感謝している。」

◇事業内容
2018年3月にベトナム国防省軍175病院の院長が来日の際に、2015年に協力協定を締結した岡山済生会総合病院並びにAMDAとの三者による会議にて2018年の医師2人の済生会総合病院での研修が決定した。

医師2人は同年10月に来岡、12月下旬まで済生会総合病院の各担当医師の指示の下、研修を受けた。ミン医師は主に日本での人工透析や腎臓移植など腎臓病にかかわる治療、対応などの研修を希望し、約3か月間、済生会病院で研修するだけでなく近隣の病院を訪問し地域医療について話を伺うことができた。マイン医師は消化器系の外科出術について知識だけでなく手術にも参加、様々な技術を習得することができた。また2人は研修期間中に開催された「第5回AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム調整会議」に出席、通訳を通しAMDAの南海トラフ災害に向けた取り組みについても学んだ。

AMDAはこの研修に関し、両病院間の調整を担当。これまでに175病院より医師3人、スタッフ1人を済生会病院等での研修について調整、準備等を行ってきている。

 

モンゴル再生医療センターより見学


◇実施場所 倉敷成人病センター (岡山県倉敷市)、岡山二人クリニック (岡山市北区)
◇実施期間 2018年10月9日〜11日

◇招聘者
ノムンダリ・バータル/医師/モンゴル再生医療センター院長、オドフー・エンフトゥヴァン/医師/モンゴル再生医療センター、アリウナー・ガンボルド/医師/モンゴル再生医療センター
◇受益者の声
「モンゴル再生医療センターが10年後に目指す理想の病院の姿を岡山で見学させていただいた。今後も協力関係をさらに深め、ご指導いただければありがたい。」

◇事業内容
2018年10月にモンゴルの首都ウランバートルにある不妊症専門病院、モンゴル再生医療センター (以下RMC)より医師3人が来岡した。

9日にAMDA事務所にて、RMCとAMDAは、災害などの際、医療福祉面で被災者らをサポートするほか、RMCはAMDA多国籍医師団に協力する等、相互扶助を通して世界平和に貢献する内容の協力協定を締結。ノムンダリ院長は「締結ができ、本当に心強い。AMDAの理念である相互扶助の精神を生かして活動していきたい。」と語った。

その後、3人はAMDA職員と、岡山県内で不妊症の臨床技術に優れた倉敷市成人病センター及び岡山二人クリニックを見学。見学後、ノムンダリ院長は「それぞれの技術に感動した。」と述べた。また、RMCが以前医療関連機器を購入した株式会社アステックも訪問した。

RMCは2017年、モンゴルでは3番目の不妊症専門病院として設立。患者数は年間で約1,000人。モンゴルでは約10%が不妊症とされている。

 

ネパール内視鏡技術研修事業


◇実施場所 ネパール・AMDAダマック病院
◇実施期間 2019年2月24日~3月1日

◇派遣者
佐藤拓史/医師/東亜大学医療学部教授・AMDA理事

◇受益者数 ディワス医師、AMDAダマック病院長ナビン医師、他病院関係者3人

◇AMDAダマック病院長 ナビン医師より
「ディワス医師が佐藤医師の指導の下で内視鏡技術を学び、多くの患者の検査ができるようになったことはとても嬉しく思っている。佐藤医師は日本での忙しい日程を調整し、ネパールに来てくださり、ダマックでの内視鏡の発展に貢献していただいていることは本当に嬉しい。AMDA ダマック病院の代表として深く感謝している。」

◇事業内容
2018年2月にネパール南東にあるインドの国境近くのジャパ郡、ダマック市のAMDAダマック病院で地元医師を対象に、佐藤医師による内視鏡技術研修を初めて実施した。この時、「ダマックには内視鏡検査と治療が十分に出来る医師は未だにおらず、(この時研修を受けた)ダマック病院のディワス医師が独り立ちできるようになることが大変重要だと痛感した。」と佐藤医師が継続的教育の重要性を訴え、2019年2月、佐藤医師による同病院での2度目の研修の実現に至った。

今回の研修には、2016年8月より3か月間、岡山済生会総合病院で岡山県海外技術研修員として内視鏡治療に関する研修と、昨年の佐藤医師による研修を受けたディワス医師のほか、地元医師らも参加。特に昨年の研修から1年の間に600人の患者の上部内視鏡検査を行ってきたディワス医師の検査を見た佐藤医師は、同医師の技術向上に向けた真摯な姿勢と成果に深く感銘した、と語った。

5日間の研修期間中、ディワス医師が「日本から自分の恩師が来られる。」と多くの患者に知らせた結果、73人の患者が内視鏡検査を受けることとなった。受けた患者さんたちも「数年前に別の病院で内視鏡検査を受けた時に苦しい思いをしたことがあるので、今回内視鏡検査を受ける前はとても怖かった。しかし、思ったより痛くなかったので非常に楽だった。佐藤先生とディワス医師に心より感謝している。」「口からカメラを入れて内視鏡検査を受けると聞いた時にとても怖く感じた。しかし、意外と楽に内視鏡検査を受けることができてとても嬉しく思った。我々のために遠い日本からここまで来ていたことに『ありがとう』を伝えたい。」などの声が聞かれた。

今回セミナーを終えた佐藤医師は、「技術を伝え残していくミッションは、また次の世代の医師達に広く受け継がれていくという重要な意味を持つ。未来へつながっていくミッションである。ネパールの医師達が日本の医療技術を学んで自分達で自立し、自力でより多くの治療ができるようになろうとする姿勢は、私の医師を志した原点を思い出させてくれた。また、継続していくことの重要性を強く感じている。」と語った。