2018年度年次報告 平和構築 難民支援事業 復興支援(2019/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度年次報告 平和構築 難民支援事業 復興支援(2019/7発行)

ネパール・ブータン難民医療支援活動


◇実施場所 (2018年度)ネパール・ジャパ郡、モラン郡内難民キャンプ及びAMDAダマック病院(2018度)
◇実施期間 1992年〜継続中

◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDAネパール支部

◇受益者数 (2018年度)延べ6,633人

◇事業内容
1990年代にブータン内で民族間紛争が拡大、多くのネパール系ブータン人がネパール国内の難民キャンプに移住した。1992年、AMDAネパール支部はジャパ郡ダマック市でこの難民に対する医療支援事業を開始。3年後にはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)より正式な委託業務となりAMDAが本格的に主導、「AMDAダマック病院」でブータン難民及び地域住民への医療サービスの提供を開始した。

2001年、同支部はブータン難民キャンプでの一次保健医療をUNHCRから委託され、各キャンプに活動拠点を設置、最大約11万人の難民を対象にプライマリヘルスケアサービス(一次診療サービスのほか、妊婦健診、HIV/AIDS対応、公衆衛生、栄養補助食料の供給等)を実施してきた。

現在難民人口も当時の約1割に減少しており、ネパール政府とUNHCRはキャンプ内での活動について協議を重ね、AMDAネパール支部が委託された事業のうち、一次診療サービス及びHIV/AIDS対応については2018年12月に終了した。ただし終了を前に、AMDAネパール支部とUNHCRの働きかけもあり、同年5月、難民の方々がキャンプ外の医療機関で医療サービスを受けるための国民健康保険が整備された。

AMDAダマック病院は、引き続き二次医療機関として、キャンプ内外の一次医療機関からの搬送などを受け入れている。

 

スリランカ平和構築プログラム


◇実施場所 スリランカ・ポロンナルワ
◇実施期間 2018年8月3日〜5日

◇派遣者
菅波茂/医師/AMDAインターナショナル代表、竹谷和子/調整員/AMDAボランティアセンター事務局長、三宅孝士/調整員/赤磐市職員(AMDAに出向)、押谷晴美/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー、内田涼/調整員/広島大学大学院インターン
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、AMDAスリランカ支部、St. John Ambulance、現地参加4校 (Royal Central College (ポロンナルワ)、Kaudupelella Sinhala Vidyalaya (マタレー)、Vivekanantha Vidyalayam (キリノッチ)、Muthur Central College (ムトゥール))、岡山県赤磐市 (友實武則・赤磐市長及び職員3人)

◇受益者数 111人 (スリランカ学生100人、AMDA中学高校生会メンバー4人、岡山県赤磐市内中学生5人、広島県立福山誠之館高校2人)
◇受益者の声
・「民族の違うシンハラ、タミルの生徒の手をとり笑顔になり、一緒に話し友達になった。」
・「言語が伝わらず苦労も多かったが、それ以上にジェスチャーや絵などで分かり合えるということ、笑顔でいるだけで周りの人に伝わり笑顔の輪がすごく広がること、そして自分の意見がなかなか伝わらなくても一生懸命聞いてくれ、それが伝わった時は人の意見を尊重し、言語が伝わらないからこそ、相手を尊重することの大切さを改めて感じることができた。」
・「異なる文化や習慣を理解し受け入れることは少し難しいかもしれないが、お互いの考え方や生きてきた歴史を尊重することは、国際貢献に最も大切なことだと思った。」
・「今回のプログラムで、次の平和構築へのステップへ進むためには笑顔だけでは足りないということに気づいた。次のステップのため、自分たちなりの答えを探していきたい。」
・「実際に行って現地の人たちと触れ合うなかで、“自分にとっての平和”とは笑顔だと思った。スリランカは本当の意味での和解はまだできていないけど、人の温かさや笑顔だとスリランカは世界で1番。」
・「他の国との歴史的関係を知り、その国の人たちと関係を深め、交流することも大切だと感じた。」
・「いろんな宗教を通して自分たちの考えだけを通すのではなく、違う考え方も受け入れなければならないなと思った。」
・「言語が違ってもお互いが同じように平和について考えたり、宗教が違っても仲良くなろうとしたりすると最後は笑顔を共有することができるということが分かった。」
・「笑顔は素晴らしいもので、例え言葉が通じず、分からない時でも笑ったら笑顔で相手も返してくれるそんな魔法の道具だと思った。」
・「この経験を通して、今後もなんらかの形で社会に貢献できる人になりたいと思った。」
・「このプログラムを進める中で言葉が通じず、相手が何を言いたいか理解するのが大変なこともあったが、一生懸命に伝えようとすることが相互理解には必要だということを現地の学生たちから学んだ。」


◇事業内容
1983年に勃発したスリランカ内戦が停戦した翌年の2003年より2006年までAMDAは国内3カ所の異なった民族に向けた巡回診療など医療和平プロジェクトを行った。内戦終了後の2011年からは毎年、異なった宗教、民族の生徒たちが交流するスリランカの「平和構築プログラム」を実施、2013年からは日本からも中学生・高校生が参加している。

2018年はポロンナルワにて国内4つの学校より計100人、そして日本からは「Share our Smile(笑顔を共有)」をスローガンに掲げ、AMDA中学高校生から4人、岡山県赤磐市の中学生5人、広島県立福山誠之館高校2人が参加。4つの宗教施設(仏教、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教)を訪問しお互いの宗教を知り、スポーツプログラムや文化交流などで相互理解を深めた。また、今回「平和について考える」取り組みとして、

1)参加者全員が自分で考えた平和について絵を描き話し合う活動
2)日本チームからの平和に関するプレゼンテーション
3)毎年死者が出ている灌漑用水のため池に設置する、「命を大切に」をテーマにした安全啓発ポスター作りを行った。

今回日本から参加した学生たちは、「言葉が通じなくても相手を理解しようとする態度」や「笑顔で伝わるもの」などを学び、これからの自分たちの将来に生かしたいと帰国後に語った。

また今回は、市の中学生を派遣した友實武則・岡山県赤磐市長も本プログラムに参加、開催地であるポロンナルワ市の市長との交流も実現した。