ロヒンギャ難民支援(2018/04発行ジャーナル春号) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ロヒンギャ難民支援(2018/04発行ジャーナル春号)

長引く過酷なキャンプ生活


ミャンマーから隣国のバングラデシュに逃れているイスラム系少数民族・ロヒンギャ難民の数は増え続け、過酷なキャンプ生活は長びく様相を見せています。国連は「未曾有の危機」として援助の拡大を呼び掛け、AMDAは2018年1月17日、菅波茂代表が現地入り。あらためて1年間にわたる長期支援を確認しました。

菅波代表が現地入り

菅波代表はキャンプを訪問した感想について「難民はすることがない。ただ存在するだけである。禁固刑に等しい。大変なストレスである。私だったら数カ月も神経が持たないだろう」と述懐しています。(菅波代表の手記参照)

キャンプには日本から長崎大学熱帯医学所国際保健学部の山本太郎教授、NPO法人TMAT事務局の野口幸洋氏も同行し、実情調査をしました。


難民キャンプでの医療支援活動のようす
海外からの医療チーム派遣はAMDAバングラデシュ支部、日本バングラデシュ友好病院の協力を得てこれまで2回行われ、第1回は米田哲医師(2017年12月11日〜23日)、2回目は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の医師2人とともに押谷晴美看護師(2018年2月1日〜13日)が派遣されました。

押谷看護師は「自分を含め、難民の方々はふるさと・ミャンマーで、誰かに襲われる恐怖を感じない安心した生活を望んでいる」と話していました。

難民は70万6千人急増

国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の3月18日の発表によると、2017年8月以降、難民は70万6千人に急増。また8月以前からの合計では、86万9千人となっています。10月22日に開設したAMDA診療所の延べ患者数は3月31日現在、1万6020人にのぼっています。

ロヒンギャ難民キャンプを訪れて AMDAグループ代表 菅波茂


2018年1月17日、バングラデシュのコックスバザール県にあるロヒンギャ難民のキャンプを訪れた。

キャンプ内では、国連難民高等弁務官や各国のNGOが提供している粗末な住居が整然と建てられている。飲料水を確保するポンプは十分機能している。問題はトイレである。当初は10世帯(1世帯が5〜6人)ごとに簡易トイレが数個設置されたが、すぐにいっぱいとなり土をかぶせて終了した。現在は改善されたトイレが設置予定ではあるが、当初のトイレ設置に予算を使ってしまった現状がある。NGOの予算では無理である。国家予算の支援頼みである。4月から5月に始まる雨季の衛生上の問題が心配である。

食料は国連機関による登録前提の配給制である。道端には食料品や生活用品などを売っている大小さまざまなお店がある。多くは地元の人たちによる商売である。現金1万円以下で地元の人から購入した野菜や干物などを細々と売っている難民の人も多い。しかしながら、難民キャンプは帰国を前提としており、難民の人たちは何もすることがなく、社会から必要とされている状況にない。ただただ存在するだけである。私だったら数ケ月も精神が持たないだろう。

AMDAは今回難民キャンプに診療所を開設しているが、場所が狭い。患者が120人から受診する現状では狭すぎるが、場所が確保できない。心電図、超音波そして簡単な血液検査機器を装備したバンを診療所の横に設置して活用をする「移動臨床検査センター」を考えている。

それ以上に我慢できなかったことがあった。患者たちが直に地面に座って診察待ちをしている光景である。他の団体の診療所でも同様だった。来る5月の雨季には地面がどろんこになる。直ちに、簡易ベンチを2列に設置するように依頼した。これは患者に対する敬意の問題である。イスラムの女性患者を直接に診察できるスペースの確保も同様である。難民であることと患者であることは別である。心して取り組みたいと思っている。