2014年度年次報告 緊急支援活動(2015/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2014年度年次報告 緊急支援活動(2015/7発行)

ボスニア洪水被災者に対する緊急医療支援活動


戸別訪問を行うAMDA看護師

◇実施場所 ボスニア・ヘルツゴビナ バニャルカ市、ドボイ市
◇実施期間 2014年5月21日〜7月31日
◇派遣者 岩本智子看護師(米国ライセンス) AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA本部派遣者 看護師1名、AMDAボスニア支部 医師2名、心理カウンセラー1名、医学生1名、感染症専門家2名(計7名)
◇受益者数 のべ168人

◇事業内容
バルカン半島でサイクロン・タマラが発生し、5月13日から3日間で3か月分の雨量をもたらし、ボスニア・ヘルツゴビナを中心とした各地で洪水被害が発生した。特に、同国では観測が始まった1894年以来最高雨量を観測し、死者24名、人口の39%にあたる150万人が被害を受けた。

このような状況の中、5月16日にAMDAボスニア支部長から支援要請を受け、AMDAは本部より看護師1名を被災地へ派遣することを決定。5月21日に岡山から出発し、翌日、ボスニア・ヘルツゴビナ北西部に位置するバニャルカに到着。AMDAボスニア支部関係者と合流し、支援活動を行った。

28日からは高齢者や、障害があるため支援物資を配布場所まで取りにいけない被災者の家を訪問し、健康チェックと支援物資配布を行った。また、内戦の影響で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患う人が今回の洪水により症状が悪化している可能性があるとして必要な人々にカウンセリングを実施し、支援物資(お米、パスタ、調味料、野菜、果物などの食糧と歯ブラシ、石鹸、スポンジなどの衛生用品)の配布も行うことができた。

支援のニーズが高かったことから、6月から7月末まで、AMDAボスニア支部の医師や関係者が中心となり、引き続き被害の大きかったドボイ、サマックを中心に戸別訪問による洪水被災者への健康チェック、食糧や医薬品配布、遠隔精神カウンセリングなどの支援活動を継続した。

これらの活動を合わせて、のべ168人の被災者に対して支援を行うことができた。

なおボスニアでの活動は、96年から99年にかけて実施した旧ユーゴスラビア難民支援活動以来となった。

◇受益者の声
義足で生活しており支援物資をとりに行くことが難しい。自分たちの事に関心を持ち、支援してもらい本当にありがたい。

◇現地協力機関
AMDAボスニア支部

中国雲南省地震に対する緊急救援活動


支援会議の様子

◇実施場所 中国雲南省
◇実施期間 2014年8月5日〜8月11日
◇派遣者 岩本智子看護師(米国ライセンス) AMDA本部職員
山 希 看護師 AMDA本部職員
山田 立夫 調整員 AMDA参与
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA本部派遣者看護師2名、調整員1名および四川省人民対外友好協会関係者、雲南省人民対外友好協会関係者3名(計6名)

◇事業内容
8月3日、現地時間午後4:30に中国南西部の雲南省昭通市魯甸県(うんなんしょう・しょうつうし・ろでんけん)を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生した。現地メディアによると、この地震による死者は617名、負傷者は3,142名、被災者は98万人に上り、全壊家屋は約12,000棟、さらに30,000棟がダメージを受けた。

この状況を受け、AMDAは8月5日に医療チームを派遣。一行は、四川省成都に入り、現地協力団体の四川省人民対外友好協会のメンバーと合流し、支援の可能性を検討した。

四川省人民対外友好協会の紹介で、8月7日には雲南省昆明市に入り、雲南省人民対外友好協会に協力を仰ぎ、支援活動について協議を重ねた。今回震源地となり、被害が報告されている魯甸県は山岳地帯であり、普段から雨の多い地域。今回の地震の余震に加え、雨の影響で、あちこちで土砂崩れが起こり道路は寸断され、軍でさえアクセスが難しく、被災者も徒歩で搬送している状況が続いている。今後も土砂災害など2次災害の危険が高く、現地に入るのは難しいという情報があり、さらに政府が被災地への出入りを厳重に管理しているため、NGOとしての支援が困難であることから被災地での活動を断念せざるを得なかった。また現地の協力機関を通じての物資支援の可能性も探ったものの、具体的な支援については見送る結果となった。

しかしながら、今回の現地での情報収集および会議などを通じて、現地での協力関係を強化することができた。さらに雲南省第一人民病院の訪問も実現し、現地の医療関係者と打ち合わせを行い、今後起こりうる災害に備えた支援体制づくりを行うことができた。

◇現地協力機関
四川省人民対外友好協会
雲南省人民対外友好協会

福知山洪水被災者に対する緊急医療支援活動


被災者に鍼灸治療を行う様子

◇実施場所 京都府福知山市
◇実施期間 2014年8月18日
◇派遣者 今井賢治 鍼灸師 AMDA ERネットワークメンバー
山 梨枝 看護師 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA派遣者(看護師1人、鍼灸師1人)(計2名)
◇受益者数 のべ5人

◇事業内容
2014年8月17日に発生した豪雨により京都府福知山市街地が洪水に見舞われ、4,500棟の家屋浸水、道路や線路の冠水など甚大な被害が発生した。このような状況を受け、AMDAでは、医療チームの派遣を決定。浸水被害の片づけによる心身疲労した被災者の現状を鑑み、看護師と鍼灸師を現地に派遣した。

被災地までの陸路は浸水や土砂崩れなどで通行止めとなっており、迂回を繰り返しての到着となった。浸水被害のあったエリアではおおむね水は引いていたものの、家屋に泥が上がり、人々は土砂の片づけなどに追われていた。

AMDA医療チームは浸水被害地域にある保育園に入り、被災者に対して鍼灸治療を実施した。治療前の問診では、肩や背中、腰などの痛みを訴える方がいた。

問診の際に災害発生時の様子を聞くことができた。それによると災害発生時は休園日だったので、園児への被害がなくてよかったが、園に来てみると大人の膝丈まで浸水していた。あわててスタッフで書類や本、文具、布団等、運べるものは2階へ避難させたが、動かしきれない大きな電化製品や家具、遊具などは浸水被害に合い、廃棄処分せざるをえない状況になってしまったという。

カウンセリングとともに鍼灸治療を行うことで、被災者から前向きな発言が聞かれ、慣れない作業からくる筋肉痛や疲労感を和らげることができた。

◇受益者の声
体が楽になった。痛みがとれた。気持ちを切り替えて頑張ろうという思いになった。

広島土砂災害緊急医療支援活動


支援物資を運びこむAMDA看護師

◇実施場所 広島県広島市
◇実施期間 2014年8月21日〜9月18日
◇派遣者 山河城春 看護師 AMDA ERネットワークメンバー
武田未央 看護師 AMDA ERネットワークメンバー
今井賢治 鍼灸師 AMDA ERネットワークメンバー
山 梨枝 看護師 AMDA本部職員
中川 雅人 調整員 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA派遣者(看護師3人、鍼灸師1人、調整員1人)および現地協力者(石沢睦夫氏ほか)、岡山県総社市役所職員のべ7名(計13名)
◇受益者数 597人

◇事業内容
2014年8月20日午前3時20分から40分にかけて、局地的大雨によって安佐北区可部、安佐南区八木・山本・緑井などの住宅地後背の山が崩れ、同時多発的に大規模な土石流が発生した。夜が明けて明らかになった被害状況は4,000棟以上の浸水被害と死者・行方不明者合わせ74人であった。

この状況を受け、総社市とAMDAグループとの多文化共生に関する協定に基づき、総社市、AMDAの合同緊急支援活動を実施することが決定。災害発生の翌日と21日ののべ2回にわたり合同チームを派遣し、支援活動を実施した。

被災地では、避難所における支援物資の配布と健康調査を実施。公的な避難所でない公民館なども避難所となっており、支援物資が行き渡っていなかったことから、食糧や生活支援物資の提供を行った。

さらに、避難所でのヒヤリングを行った結果、自宅の片づけや泥かきなどを毎日行い心身ともに疲労しているという訴えや、突然の災害による精神的なショック、不眠を訴える被災者が多かった。

このような状況があったことから、AMDAでは心身の健康回復に効果のある鍼灸治療の支援活動を決定し、鍼灸治療と同時に医薬品の提供を行った。ローカルイニシアチブ(現地主導)を尊重し、AMDA鍼灸師は、地元の広島県鍼灸マッサージ師会と、広島県鍼灸師会の後方支援をする形で避難所生活を余儀なくされた被災者に対する鍼灸治療活動を行った。

さらに被災地で活動するボランティアのための救護所の運営に支援が必要という声が上がったことから、看護師1名を派遣し、現地の医療スタッフと連携を取りながら支援活動にあたった。

◇受益者の声
避難所生活はとてもストレスなので、こういう鍼灸治療をしてもらうと、本当に気持ちいい。痛みが和らぐ。

◇現地協力機関
広島県鍼灸マッサージ師会
広島県鍼灸師会
現地協力者(石沢睦夫氏)ほか

パキスタン・インド北部洪水緊急医療支援活動


被災者に声掛けをするAMDA岩本看護師

◇実施場所 インド・ジャムー&カシミール地方、パキスタン・プンジャブ州
◇実施期間 2014年9月17日〜10月11日
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 パキスタン:AMDA派遣者(看護師1人)およびNRSP(National Rural Support Programme)メンバー(計62名)、インド:AMDA派遣者(看護師1人)およびパンニャ・メッタ・サンガスメンバー、カシミール福祉センタースタッフほか(計5名)
◇受益者数 パキスタン3,625人、インド202人

◇事業内容
2014年9月4日、モンスーンによる大雨の影響で、パキスタンとインドの国境周辺地域を中心に大規模な洪水が発生。パキスタンでは死者367名、被災者は250万人を超え、インドではジャムー・カシミール地方を中心に298名が死亡、27.5万人以上が被災した。この状況を受け、AMDAでは現地NPOの協力を得て、パキスタン・インド側両方で、緊急救援活動を展開した。

パキスタン・プンジャッブ州


巡回診療を行うAMDA医療チーム

9月17日に現地入りしたAMDA看護師は、地元協力団体と支援活動を開始した。プンジャブ州チニョット県サンバル郡では地元医師、看護師らの協力のもと、無料巡回診療を実施した。元々、医師不足の地域であり、衛生状態もよくないため医療ニーズは非常に高く、2日間の活動を通してのべ710人を診察することが出来た。上気道感染症の患者が多く、小児患者では下痢の症状を訴えるケースもみられた。

さらに10月8日から10日にかけてハフィザバード県にて、テント用資材としてのブルーシートと竹4本など支援物資の提供と無料巡回診療を実施した。この巡回診療では246人の診察ができ、皮膚感染、筋肉痛、マラリア、腸チフスなどの患者が多く見られた。

現地協力団体により、10月23日まで継続的に、被災者に対する巡回診療が実施された。

インド・カシミール


巡回診療を行うAMDA医療チーム

9月25日に日本を出発したAMDA看護師は、現地協力団体と合流後、翌26日にカシミール地方に到着した。

最も被害の大きかったスリナガルの町では、街の50パーセントが水没し、病院や学校、公共施設も甚大な被害を受け、洪水から3週間以上が経過しても、復旧の目途が立たない状況だった。

パンニャ・メッタ・サンガとAMDAの協働チームは、被害の大きかったパタン町、ゴプラン村での支援を決定。これから冬を迎えるこの地域の被災者に対し、毛布を配布した。さらに準備した医薬品を使い、訪問診療活動を実施した。長時間洪水に浸かっていたことが原因で、呼吸器感染症が多くみられ、高齢者の間では体の痛みに関する訴えが多く聞かれた。また残った支援物資と医薬品は、パタン町の役場に寄贈することができた。

◇裨益者の声
「わざわざ日本から来てくれてありがとう。これは、アッラーの思し召し。」「普段、医療サービスをあまり受ける機会がなく、このような医療支援はありがたい。」

◇現地協力機関
パキスタン:NRSP(National Rural Support Programme)
インド:パンニャ・メッタ・サンガ、カシミール福祉センター

スリランカ中南部地滑り緊急医療支援活動


避難所になったプーナガラ高校

◇実施場所 スリランカ・ウバ州バドゥラ
◇実施期間 2014年11月2日〜11月8日
◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグ 調整員 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA派遣者(調整員1人)およびAMDAスリランカ支部、NGOサルボダヤメンバーなど(計3名)
◇受益者数 100人

◇事業内容
2014年10月29日、スリランカの最大都市であるコロンボから東約200kmに位置するウバ州バドゥラ郡で、土砂災害が発生した。この土砂崩れは、モンスーンによる大雨が続いた影響によるもので、16人の死亡が確認され、約200人が行方不明と報告されている。

この情報をを受け、AMDA本部は11月2日に岡山から調整員を現地に派遣した。コロンボに到着したAMDA調整員は、AMDAスリランカ支部、地元のNPOで、協力団体であるサルボダヤと情報共有を行った。11月4日には、バドゥラ郡で避難所となっていたプーナガラ高校を訪れ、この避難所のコーディネータで、バドゥラ郡健康保健局の医師でもあるAMDAの協力者と合流し、支援活動を行った。この避難所には、約1,000人が避難しており、そのうちの約400人(内65人は子ども)が土砂により自宅を失った被災者で、そのほかにも約600人が二次被害を避けるために避難してきた人々だった。他にもこの避難所の近くには避難所が2つあり、それぞれ300人と150人を収容していた。避難所では、食料、衣類、医薬品など生活物品は充分に供給されていたが、乳幼児の離乳食や育児に必要な物品として乳児用の食器などが不足していることがわかかった。バドゥラ郡健康保健局の協力者からの要求もあったことから、AMDAはこの避難所に100人分の離乳食と食器を購入し支給した。

この避難所には医師が24時間対応している診療所が設けられており、呼吸器疾患、外傷などの症状を抱えた患者を1日約100人診察していた。この避難所に対しAMDA協力団体のサルボダヤは、患者を診療所から地元の病院に移送する際の、安全で信頼性の高い移送手段を提供するため救急車を支給した。そして、この救急車を有効に活用してもらうため、AMDAはガソリン代として1日4,000ルピーを8日間に渡って支援した。救急車は避難所にある診療所と地元の病院の間を何度も往復し、1日約150kmの距離を走行し、有効に使われていることが確認できた。

◇現地協力機関
AMDAスリランカ支部
NGOサルボダヤ(Sarvodaya)

東南アジア洪水被災者に対する緊急医療支援活動

◇実施場所 マレーシアクランタン州、パハン州を含む
フィリピン レイテ島 タクロバン市
◇実施期間 2015年1月1日〜2015年 1月11日
◇派遣者 大政朋子 調整員 AMDA 本部職員、
柴田幸江 看護師 AMDA ERネットワークメンバー
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 マレーシア:AMDA派遣者(看護師1人、調整員1人)およびマーシーマレーシアメンバー(計15名)フィリピン:AMDA派遣者(看護師1人、調整員1人)およびレイテ医師会メンバー(計26名)
◇受益者数 マレーシア約240人、フィリピン約3,000人

◇事業内容
2014年12月末に東南アジアで発生した低気圧は、マレーシア・インドネシア・タイなど広範囲に大雨・洪水の被害をもたらした。AMDA GPSP事務所を置くマレーシアでは半島東海岸の5州16市町村という広範囲に被害が及び、死者16人、被災世帯11,311世帯、避難者数約16万人となった。さらに、12月29日には、この低気圧がフィリピン諸島南部上空で台風23号へと発達し、フィリピン中南部に洪水・土砂崩れなど大きな被害をもたらした。フィリピンでは11万世帯55万人以上が被災し、死者65人、負傷者41人と大きな被害が報告された。

この状況を受けAMDAではマレーシア、フィリピンの2国で支援活動を実施した。

マレーシア クアラクライ郡など


巡回診療を行う医療チーム

2015年1月1日に調整員1人、看護師1人が岡山を出発し、被災地に向かった。マレーシアで地元協力団体と合流し、事前のニーズ調査をするために、1月3日には被災地クアラクライ郡ベコック村とトゥアラン村へ陸路で向かった。水は引いていたものの、町は泥に覆われており、さらに泥が乾燥し、砂埃が舞うなかでの支援活動となった。

ニーズ調査の結果から、掃除を行うための道具が必要と判断し、手押し車、シャベル、デッキブラシ2種類、水きり、ほうき、マスク、軍手、バケツを1セットとした掃除セットを30世帯に配布した。翌、4日には、トゥンパッ郡コクパシール村で巡回診療を実施した。113人の診察を行った。皮膚疾患、腰痛、高血圧症などの症状が多くみられた。

フィリピン タクロバン市


巡回診療を行う医療チーム

マレーシアでの活動に次いでAMDA医療チームは、1月7日マレーシア・クアラルンプールを出発し、8日にはフィリピン・マニラを経由し、レイテ島タクロバン市に到着した。AMDA医療チームは、現地の協力団体であるレイテ医師会と合流。被害状況や活動予定についてのミーティングを行い、医薬品や支援物資の購入、パッキングなど支援活動の準備を行った。

10日には、被害が大きく、支援があまり届いていないタクロバン市アピトン地区で、レイテ医師会の医師、研修医、薬剤師等計26人体制で巡回診療を実施し、416人の診療を行った。主な疾患は、発熱や咳などを伴う上気道感染症や皮膚疾患だった。巡回診療と同時に、米2キロ、缶詰2ケを1セットとし、同地区の500世帯に配布し、活動を終えた

◇現地協力機関
マーシーマレーシア
フィリピン・レイテ医師会

大洋州サイクロン緊急医療支援活動


支援物資を手渡すAMDA調整員

◇実施場所 ツバル、フィジー共和国
◇実施期間 2015年3月18日〜現在
◇派遣者 大政朋子 調整員 AMDA 本部職員、
山希 看護師 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA派遣者(看護師1人、調整員1人)および現地協力団体メンバーほか(計8名)
◇受益者数 175人

◇事業内容
2015年3月11日から13日にかけて大型サイクロン「パム」が大洋州のバヌアツ、キリバス共和国、パプアニューギニア独立国、ソロモン諸島、ツバル共和国などの国々で強風や豪雨被害に見舞われた。また地球温暖化により日常的に潮位が高く高潮の被害も発生した。

このような状況を受け、AMDAでは地元関係機関と連携を取りながら現地の情報収集を開始。3月18日にはAMDA看護師1名が岡山を出発し、クアラルンプールで調整員1名と合流して、オーストラリア経由で20日にフィジーに到着した。被災のため各島々を結ぶ交通網が混乱しており、さらには通信状況も不安定で情報収集が困難であったため、被災地に近く、大洋州のアクセス拠点でもあるフィジーで最新の情報収集を行い、必要な支援物資の購入などを行った。

フィジーでの情報収集の結果、国家非常事態宣言が出されていたツバルでの支援を決定。24日には調整員1名がツバルに移動し、現地協力団体のスタッフと共に、停電が繰り返される中で支援物資の運搬と分別作業を行った。小さな島や環礁からなるツバルでは、チームの移動、物資の運搬などの確保が非常に難しく、また、この非常事態に対応すべく政府が浄水タブレットなどのとりまとめを行っていたことから、準備した経口補水液や浄化水生成剤などの医薬品をツバルの保健省に寄贈した。また、災害対策本部には、支援が届きにくい離島の被災者に向けて、飲料水や食料品などの支援物資に充ててもらうための支援金を手渡すことができた。なおこの災害に対するツバルでの支援活動を行った日本の団体はAMDAが唯一となる。

一方、フィジーにおいて、AMDA看護師は、キリバスへの支援調整を行っていたが、限られた時間のなかで支援活動を実施することが困難と判断し、今期間での活動は断念し、海面上昇の影響で、今後高潮被害が頻発すると考えられることから大洋州での協力体制づくりに尽力した。なお、現在も状況を注視しながら支援活動の継続に向けて調整中である。

◇裨益者の声
とても心強い支援です。遠い日本からわざわざ足を運んでくださり、心より感謝しています。

◇現地協力機関
ツバルNGO協会(TANGO)、ツバル災害対策本部、ツバル保健省ほか現地ボランティア