2012年度年次報告 中長期継続事業
- AMDAフードプログラム
- スリランカ・白内障手術プロジェクト
- 紛争復興支援スリランカスポーツ交流プログラム
- インドAMDAピースクリニック
- モンゴル検眼事業
- カンボジア HIV/AIDSプロジェクト マラリア予防プロジェクト
- バングラデシュ ピースビルティングプロジェクト
- インド・ラダック地域 歯科巡回診療プロジェクト
AMDAフードプログラム
収穫祭ではたくさんの方が稲刈りを体験 |
◇実施場所 岡山県真庭郡新庄村
◇実施期間 2012年4月1日〜現在
◇従事者 アロイシウス・シタミ AMDA本部職員(AFP担当)/柴田 宙樹 AMDA本部職員(AFP担当)
◇事業内容
本事業は「食は命の源」をコンセプトにアジアに有機農業を啓蒙・普及することを目的とした事業で、真庭郡新庄村野土路地区にAMDA農場を設置し、稲作を中心とした有機農業を行う。これまでにAMDAが海外で実施してきた様々な医療支援活動を通じ、「安全、安心な食」が健康な体を作るだけでなく、「安全、安心な食」には付加価値が付き、貧困地域の生活向上、労働意欲の向上につながることに着目。本プログラムを通じてアジアへの有機農業の技術移転を目指している。
また、典型的な日本の中山間村である新庄村に農場を構えることは、地域振興に貢献できる。新庄村が2010年に掲げた「アジア有機農業プラットフォーム推進条例」に基づき、連携を行うことで、より自治体に根差した取り組みが可能となっている。
2012年から専任スタッフを2名配置し、稲作を実施。1等米を収穫することができた。また、「ひめのもち米」の栽培も行い、収穫したもち米でしゃぶしゃぶ餅やまる餅などの加工食品も出荷することができた。稲作だけでなく、白菜や大根、スイートコーンなどの畑野菜も無農薬、有機栽培で実施。市内のスーパーなどに出荷した。
さらに収穫した「AMDA有機米・コシヒカリ」を、新庄村の特産品と併せてAMDAの支部がある各国の駐日外国公館へ届けることができた。訪れたカンボジア大使館では、「カンボジアでも有機農業への関心は非常に高い。また、化学肥料を使わないので国民の健康を向上させられる今後の活動に期待しています。」などの言葉をいただき、いずれの大使館でも『人の体に優しい、安全安心の有機農業』に対する関心が高いことを感じられた。
2013年3月には有機農業の技術移転を目的としたインドネシアへの現地視察を新庄村とAMDAで実施。新庄村に似た気候風土のスラウェシ島マリノ村では、多量の農薬を使った農業を、行っていることが分かった。さらに将来的な有機農業の実践地としての調査も行った。
◇2012年度の主な工程
5/28 田植え、6/6 あひるの放鳥 9/2 あひるの精肉加工、10/6 米の収穫
◇現地協力機関
新庄村
スリランカ・白内障手術プロジェクト
無料白内障手術の様子 |
◇実施場所 スリランカ ヌワラエリヤ市
◇実施期間 2012年8月22日〜24日
◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグAMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 ヌワラエリヤ総合病院 眼科医・医療スタッフ 20人
◇事業内容
スリランカは白内障に苦しむ多くの高齢者がおり、その殆どは、都市部から離れた郊外に住んでいる。本事業を実施したヌワラエリヤ市は人口80万人以上が暮らすスリランカ中部に位置する紅茶の栽培で有名な町である。この紅茶栽培の地域に暮らす人々の多くが、経済的に困窮しており、特に高齢者にその割合が多くなっている。
AMDAではこれまでに医療和平事業として、スリランカ北部ジャフナ地区、南部パーナンドラ市、東部トリンコマリー市などで3回の無料白内障手術を実施してきた。その第4回目として、2012年8月22日から24日の3日間、ヌワラエリヤ市内にあるヌワラエリヤ総合病院で、カラシバヤガナサ医師を中心に地元の眼科医のもと白内障手術が実施された。
全ての手術は熟練の医師によって行われ、重度の白内障の患者にはECCE(嚢外摘出術)と呼ばれる手法がとられた。スタッフ20人体制で計50人の手術を行う予定だったが、そのうち5人は、術前の診察の結果から手術延期となった。
その他にも、今後のフェイコ(水晶体乳化吸引法)手術のための眼内レンズ10個を寄贈した。
今回手術を受けた患者の平均年齢は60歳で、術後は一様に視界がくっきりと良好になったと喜んでいた。
本事業はヌワラエリヤ総合病院職員や、地元の方々から高く評価された。
◇受益者の声
今までの人生で一番良く見える!ありがとうございました。
◇現地協力機関
AMDAスリランカ支部
ヌワラエリヤ総合病院
紛争復興支援スリランカスポーツ交流プログラム
サッカーを行う男子学生ら |
◇実施場所 スリランカ アヌラ―ダプラ市
◇実施期間 2012年10月5日〜7日
◇派遣者 菅波 茂 医師・AMDA理事長/ ニティアン・ヴィーラヴァーグAMDA本部職員/河田 雅史 カメラマン・AMDA参与
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 アヌラ―ダプラ県、北ムラティブ県、トリンコマリー県から仏教徒、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の中学生、教師、職員合わせて120名
◇事業内容
医療和平事業として、現地団体と協力し、スポーツ、宗教、文化の交流プログラムをそれぞれスリランカ北内陸部に位置するアヌラ―ダプラ県にて実施した。
医療和平事業とは、対立しているグループの双方に平等に医療を提供することで、和平構築に資することを目的とした事業である。AMDAは、スリランカの内戦停戦中の2003年から3年間、3つの異なる民族(シンハラ、タミル、イスラムタミル)に対して「スリランカ医療和平事業」として、医療や保健教育などを行った。また、次世代の平和を担う学生を対象とした和平事業として、スポーツや宗教の交流を通じて相互理解、和平教育を実現するべく、2011年8月に第1回スポーツ交流・文化交流・宗教交流を開催した。長期に渡って内戦が続いたスリランカでの和平構築事業の第二段階として、大きな一歩となった。
開会式では、スリランカ言語社会統合省、スリランカ教育スポーツ省、アヌラダプーラ県、世界宗教者平和会議スリランカ委員会、教師と生徒それぞれの代表が共にランプに火を灯し、仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教の代表が平和と融合を願い、祈りを捧げた。
サッカー(男子)とネットボール(女子)の交流では、民族混合チームを3つ作り、対抗試合を行った。この試合は、人種、宗教の違いを超えた中学生たちの会話を促す貴重な機会となり、生徒だけでなく、審判役を務めた教師たちも試合を楽しみ、打ち解けることができた。
宗教・文化交流プログラムでは、中学生と教師がそれぞれの宗教施設を訪れ、お互いの信仰や習慣について学んだ。また夕方からはダンス、音楽、演劇などの文化的出し物をそれぞれが発表し、このプロジェクトを通じて互いの文化、民族、宗教に触れる貴重な機会となった。
◇受益者の声
来年もこのプログラムに参加し、みんなと再会したい
来年もぜひ開催してほしい!
◇現地協力機関
AMDAスリランカ支部
世界宗教者平和会議(WCRP)スリランカ委員会
スリランカ言語・社会統合省
スリランカ教育スポーツ省
アヌラ―ダプラ県
インドAMDAピースクリニック
AMDAピースクリニック開院4周年式典 |
◇実施場所 インド ビハール州 ブッダガヤ
◇実施期間 2009年11月〜現在継続中
◇派遣者 菅波 茂 医師・AMDA理事長/ 難波 妙 AMDA国際部部長/ニティアン・ヴィーラヴァーグAMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDAインド支部医療スタッフほか女性セラピスト1名、アシスタント3名
◇事業内容
2009年末の発足以来、AMDAピースクリニックは地元コミュニティを対象にインドの伝統医学・アーユルヴェーダの治療を行ってきた。クリニックでは国内はもとより外国人巡礼者や旅行者が来院する。地元コミュニティにおいては無料医療キャンプなどの地域保健プロジェクトが根付いてきた。
無料医療キャンプでは医師1人、セラピスト3人、調剤師2人、アシスタント2人、調整員1人の合計9人で構成された医療チームがサマンヴェイ・アシュラム(Samanvay Ashram)を拠点にリュウマチ、頭痛、皮膚病などの患者59人に無料で治療を行った。無料コミュニティ健康プログラムでは延べ720人の裨益者を対象に診察や薬を処方した。また、歩行困難や寝たきりの貧困者には訪問診療を行い、薬やセラピーを無料で提供している。
2012年10月29日にはピースクリニックが開院から4周年を迎え、記念式典が執り行われた。記念式典では日蓮宗ご住職による活動の発展祈願が行われ、地元子どもたちへ奉納されたお菓子が配られた。
◇現地協力機関
AMDAインド支部
モンゴル検眼事業
子どもの弱視治療セミナー |
◇実施場所 モンゴル ウランバートル市
◇実施期間 2012年8月29日〜31日
◇派遣者 高裕子 川崎医療福祉大学准教授/菅波 茂 医師・AMDA理事長/難波 妙 AMDA国際部 部長
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
モンゴル眼科協会、
City Optic,
AMDAモンゴル
◇事業内容
2012年8月、岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業として、モンゴル眼科協会協力の下、川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科視能矯正専攻 准教授、高裕子先生のセミナーがモンゴル・ウランバートル市で、子供の弱視治療をテーマとして開催された。
AMDAは、モンゴルの全人口の1/3が18歳以下であることに着目し、若年層の眼科治療の技術向上に貢献することは、医療分野のみならず、子どもたちの教育支援にもつながると確信し、2010年から眼科検診啓発とともに、検眼技術向上のセミナーを眼科医、眼鏡技術関係者対象に行っている。視力は生後3カ月から8歳くらいまで発達するため、幼児期に重大な異常を発見し、適切な治療と、矯正用の眼鏡を提供することが大切である。
2012年度は、第3回目の事業として、川崎医療福祉大学、視能矯正専門家である高裕子准教授によるセミナーを8月29日から3日間開催し、23名の眼科医が講義、実習を通して、眼疾患のために視力不良になった「低視力」者と、視機能回復の可能性がある小児の「弱視」の分類とその治療について学んだ。また眼鏡の必要な弱視の子ども16人にそれぞれに適切な眼鏡が無償で提供された。
これまで3年におよぶ一連の活動が評価され、モンゴル国眼科協会のブルガン会長(Dr.Bulgan Tuvaan)よりAMDAへ感謝盾が贈られた。
今後も、モンゴル眼科協会、City Optic, AMDAモンゴルの協力のもと,子供の眼科治療分野の技術向上に貢献を続ける予定。
◇受益者の声
日本の先生に診てもらうために田舎からでてきました。いくらお礼を言っても足りない。
本当にありがとう。感謝の気持ちを絵で伝えたい。とてもよく見えます。
◇現地協力機関
モンゴル眼科協会
City Optic
アイリス ツアー
カンボジア HIV/AIDSプロジェクト マラリア予防プロジェクト
AMDAカンボジア支部では、2012年度、「HIV/AIDSプロジェクト」「マラリア予防プロジェクト」の2つのプロジェクトを去年に引き続き実施した。
HIV/AIDSプロジェクト
世界AIDSデーにイベントを開催 |
2012年度のキャンペーンは、「ゼロを目指す」をテーマに、「新たなHIV感染者ゼロ、HIV/AIDS患者の差別ゼロ、AIDS関連の死亡者ゼロ」に則って実施された。
正しい知識の啓蒙を目的として、Tシャツや性病やHIV/AIDSに関するパンフレットを制作、AMDAカンボジア支部が実施する研修を受けたボランティアが、コンポンスプー州やプノンペン州内の大学や高校、それぞれの地域住民へ配布した。また、世界AIDSデーには、イベントを開催した。イベントには地方当局やボランティアを含む200名が参加し、伝統的な人形劇やクイズ、パンフレットの配布を通じて、正しい知識の普及・知識の共有ができた。
マラリア予防プロジェクト
地域住民がプロジェクトに参加し発言していくことで、コミュニティ内の相互理解が深まり、コミュニティ主導が確立できるという考えに基づき、地域住民の能力開発、プロジェクト業務への関与、持続可能なシステムの強化、自治体の保健関係の人材と地域住民の連携を図った。
具体的には、村落保健ボランティアに対する研修の実施、保健所職員に対する研修の実施、キャンペーン活動、地域におけるマラリア予防教育の継続、必要な医療サービスの提供促進などであった。
実際、研修を受けた村落保健ボランティアが、地域住民にマラリアの基礎知識や予防・対処法を伝える勉強会を開催することで、多くの人に正しい知識が浸透し、保健所職員の能力向上や、マラリア予防啓蒙活動の受益者の増加などの成果が見られた。
バングラデシュ ピースビルティングプロジェクト
清掃活動をする子供たち |
◇実施場所 バングラデシュ チッタゴン管区コックスバザール県マハムニ村
◇実施期間 2013年1月1日
◇事業内容
AMDAが提唱する多様性の共存を可能にする「オープン相互扶助」の考えに基づき、バングラデシュ・チッタゴン管区で宗教を超え民族が平和的に共存していくための医療和平をスタートした。イスラム教徒が大半を占めるバングラデシュにおいて少数派の仏教徒が住んでいるチッタゴン丘陵地域マハムニ村にある母子寮とAMDAの合同プロジェクトとして「Clean up for peace」を開始した。「Cleanness is Holiness」をキャッチフレーズに、母子寮の子どもたち約100人が寮外へ繰り出し、積極的に清掃活動を行うことで地域と寮の関係も深まり、衛生への意識浸透につながると考える。
子どもたちは、楽しみながら一生懸命楽しみながら清掃活動を行い、これからも続けたいと話してくれた。
インド・ラダック地域 歯科巡回診療プロジェクト
プロジェクトスタッフとともに |
◇実施場所 インド ジャンム・カシミール州ラダック
◇実施期間 2012年 8月2日〜13日
◇事業内容
インド支部長が所属するインド・マニパール大学とヨーロッパ歯学生協議会が企画した歯科巡回診療プロジェクトに対する支援を行った。
マニパール大学およびヨーロッパ歯学生協議会の有志歯科医師、歯学生、歯科医療従事者により結成された医療チームが、インド・ラダック地域の住民に対し、巡回歯科検診や治療、小児に対する口腔衛生指導や摂食に関する啓発活動、医療従事者に対する医療教育を実施した。
同地域では、多くの子供がフッ素過剰摂取によるフッ素中毒症に罹患していることから、口腔および全身診査を実施。さらに、家庭の水道水を採集し含有フッ素量に関する調査を行った。また、教育を受けた歯科医療従事者が少なく、う蝕を有する永久歯は抜去されるため、既に、臼歯を喪失している児童も多い。このような状況を改善するためには乳歯期からの虫歯予防が重要であり、児童に対し歯磨き指導や口腔衛生に関する教育を行った。
ラダック地域は、広大な土地に人々が点在し生活しているため、全域をカバーした医療体制の構築は困難である。今回は、各地域で活動する医療従事者育成のため、ボランティアスタッフが模擬患者となり、地域医療の担い手に歯科治療器具の使用方法や検診・治療時の技術的なポイントを指導できた。
今後も、「予防に勝る治療なし」をモットーにインド僻地での口腔衛生知識の普及や虫歯、口腔疾患の予防活動を実施する予定である。
◇現地協力機関
AMDAインド支部
マニパール大学
ヨーロッパ歯学生協議会(European Dental Students Association)