涙、涙の絆コンサート 前岩手県立大槌高等学校長 橋和夫
AMDAでは大規模避難所となった大槌高校の吹奏楽部を招聘し、3月18日広島市の中国新聞ホールで、19日岡山市のオルガホールで、「東日本大震災復興支援絆コンサート」を開催しました。随行され、4月に異動になられた高橋校長先生から、生徒への思いのあふれる感想文が寄せられました。
2012/3/19オルガホールにて |
筆者中央 |
AMDA東日本大震災絆コンサートで大槌高校の演奏が始まったら、いろいろな思いが交錯し涙が止まらなかった。大震災以来、多くの方々からいただいたたくさんの支援に対し感謝の気持ちを表したいとの思いで臨んだコンサートであったが、広島県および岡山県の多くの人たちに大歓迎を受け感極まってしまった。両県の多くの人たちの温かい気持ちで満ち溢れた会場で演奏できることは、生徒たちにとってこの上ない喜びであり、「生徒たちは幸せだな」と思ったら涙が溢れて止まらなかった。
吹奏楽部の14名の生徒の中には、被災した生徒も多い。家族を失った生徒もいる。父親を亡くした生徒、あるいは父・兄・祖母を一度に亡くした生徒もいる。ステージで頑張っているある生徒の兄のことが思い出され、さらに涙に拍車がかかってしまった。その兄とは、昨年の3月に卒業したばかりの生徒で、私もよく知っている生徒であった。柔道部の生徒で2年次の新人大会ではベスト4に入る活躍をした。真面目で優しく思いやりの深い生徒であった。警察官を目指し進学も決まり、4月からの入学に胸を膨らませていた矢先のことだった。3月11日、あの忌まわしい大津波が彼と父親、そして祖母を飲み込んでしまった。地震発生後、大津波警報が出された。車で出かけていた彼と父親は足の不自由な祖母を助けようと自宅に戻った。そのとき残酷にも津波に流されてしまった。車でそのまま避難しようと思えば助かったであろうが、悲しく残念でならない。その弟である生徒の演奏を聴いていたら、彼の兄のことが思い出されてならなかった。「○○君、弟さんは頑張っているよ。天国で見守ってね。」と、涙が溢れ恥じらいもなくハンカチで目を拭いた。
この度の東日本大震災絆コンサートはAMDA様からご招待頂いて実現したものである。AMDA様からは震災後すぐに医療支援、救援物資の提供を受け、さらに制服支援、奨学金貸与、広島から高校生来校および生徒間交流の橋渡し、生徒の岡山県招待などたくさんの支援をいただいてきた。衷心より感謝申し上げたい。
今回の広島、岡山両県での絆コンサートはそれぞれ歓迎と温かい心に満ち溢れ、私たちの心は感激と感動と感謝の気持ちで溢れんばかりであった。広島県では60数校の県立高校から生徒が参加し、休日にも関わらず広島県教育委員会教育長さんを始め多数の事務局の方々、また、多くの校長先生方にもご協力とご来場をいただいた。身に余る歓迎に感謝の言葉も見つからないほどであった。黒瀬高校和太鼓部、福山誠之館高校チアガール部、安古市高校吹奏楽部の皆さんにはたくさんの元気をいただいた。岡山県では、AMDA高校生会のメンバーに準備や運営を担っていただき、心温まる素晴らしいコンサートにしていただいた。就実学園高校吹奏楽部との合同演奏も迫力があり、会場内の全ての人たちが圧倒され感動に包まれたと実感する。コンサート後の交流会も若さと元気に溢れ、名残の尽きないものとなった。距離的に離れていても、お互いを思いやる心は近く、強い絆で結ばれたように感じた。
東日本大震災絆コンサートはAMDA様を始め、広島・岡山両県の多くの方々にご支援をいただき、生涯忘れ得ぬ思い出深いものとなった。改めてご支援ご協力を頂いた全ての方々に心より感謝申し上げたい。