チリ地震被災者に対する緊急支援活動(2010/6発行ダイジェストNo.34掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

チリ地震被災者に対する緊急支援活動(2010/6発行ダイジェストNo.34掲載)

チリ地震被災者に対する緊急支援活動

地震発生2月27日午前3時34分(日本時間午後3時34分)、マグニチュード(M)8.8
第7州を中心に沿岸部で地震津波の深刻な被害が発生。被災者は200万人以上に上るといわれる。
〈派遣者〉
第一次チーム:実態調査からプロジェクト立ち上げまで 
3月2日成田発、3日ボリビアサンタクルス着、3人のチームとして合流。5日(現地時間)チリ・サンティアゴ空港到着。
津曲 兼司 医師  (医)アスカ会所属 AMDA多国籍医師団上級顧問 派遣期間2日〜13日(日本発着)(チリ国内滞在期間 5日〜11日)
森田 佳奈子 調整員  元青年海外協力隊員 村落開発普及員 ドミニカ共和国派遣 08年1月〜10年1月(チリ国内滞在期間 5日〜28日)
パトリシカ   心理カウンセラー AMDAボリビア支部(チリ国内滞在期間 5日〜11日)
第二次チーム:プロジェクト実施準備から終了まで 
成田から3月14日発、15日早朝(現地時間)チリ・サンティアゴ着。アウグスト調整員も15日着、サンチアゴで合流。
石岡 未和 看護師  元青年海外協力隊員 ドミニカ共和国派遣 07年6月〜09年6月(チリ国内滞在期間 15日〜31日)
大和 玲子 看護師  元青年海外協力隊員 チリ共和国派遣 08年1月〜10年1月(チリ国内滞在期間 15日〜4月5日)
ペンダガスト アウグスト 調整員 AMDAペルー支部(チリ国内滞在期間 15日〜26日)



地震と津波に見舞われた沿岸部被災地

被災漁村地域のみなさんと
(左から大和看護師、石岡看護師)

乳児検診

配布物資セット

〈乳幼児支援プロジェクト実施に至るまで〉

 

第一次チームは、マウレ州(第7州)の州都タルカのチリ軍敷地内に設置された地震対策緊急本部、軍医療担当部門、コンスティツシオン病院、地元NGO、ビオビオ州(第8州)のコンセプシオン州立病院(周辺の5県20万人を対象とする総合専門病院)などを訪問し調査活動を行ない、マウレ州、ビオビオ州にまたがる沿岸部地震津波被災地の視察をした。その結果、着の身着のまま逃げた被災者の中で、災害弱者である乳幼児への支援が行われていないことが浮かび上がり、その健康を守る活動の必要性に着目し、乳幼児を抱える家庭への物資配給と乳幼児健診を実施することを決定した。

 

〈乳幼児支援プロジェクト〉

 

実施地域: チリ国第7州:マウレ州の沿岸部 コンスティツシオン (コンセプシオンの北約180Km)
乳幼児検診実施チーム構成: 計67名
AMDA 看護師2名(大和、石岡)、調整員2名(森田 アウグスト)
CESFAMアルトセロ診療所  (CESFAM:Centro de Salud Familial Alto  Cerro alto)所長1名、医師2名(小児科医、救急医 各1名)、看護師5名、看護助手5名、栄養士2名、ソーシャルワーカー2名、運転手2名、事務2名など 
サンチアゴから派遣のチリ緊急医療チーム 5名
チリ政府軍ラ・セレーナ基地特別部隊 15名
後方支援:チリ政府地震対策緊急本部、チリ軍タルカ基地、保健省マウレ州事務所、ミドリ十字薬局、タルカ住民支援グループ、他

実施内容: 実施期間:3月15日から31日まで

3月23日〜25日のプロジェクト実施日へ向け入念に事前準備を重ねた。実施機関であるCESFAMアルトセロ診療所の小児専門看護師が抽出した、地震の影響で健康・栄養状態悪化が懸念される乳幼児100名のリストを元に、診療所内・外の2チームに分かれて乳幼児健康診断と物資配給を行った。診療所内では来院した乳幼児に対して、診療所外では被災キャンプ地や村落部貧困地域など特定地域を巡回訪問して実施を行った。内容は、チリ厚生省の乳幼児定期健診プログラムに基づき、乳幼児の体重・身長を測定し、成長曲線で栄養・発育状況を観察、その後、保健・衛生・栄養・育児指導を行い、物資を配給する流れ。この際、AMDA独自アンケート調査とチリ厚生省の母子健康手帳のデ-ターも活用した。

幸い、栄養状態に極度の影響をきたしている乳幼児、医師の診察・処置が必要になる乳幼児は発見されなかった。

しかし、被災キャンプ地や街の中心から離れた村落部貧困地域へ行けばいくほど、居住環境が悪くなっていったという報告を受けると同時に、震災後4週間の亜急性期となり、感染症が懸念される時期ということも重なり、アフターフォローとして集団保健指導を実施した。23日に、実際訪問して衛生環境が悪かったと報告を受けた場所を選び、25日に診療所の看護師、首都の緊急医療チームと共に集団保健指導を3か所で計80名に対して実施した。手洗い実施指導と同時にビデオ教材を使い、手形のお面を被り、歌やダンスなどで身体を動かしながら、被災で落ち込む人々に少しでも明るい時間を提供したいという想いも込め、子供から大人まで楽しく学べる内容とした。

配布物資:高栄養粉ミルク(各家庭2缶)、哺乳瓶、おむつ(0〜2歳児用各サイズ:各家庭2袋)、ウェットティッシュ、ろうそく、医薬品(抗皮膚炎症軟膏、小児用ビタミンACD混合内服液、小児用鉄分補給内服液)、フリース毛布、手指消毒用アルコールジェル他(注:医師の指示により、ビタミン剤、鉄剤は4カ月から1歳までの乳幼児に適用)
※その他:小児用アセトアミノフェン内服薬100箱を診療所へ寄贈


AMDAでは、震災から半年後の9月に、活動した被災地を再訪して、被災者が必要とする支援を再度実施します。現地事情に精通する今回協力くださった現地スタッフとともに行います。この事前調査として、緊急救援時に派遣した大和看護師が6月にチリ入りしています。引き続き御協力をよろしくお願いします。