ハイチ地震被災者に対する緊急医療支援活動
診療する渡久地医師 |
活動内容(1月15日〜2月9日時点): ●ハイチ・サンマルク 聖ニコラス病院での病院支援− 第1次(1月18日〜22日) 被災地ポルトープランスから転送されてくる重症患者の 診療 ●ハイチ・サンマルク 聖ニコラス病院での病院支援− 第2次(1月28日〜現在まで) ●ドミニカ共和国ヒマニでの病院支援(1月23日〜24日) 被災地から転送されてくる重症患者への処置 ●ハイチ・ゴナイブ Hospital de Secours des Gonaivesなど2病院の支援(1月25日〜現在) 被災地から転送されてくる重症患者の診療 |
背景
1月12日午後4時53分(現地時間)ハイチ共和国首都ポルトープランス近郊で、マグニチュード7.0(USGS : アメリカ地質調査所)の地震が発生しました。ポルトープランスは、人口220万人を抱える大都市であることから、多くの犠牲者が予想されました*。建物の倒壊や電気・水・通信等のインフラは不通となり、主要な空港や港湾も機能が制限されました。この地震によりハイチ政府と治安維持にあたっていた国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が機能不全に陥ったことから、各国政府・援助機関が支援を開始したにもかかわらず、支援活動は滞りました。 1月26日時点で、ポルトープランスでは50万人が避難生活を送っており、早急にテントの配布や避難所の設置が求められています。WHO/PAHO (汎米保健機構/WHOアメリカ事務局)によると、医療支援に関しては、負傷者への緊急手術が求められる急性期から、術後介護や公衆衛生の改善の求められる亜急性期に移ろうとしています。現在のところ、懸念されている水を介する感染症や呼吸器感染症の蔓延は発生していません。
*ハイチ政府によると、2月6日時点で、死者21万人以上、負傷者30万人の被害が出ています。ポルトープランスでは、約120万人が避難生活を送っており、約50万人は近県に避難したと伝えられています。
活動経過(1月15日〜2月9日時点)
AMDAは、この甚大な地震被害に際し、1月15日日本から渡久地医師、鈴木調整員、ヴィーラバグ調整員の3人を、同時にカナダ支部から看護師1人をハイチの隣国であるドミニカ共和国首都サントドミンゴに派遣しました。サントドミンゴは、陸路からハイチに人国する海外からの支援団体の人口となっており、AMDAスタッフも、協力団体との調整や活動サイト等の情報収集を行いました。その結果、18日渡久地医師、ヴィーラバグ調整員、カナダ支部看護師の3人は、カナダの民間団体CECIと現地NGOと共に、重傷者が転送されているサンマルク(ポルトープランス北西約90キロ)の聖ニコラス病院に向かい、到着後診療活動を開始しました。
一方、AMDA本部及び各国支部は、この度の被災状況の大きさを鑑み、AMDA多国語医師団としての医療支援を拡充すべく、医療従事者を追加派遣しました。1月20日日本から菅波医師(AMDA代表)と朴医師(岡山大学病院)を、22日カナダ支部から看護師2人を、22日ロンドン在住松井医師を、23日コロンビア支部から医師3人・看護師2人を、24日ペルー支部から調整員1人を、26日ネパール支部から医師2人と日本から川村調整員を、それぞれ派遣しました。
1月18日から開始したサンマルクでの活動は、各国からの支援が入り医療ニーズが満たされたことから、国連等関係機関と協議した結果、一旦、22日で終了しました。サンマルクでの活動を終えた渡久地医師は、朴医師、松井医師と共に、重症患者が転送されているドミニカ共和国・ヒマニの病院で、24日から25日まで視察するとともに処置の手伝いにも加わりました。
1月25日からは、コロンビア支部・カナダ支部・ベルー支部スタッフが被災地ポルトープランスから5万人以上の被災者が避難しているゴナイブ(Gonaives :ポルトープランスから北西120キロ)の病院で診療を開始しています。また、1月28日サンマルクの聖ニコラス病院から、再度整形外科医の派遣要請を受けたことから、29日からネパール支部医師2人が骨折処置等の手術に一日あたり15例程立ち会っています。更に、2月5日からは、ボリビア支部医師3人とカナダ支部看護師1入が、コロンビア支部の医師・看護師の交代として、ゴナイブの病院に入り、診療を開始しています。
病院支援の他にも、現地協力団体を通じた病院への医療消耗品の寄贈や被災者へ食料品の寄贈を実施しています。今後、病院支援に加え、地震による四肢切断被災者への義肢プロジェクトを実施すべく、準備をしています。