マニパール大学との災害医療訓練協定(2009/4発行ジャーナル4月春号掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

マニパール大学との災害医療訓練協定(2009/4発行ジャーナル4月春号掲載)

マニパール大学との災害医療訓練協定

AMDAグループ代表 菅波 茂


AMDAインド支部長カマト医師・岡山大学土居教授・
マニバール大学国際部部長バット医師・同大学副学長
バラル医師・AMDAグループ菅波代表(左から)

AMDAインド支部ラジバット医師・土居教授・
バット国際部部長・バラル副学長・菅波代表・
カマトAMDAインド支部長

 2月13日にインド・カルタカ州で、マニバール大学、岡山大学、AMDAの共催で「災害医療に関するNGOと大学の国際協力シンポジウム」が開催されました。このセミナーは、岡山大学大学院の教育プログラムとしても位置付けられており、日本からは、この教育プログラムの指導委員でもあるAMDAグループ代表の私と岡山大学から土居弘幸教授、大学院生らが参加しました。この機会を捉え、AMDAはマニパール大学などと災害医療訓練協定を結びました。この協定により、WHO(世界保健機関)との協力による南西アジア6カ国のAMDA支部、マニパール大学などとの迅速な救援活動が可能となりました。協定前にもマニパール大学はオリッサ州の洪水(1999年)、グジャラート州の大地震(2001年)、タミル・ナードゥ州の津波(2004年)などによる被災者救援活動に、AMDA多国籍医師団の一員として医療チームを派遣しています。驚いたことに、マニパール大学は災害総合対策プログラムとして、コミュニケーション学部による災害情報を住民に提供するコミュニティ放送、建築学部による被災地の家屋の復興への建築学などを整備すること、地域医療学部による災害訓練センターを発足させることがAMDAとの協定の目的でした。この夏にはAMDAと協力して災害救援研修プログラムを実施する予定です。レスキューチームを含めた救援医療チームの実地研修がその内容です。更に、来年に発足するAMDA−マニパール大学災害訓練センターにはカルナタカ州が協力をするとのこと。州政府のマニパ−ル大学への大きな期待が理解できます。
 マニパール大学はガンジーを崇拝するT.M.A.パイ氏により1953年、無人の地であるマニパール峡谷に創設されました。現在では毎年15,000人が入学する総合大学です。大学の知性の象徴である図書館はアジア最大といわれています。医学部の総合ランキングは2004年全インドで第3位であり、特徴は医学生の3割が海外からの留学生です。キャンパスがネパール、マレーシアそしてドバイにもあります。その卒業生は世界50カ国に広がっています。マニパール大学を中心としたマニパール市は人口が20万人ですが、「知性の州」といわれているカルナータカ州の象徴として今後も膨張していくと思われます。21世紀は国際ネットワークをもつマニパール大学の時代でもあるのです。
 コミュニケーション学部の学部長であるカマト教授は、叡智あふれる81歳。インド通信の記者としてガンジー、毛沢東、周恩来、スカルノ、マーティン・キングなど20世紀を代表する世界の指導者に直接インタビューをした豊富な経験を持っています。AMDAが提唱する「相互扶助に基づく尊敬と信頼の国際ネットワークよる世界平和推進の理念」に共鳴して、「インド274地域すべてにAMDAクラブのネットワークを設立しAMDAの活動を推進しよう」との提案をしてくれました。カマト教授の人的ネットワークとマニパール大学のネットワークを合わせれば不可能ではない気がしました。有難い提案です。その場にいた土居教授が2008年に私がガンジー人道賞を受賞したことを報告すると、すぐさま立ちあがってお祝いの拍手をしてくれたことが印象的でした。
 数年前からの米国発の金融恐慌に続く世界恐慌により米ドルが世界基軸通貨の地位を失い、北米、中南米、ヨーロッパそしてアジアにそれぞれの地域通貨が出現すると予測されています。アジア通貨は日本、中国、インドそしてロシアが深く関与する可能性が高いです。重要な役割を担うインドにおいて構築されるAMDAのネットワークが、災害医療のみならず日本とインドとの尊敬と信頼のネットワークとしてお役に立つことができれば、過去25年間多くの人たちに支援されてきたAMDAグループの代表として最高の喜びです。