2012年度 災害医療援助特論 公開講座開催報告 – AMDA(アムダ)
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特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2012年度 災害医療援助特論 公開講座開催報告

2012年9月15日
岡山県立大学大学院 保健福祉学研究科
2012年度 災害医療援助特論 公開講座が開催されました。

本年度は、全体テーマを
「東日本大震災被災地の医療の現状と鍼灸治療の果たす役割とその可能性」
として4名の講師の方に講演していただきました。

1時間目
講師:AMDA・理事長 菅波茂

講義概要:
東日本大震災を含め、世界各地で支援活動を行ってきて「支援される側にもプライドがある」ということは活動の基本理念となっている。一方的なありがとうは、人間としての尊厳を失わせてしまう。被災者の方へ「ありがとう」と言う機会を作ることが支援活動の中でも重要。

AMDAの「よろこびの方程式」とは「意欲」と「能力」のある人には「機会」を提示し支援する人にも、支援される人にも自己実現の喜びを実現することにつながる。

知の体験の第一歩は「行く」ということ。「自分に何ができるだろう」と考える前に被災地に、どんどん訪れてほしい。

災害時の西洋医学の限界。血液検査やレントゲンなどの検査環境がないと聴診器1本で診療することになる。診断はできるが、積極的な治療はできない。薬の処方などまで。

ところが、鍼灸治療を用いた場合、鍼があれば、診断と治療ができる。特に今回の東日本大震災では、高齢者の被災者が多く鍼灸治療が有効であった。

今後の災害のためには、ぜひ鍼灸医療チームを養成していきたい。

2時間目
講師:AMDA国際部 プロジェクトオフィサー 大政

講義概要:
緊急支援発生時の,AMDA内部の動き。
緊急救援事業と復興支援事業の概要。
医療支援、健康支援、教育支援、同世代交流支援、被災地間交流支援などを実施しており、緊急救援時期に149人、復興支援時期に147人のスタッフを東北に派遣しており、復興支援に関しては今後も、震災から3年間は継続していく。

震災発生から1年半がたち その期間の8割以上を東北の被災地で過ごしている。これだけ、被災地で活動し、被災された方と過ごしてもやはり、いまだに本当の被災者の気持ちはわからない。だからこそ、同じ経験をした者同士の交流である被災地間相互交流事業は大変意義のあるものと考えている。

復興に向けての提言として
緊急救援は、物資、医療、ライフラインの提供が必須復興支援書記は、物資、マンパワー、心のケアが必要

そして今後の自立について
いろんな人のアイディアが必要 なるべくたくさんの人が被災地を訪れ それぞれの目で見たこと、耳で聞いたことを、それぞれに考え 復興に向けてのアイディアを出し合ってほしい。

そして、これからも たくさんの人に、東日本の復興支援に携わってほしい。

3時間目
講師:大槌町 AMDA健康サポートセンター 鍼灸師 佐々木氏

講義概要:
震災前の生活から、大槌町で鍼灸師として親しまれていた。しかし、東日本大震災ですべてが一瞬で失われた。黒い土煙が、海の方に見えた時 祖父母の教え「いのちでんでんこ」という言葉がよみがえってきた。家族にはそれぞれ自分の身は自分で守るように伝え愛犬と鍼灸の道具を車に乗せて、目の前のバイパスへ逃げた。津波がブルドーザーが口をあけたまま、壁のようになって押し寄せてくるのが見えた。

波にのまれながらも、何人かを水の中から救いだし 自分もどうにか生き延び、家族と再会を果たした。

その日から、自分で鍼灸治療の道具を抱えて町内の方を治療して回った。夜には内陸まで出かけて、鍼灸の道具を調達し、日中は治療にあたるという過酷な時を過ごしていた。

そこで偶然、AMDAの医療チームが地元鍼灸師を探していることを知り ここからAMDAの医療チームの一員として活動を開始し、避難所での鍼灸治療、巡回鍼灸治療などを経て 今現在は,AMDA健康サポートセンター内で鍼灸院を再開している。AMDAに出会えて、本当に良かった。

波にのまれて無くなってしまったけど 以前と同じように、少しずつAMDA健康サポートセンターも気軽に人が立ち寄れ、笑顔の集う場所になってきているように思う。

沢山の方々の温かい支援があってここまで来られた これからもがんばっていきたい。

4時間目
講師:明治国際医療大学教授 鍼灸師 今井氏

講義概要:
AMDAの鍼灸師として緊急救援期から復興支援期に渡り3回被災地を訪れた。
鍼灸師が被災地で緊急医療チームとともに活動するというのはこれまでの歴史の中で初めてのことだと思われる。

今回の災害で、改めて災害医療における鍼灸の重要性が見出された。

科学的な鍼灸治療の効果について紹介。

今後、東日本の復興支援における鍼灸治療は、過疎地域の鍼灸治療と近いものがある そしてそれを「極限環境治療」として考えるのであれば 宇宙ステーションなどでも鍼灸を活用する日が来るのではないかだろうか。

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