ネパール地震後 トリブバン大学教育学院(TUTH)・AMDA合同アウトリーチプログラムを見学して    K医師 – AMDA(アムダ)
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ネパール地震後 トリブバン大学教育学院(TUTH)・AMDA合同アウトリーチプログラムを見学して    K医師

AMDAネパール復興支援プロジェクトのフィールドに見学に訪れた日本人医師K氏から、フィールドで感じたことなどのレポートが届きました。以下に紹介させていただきます。

 

災害医療の現場を見学したいと思った私達は、震災後のネパールに入り、AMDAの復興支援の一つであるトリブバン大学教育病院と合同のアウトリーチクリニックを見学する機会を得た。そこで実際に見て、感じたことなどを報告する。

1日目はネパールの首都であるカトマンズから見学先の仮設病院があるチャウタラへ移動した。

被災地を目にした印象として、建物の損壊はまだ見られるが、生活は通常通りに近付いてきているのではないかと感じた。ライフラインも復旧し、復興作業が進んでいたり、子供たちを中心に笑い合っていたりした。[pagebreak]
 
衛生環境に関して、雨季には入ってはいるが蚊や鼠の大量発生などは見られず、マラリアも見られていなかった。赤十字共同テント周辺の仮設トイレも清潔に掃除されていた。

チャウタラに入って2日目、実際に仮設病院で精神科でのカウンセリングと総合内科外来を見学することができた。仮設病院は薬局や放射線治療、救急治療といった役割を持ったテントが10個以上からなっていた。

現地で対応してくれたゴパル先生によると、被災3カ月後の今、医学的に求められているものは、PTSDやうつ病などに対する精神科的カウンセリング、骨折などに対する整形外科的処置、下痢や皮膚疾患などに対する救急・総合内科的処置とのことだった。1日に病院を訪れる患者の総数は200人ほどで、そのうち精神科的診察は10人ほどであったが、病院を訪れる患者の数は減ってきているようだった。

この仮設病院は約15日後(8月16日頃)に撤退するので代わりとなる病院を急ピッチで設置していた。


支援活動のためにネパールに来ている団体は様々あり、WHOや赤十字、国連などが役割を果たし、補い合って、サポート体制を組み上げていた。団体毎に垣根がないからこそ、ゴパル先生が「現在大きな不足はない」と答えられるような援助体制が成り立っているのだと感心した。

チャウタラに滞在している際にゴパル先生から、日本ではどのように地震から来る精神的なダメージを軽減しているのか、という質問を受けた。ネパールではコミュニティーが機能していたり、宗教が人々に根付いているため、寺院に集まって不安や心配などを話したりしていて、ダメージは軽減することができているとのことだった。

日本でも災害が発生したら近所の人たちと集まって話をすると考える。しかし実際のところどのようにして心の傷を癒しているかは分からなかった。

そこで私は、精神的回復において多分に大きな役割を果たしているのは、我慢や秩序、勤勉さといった日本の古くから受け継がれている国民性であると考えた。ネパール人にはネパール人の、日本人には日本人の危機の乗り越え方の違いがあると感じた。

今回はAMDAの援助のおかげで実際に被災地の医療を間近で見ることができ、とても大きな経験になりました。本当に感謝しています。ありがとうございました。