2016年スリランカ和平構築プログラム 青少年交流事業 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2016年スリランカ和平構築プログラム 青少年交流事業

2011年に、次世代交流による和平構築を目的に始まったスリランカ青少年交流事業は今年で6年目を迎えた。2016年7月29日から31日の3日間に渡り行われた交流事業は、AMDA、AMDAスリランカ支部、セントジョンズアンビュランスが合同で、スリランカ北東部にあるトリンコマリーで開催した。
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スリランカ青少年交流事業の背景には、スリランカの内戦と停戦時に行ったAMDAの医療支援活動がある。スリランカは、人口の約8割を占めるシンハラ人と約2割を占めるタミル人が住む他民族他宗教国家で、その2つの民族が対立し26年に渡る内戦が勃発。内戦中は民族間の交流はほとんどなく、社会は分断された。そんな中、停戦中であった2003年から2006年にかけAMDAは日本から医療従事者を派遣し、対立していたシンハラ人、タミル人が住むそれぞれの地域で平等に、医療支援活動として巡回診療と健康教育を行った。これをAMDAでは医療和平と呼んでいる。医療和平は、人が生きていく中でなくてはならないものの一つである医療を通じて、平和に寄与することが目的である。スリランカ青少年交流事業は、AMDAのスリランカ医療和平を基に始まった事業である。

6年目になる今年は、トリンコマリーにあるムトゥールセントラルカレッジを会場に、宗教、スポーツ、文化、ワークショップでの活動を通じて、民族、宗教の違う生徒が寝食を共にし、交流した。参加者はタミル人の多いキリノッチから生徒24名と引率の先生2名、シンハラ人の多いマータレーから生徒24名と引率の先生3名、開催地であるトリンコマリーからは生徒16名と先生5名、日本からはAMDA中学高校生会から2名と引率の先生1名、計77名が参加した。

  

開会式の後の宗教プログラムでは、参加者全員が仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、それぞれの宗教施設を訪れ、普段訪れることのない他宗教のしきたりを体感していた。2日目のバレーボールによるスポーツ交流では、参加した生徒が学校、出身地域に関係なくグループに分けられ、試合に勝つべくチームメンバーが力を合わせてプレイした。午後のワークショップでは、参加した生徒が自分の得意なこと、趣味などを絵で表現した後、皆、席を立って違うグループの生徒に自己紹介を行った。お互いに英語、シンハラ語、タミル語と違う言語を話す生徒同士も絵を使うことで交流することができた。夜には、キャンプファイヤーを囲みそれぞれのグループで出し物を行った。最終日の朝は、まず、宿泊、交流で使用した学校の清掃から始まり、借りた会場をきれいにして返すことの大切さを学んだ。きれいになった会場でのワークショップでは、新聞や風船を使って衣装やテントをグループに分かれて作る共同作業を通して交流を深めた。また、今回の交流事業で学んだことをグループごとに絵で表現し発表を行った。それぞれの言語で発表したものの、宗教施設とバレーボールの絵を描いているグループが多かったことから、言語が通じなくても印象深かった活動を皆で共有することができた。最後に行われた閉会式には、トリンコマリーを含む東部州の社会開発関連部部長であるガラバッティ氏が来賓として参加し、当交流事業で活躍した生徒への表彰をAMDAスリランカ支部長サマラゲ医師と一緒に行った。閉会式中に行われた文化交流では、それぞれの地域の生徒がダンス、音楽、生け花などのパフォーマンスを事前に準備し、発表することによって、お互いの文化を垣間見る良い機会となった。全てのプログラム終了後、参加した生徒は別れを惜しみながら、それぞれの帰途についた。

   

今回参加した学校の先生からは、″スリランカ北部と中部の人達が交流することはほとんどない。このプログラムは、平和なコミュニティを作るのに貴重なプログラムだと思う。今回、私も引率としてこのプログラムに参加し、地域の習慣、食べ物などを通じて新しい体験をし、多くのことを学ぶことができた。″とコメントをいただいた。また、別の先生からは、″地域の外にでて、他の地域や国の生徒と交流する機会は滅多にない。内戦で親を亡くした生徒も参加しているが、彼らにとっても貴重な体験になっていると思う。″とおっしゃっていた。このプログラムに参加した生徒は、次世代におけるスリランカの平和を担っていくことだろう。