2018年度アフリカ・ルワンダ学校健診活動概要 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度アフリカ・ルワンダ学校健診活動概要

プロジェクトオフィサー 橋本 千明

ルワンダへは、1994年大虐殺直後にAMDA緊急医療チームを派遣しました。2015年よりNPO法人ルワンダの教育を考える会からの要請を受け、学校保健の知識・技術移転を実施しています。
本年も特に学校保健の知識普及・学校健診の技術移転を目的に9月に日本から医師がルワンダに入り学校健診を中心に活動いたしましたので報告します。活動したのは、岡山大学大学院環境生命科学研究科、小児科医の頼藤貴志医師と独立行政法人国立病院機構岡山医療センター、小児科医の浦山建治医師、名瀬徳洲会病院の古賀翔馬医師です。また、長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎医師を含む研究チームも合流されました。[pagebreak]

AMDAとルワンダの活動歴史

AMDAのルワンダでの活動は、1994年4月、ルワンダ国内で勃発した民族紛争により発生したルワンダ難民支援に対する緊急救援が最初です。ルワンダ国内では、人口750万人中50万人〜100万人が虐殺されたと言われ大虐殺のニュースは世界に広がり衝撃を与えました。アムダは岡山カトリック教会/カリタス岡山と合同事業で、ルワンダ国内避難民キャンプでアムダ多国籍医師団による緊急救援活動を実施。この活動で、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、日本から計46人を派遣。この紛争で当時難民であったマリールイズ氏(NPO法人ルワンダの教育を考える会理事長)はAMDA医療チームと出会い、通訳として活動に参加しました。それ以来現在までAMDAとの協力関係が続いています。

1994年当時 ルワンダ難民

1994年 通訳として活動するマリールイズ氏

2015年以降の活動

2015年、「ルワンダの教育を考える会」(理事長:マリールイズ氏)が運営するウムチョムウィーザ学園(ルワンダ・キガリ)で集団学校健診を導入することになり、その保健医療分野においてAMDAが協力することになりました。

マリールイズ氏が、集団学校健診導入を決意したさらなる背景には、マリールイズ氏が第4子の出産を日本で経験したことです。日本の行政より受け取った母子手帳に感銘を受けました。産まれてくる子どもたちが母親のお腹にいるときから、継続して経過観察し守られ、産まれた後も母子手帳により継続的に成長を見守られていることに感動し、いつか、ルワンダの母親たちにも母子手帳を使ってもらいたいという思いを持ちながら、まずは自らの学校で学ぶ子どもたちの健康と成長を、学校として継続的に観察すること。病気の早期発見と予防をすることになりました。

前年の2014年よりマリールイズ氏の要請に応える形で健診を行っていたアキンティンジェ・シンバ・カリオペ医師(当時ルワンダ政府保健省付属公立病院 ミビリジ郡病院長)は、学校健診に関する知識や技術を具体的に学んだ経験がなかったため、2015年、岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業の助成を受け岡山で2か月間研修を行うことになりました。2015年8月17日より2か月間、岡山県内の行政機関、医療機関、教育現場等を訪問、乳幼児健診や小学校で学校保健制度・健診の実際を学びました。

2015年 岡山での研修で
母子手帳をプレゼントされるカリオペ医師

2015年 総社市常盤小学校で
学校給食を体験する研修中のカリオペ医師

その後、2016年と2017年は岡山県の海外技術研修員事業(国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業)の助成で専門家を岡山から派遣。2016年はウムチョムウィーザ学園1カ所でパイロット事業として実施。地元の教育関係者や保護者健診の意義や行い方を説明し理解を得るとともに、保健省や教育省への報告を行いました。2017年は現地行政の要望もあり、活動場所を3カ所に増やしました。
今年度2018年は、長崎県熱帯医学研究所のご協力を受け9月15日から24日の日程で医師を派遣。学校健診実施の際はルワンダ人医学生も通訳として参加しており、人財育成の場ともなっています。

2016年 保健大臣との面会

2016年 健診の様子

 

2017年 健診の様子

2017年 健診終了後に折り紙を受け取る子ども

当初より活動に関わる医師、カリオペ医師より

カリオペ医師は学校健診の活動について、「子どもたちのために新しい事業に参画することに大いなる感動を覚え、またチャレンジしていくことに誇りに感じた。国を創る一助となること。また、マリールイズ氏の考えるルワンダへの母子手帳導入への入口となるものだと確信している。また子どもを中心とした政策をもとに、行政、教育現場、保護者が一体となってこどもの健康維持のために取り組んでいくことの必要性を引き続き、自国の関係者にも共有し働きかけたい」と語っています。

現在、カリオペ医師は長崎大学熱帯医学研究所に留学中であり、研究の傍ら、学校健診事業にも関わっている。そのため、今年は、ルワンダの教育を考える会、AMDAの他、長崎大学熱帯医学研究所からも医師が同行され、健診に参加頂きました。

これまでのアムダとルワンダでの活動については、以下の通りです。
1994年4月 ルワンダ難民緊急救援プロジェクト
1997年 帰還民シェルター建設事業、病院修繕事業
1998年 マイクロクレジット(小規模融資)事業
2015年 岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業研修員受入れ(カリオペ・シンバ・アキンティンジェ医師)
2016年 岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業専門家派遣(中原 康雄医師)
2017年 岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業専門家派遣(頼藤 貴志医師)