AMDA各支部からの報告1:ネパールにおける新型コロナウィルスの状況 – AMDA(アムダ)
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AMDA各支部からの報告1:ネパールにおける新型コロナウィルスの状況

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今月、AMDA本部では、世界各国における新型コロナウィルスの状況を把握するため、各支部に対してアンケート調査を行っています。本日より回答のあった支部から順に調査結果を随時掲載していきます。

支部名:AMDAネパール支部
記入日: 2020年9月1日
国内における累計感染者数: 39,460
現在の感染者数: 17,822
死者数: 228
回復者数: 21,410

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設問1:ロックダウンや規制など政府の対応について

ネパール政府は、コロナの感染拡大を抑えるために実施した3月24日のロックダウンから120日後、その一部を解除した。カトマンズ渓谷地域における感染者数の増加の最中にあって、8月18日、当局は同地域における感染拡大の可能性を抑止するため、3つの地域において外出禁止令を発令した。別段何も起こらない限り、9月3日に解除になる予定。人や車両の移動、集会や会議の開催、宗教的な集まり、社会的活動等は禁じられているが、緊急車両等の移動や、急を要する職務(救急車、保安車両、医薬品等の配達、水、ミルク、野菜等食料品の配送、調理用のガスの配達やゴミ収集車など)はこの限りではない。尚、公共交通機関は操業停止の対象となっている。

また地域の感染状況によっては、自治体が外出禁止令を発令しているところもある。

設問2:自国における医療システムの対応は?

一方、これらのロックダウンや部分的な外出禁止令、交通機関の停止により、医療施設を受診する人の数は減少傾向にある。加えて、人々が感染を恐れることから、ネパール国内における医療システムのコロナ対応は総じて満足のいくものとはいえない。検査キットや施設の不足に加え、感染予防策や緊急事態を想定した対策なども不十分であるといえる。病院におけるコロナを想定したベッド数の確保も非常に限られており、多くの感染者は自宅待機(隔離)となっている。この背景には、多くの医療施設が、コロナ感染が疑われる患者の受け入れを拒否している事実があり、また臨床試験を実施できる医療機関も極めて限られている。

ネパール国内におけるコロナ対策が全く十分でないことは、多くの知見が示す通りである。特に人的資源の不足、不十分なロジスティックチェーンの管理体制、臨床検査施設の欠如等が、医療システムの危機に対する備えを脆弱なものにしており、これらが国内の感染者数の増加に拍車をかけている。危機対応が追いついておらず、また健康に対する懸念がある中で、前線で働く医療従事者はなんとかモチベーションを保とうと努力している。

設問3:コロナに関する支部の活動および今後の予定

ネパール支部にとっての喫緊の課題は、約500名から成るヘルスワーカーやスタッフの確保(維持)に努める一方で、継続して医療サービスの提供を行っていくことである。事実、できるだけの感染予防策を講じていても、病院を数日間閉鎖するよう命じられたケースが、我が支部が運営する病院の一つで発生している。今のところカトマンズにあるシマズ歯科医院を除いて、ネパール支部が運営する医療施設は全て運営を継続・再開している。当局と綿密に連携しながら医療サービスの提供を図る反面、人々の移動を禁ずる法令により外来患者の数が減少しているのは先述の通りである。AMDAネパール支部はまた他のドナーの協力を得て、検査キットや防護服、その他必須となる医療資材を、資材が不足している地元の政府系医療機関に提供している。

コロナ対策活動:

  1. 目の前の状況に応じて、迅速にコロナに対する緊急対策や収束に向けた策を講じ、常時内容の更新を行っている。この中には非常事態を想定した準備や緊急時におけるサービスの提供、受益者・医療提供者の安全確保、持続可能性などが含まれる。
  2. 政府系医療機関に対し、必要な医療資材を提供するサポートを行っている。
  3. FMラジオ等のマスメディアを通じて、公共啓発活動を実施している。

今後の計画:

  1. 感染予防策を維持し、ネパール支部がサービスを提供する施設において安全を確保し続けること。
  2. オンライン技術やVRを利用した医療分野の学生のためのクラスを開講。
  3. ネパール支部が運営する施設(3つの病院と1つの教育施設)において通常のプログラムを維持していくこと。
  4. ドナーおよびその他支援機関からのサポートを受けながら、病院のサービス提供能力を強化すること。病院の出入り口となる各ポイントに消毒機器を設置すること。
  5. 集中治療室におけるベッド数の拡充を行うこと。