AMDA各支部からの報告4:フィリピンにおける新型コロナウィルスの状況 – AMDA(アムダ)
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AMDA各支部からの報告4:フィリピンにおける新型コロナウィルスの状況

今月、AMDA本部では、世界各国における新型コロナウィルスの状況を把握する ため、各支部に対してアンケート調査を行っています。回答のあった支部から順に調査結果を随時掲載しています。

  • 支部名:AMDAフィリピン支部
  • 記入日:2020年9月2日
  • 国内における累計感染者数: 224,264
  • 現在の感染者数: 62,655
  • 死者数: 3,597
  • 回復者数: 158,012

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AMDAフィリピン
ナバロ支部長

設問1:ロックダウンや規制など政府の対応について

フィリピンは、湖北省および中国との間の旅客機の運行を最初に取りやめた国の1つである。まず1月31日より湖北省との間の運行便を停止させ、その後2月2日よりその対象を中国全土へと拡大させた。またフィリピンはいわゆるロックダウンを実施した最初の国のうちの1つであり、「強化されたコミュニティ隔離措置」(ECQ)という形式をとってこれを行った。マニラ首都圏で3月15日より実施され、次いで3月17日よりルソン島全体がその対象となった。

現在、状況に応じてマスクやフェイスシールドの着用を義務付ける法律や政策の整備・施行が進められていることから、マスクおよびフェイスシールドの着用は一般化したといってよい。フィリピンは*世界で最も人口の密集した都市を有することから、状況は他の国や地域と様相が異なる。また世界各国にいる多くのフィリピン人出稼ぎ労働者についても触れておきたい。フィリピン経済は海外で働く出稼ぎ労働者の送金にその10%を頼っている。このような状況に鑑みて、政府は国外にいる出稼ぎ労働者を本国に帰国させるためのフライトを手配するなど、一連の策を講じている。またマニラ首都圏で働く地方出身の労働者に対し、帰郷の為の交通手段を提供する「ハティッド・プロビンシア」と呼ばれるプログラムを実施している。その一方で、このような取り組みが適切な方法で行われなかった場合、帰還者がコロナウィルスの感染源となって感染拡大を引き起こす可能性もあることから、一部で議論となっている。

*4つの都市が世界の過密都市トップ10”に名を連ね、また11の都市がトップ50にランクインしている

 

設問2:自国における医療システムの対応は?

医療システムの切迫した状況は他国同様、フィリピンも例外ではない。しかしながら、コロナ発生当初と比べれば、システムはかなり改善されたといってよい。毎日およそ40,000件規模で感染検査が行われており、陽性率も4月4日の23.8%から、現時点で10.6%まで低下している。現在、検査に対応できる臨床検査機関は国内に107カ所あるが、コロナ発生当初、熱帯医学研究所(RITM)の1カ所のみであった状況を考えれば、劇的な改善であるといえる。

残念ながら、マニラ首都圏のいわゆる“危険ゾーン”とされている地域の病院のベッド占有率は現時点で69.2%である。また全国レベルでは、“警戒ゾーン”と呼ばれる一帯で47.5%といった状況である。このため、スポーツ施設や学校の教室など一部の施設が隔離施設として転用されている。

 

設問3:コロナに関する支部の活動および今後の予定

医療従事者に個人防護用具を寄付

ロックダウンが施行された直後、医療従事者に対し緊急に支援の手を差し伸べる必要性を感じ、フィリピン支部は迅速に個人防護用具(マスク、フェイスシールド、防護服、アクリル製の箱)をマニラ首都圏およびその他の州(カビテ、ラグナ、ビコール、マラウィ)の医療施設に寄付する活動を開始した。この取り組みはAMDAインターナショナルをはじめ、他のパートナー組織の支援を得て実施することができた。

加えて、3月23日から4月17日にかけて、病気や健康面で不安を抱える人々に対し無料のオンライン医療相談サービスを行った。ロックダウンで孤立を感じていた人々に医療相談を提供しただけでなく、不安に駆られた患者が病院に殺到することを防ぐ役割を果たすことができた。実施期間中に受けた相談件数は973件に上り、成功裏に終わったといえる。

 

オンライン相談を行う
フィリピン支部のエリカ医師

また5月30日から6月27日にかけてコロナに関するオンラインセミナーを実施した。現在のコロナに関する状況を理解する上で個人の一助となるよう、「遠隔医療」、「職場への復帰」、「コロナから回復した医師の視点から」、「メンタルヘルス」、「ワクチンについて」等のトピックを取り上げた。セミナーの対象となったのは、一般人から学生、医療従事者までと幅広く、多くの人に門戸を開いた形で行われた。