インド事業担当:アルチャナ ジョシ

インド・ビハール州ブッダガヤにあるシュリプール村はダリットと呼ばれるカースト制度の中で最も身分の低い方が多く住んでいる、貧困率が非常に高い村です。お年寄りや子どもを含む、約67世帯650人が住んでいるこの村では、数日から1週間ほど停電することも珍しくありません。そのため、井戸水を吸い上げるための電動ポンプがあっても使い物にならず、水不足で苦しむことがよくありました。そこで、AMDAは停電しても井戸水を汲むことができる手動ポンプ式井戸を、村の近くにあるヒンドゥー教の小堂付近に建設しました。
株式会社新通故樋口会長の御令室樋口美恵様より、株式会社新通エスピー青山様を通じて「インドの恵まれていない人に水を届けたい」というありがたいお申し出をいただき、AMDAの活動地において、今回で三つ目となる井戸を建設することができました。樋口様、青山様に心より感謝申し上げます。
工事は2025年2月7日に開始し、まず、現地のしきたりにそって、土地のお清めをした後、掘削作業に移りました。近年、地下水の水位が下がってきて水不足が深刻になっているため、可能な限り深くまで掘り進めた結果、地質がよく、石も少なかったため、比較的容易に、110フィート(33.528m)の深いところまで掘ることができました。手押しポンプの設置完了までは、すぐでしたが、盗難防止のためのポンプを囲う簡易小屋作りに1か月ぐらいかかりました。工事中、村の皆さんが見守ってくださったおかげで、ポンプが盗難にあうことはありませんでした。作業中、政府による規制があり、材料の砂を採取できなくなったため、一時的に工事の中断を余儀なくされましたが、現地の方々の協力により、大きな問題が発生することなく工事が完了しました。
シュリプール村で「お年寄りの家」を運営管理しているベーダ氏(元AMDAピースクリニックスタッフ)から「村の生活で一番苦労するのは、停電が続くことです。停電になると電動ポンプ式井戸が使用できず、水不足で大変な思いをしていました。新たにご支援いただいた、手動ポンプ式井戸のおかげで、水を飲むためだけではなく、いろいろな形で水を使用することができ、私自身も、村人たちも、皆とても喜んでいます。心から感謝しています」という声が届きました。



また、複数の村人も「水は生活の中で一番貴重なものです。飲み水としても、もちろん貴重ですがそれだけではなく、いろいろな場面で井戸水を活用しています。ありがとうございますと伝えたいです」と満面の笑みで語り、大変喜ばれていました。今ブッダガヤは猛暑で乾燥が激しい時期です。学生も、学校帰りに井戸の傍の道路を通るため、「学校からの帰宅途中、水分補給できるようになり大変うれしい」と語っていました。
停電の時は、村の大人から子どもまでバケツや桶に水をくんで、頭の上にのせて家まで運びます。村の人たちからは「生活がしやすくなった」と喜ばれ、「私たち村人の責任として大切に活用し続けます」と力強く言われました。
井戸の近くにあるヒンドゥー教のお寺は、村の人たちにとって生活の拠り所です。そのお寺をきれいにするためのお清めの水は、この井戸の水を使用しています。このように村人が公共の場所に集い、また、井戸の水を皆で分け合うことにより連帯感も生まれ、今後地域コミュニティが活性化していくだろうと、地元の人たちの話を聞いて感じました。



