カが媒介する脳炎



 いずれも人畜共通感染症で、地域的であり、ヒトには偶発的に伝染する。経過は2期に分けられ、感染症の症状から、多様な神経症状を呈す。後遺症(運動障害)が生じる可能性がある一方、不顕性型も度々ある。病理学的には、脱髄を伴わないポリオ様の脳炎が認められ、小脳病変が頻繁に見られる。
 フラビウイルスによる脳炎は、地勢学的に次の3群に分けられる。
−アジア群:日本脳炎、Murray渓谷脳炎
−アメリカ群:St.Louis 脳炎、 Rocioウイルスによる脳炎
−ユーラシア群:ダニによる脳炎(RSSEとCEE)、跳躍病に類似したもの

ウイルス ICD-9/10 分布、媒介動物、臨床症状など
日本脳炎
ICD-9 062.0
ICD-10 A83.0
西部ウマ脳炎
ICD-9 062.1
ICD-10 A83.1
  • 多種の野性げっ歯類、鳥類、ウマ科動物が宿主
  • 媒介蚊はイエカCulexで、これがげっ歯類、鳥類、ウマ、時にはヒトを吸血してトガウイルスを伝播
  • 米国西部、カナダ、アルゼンチンで夏期に小流行をみる
  • ヒトに対して(髄膜炎症状を呈さない)脳炎を引き起こし(死亡率10−15%)、精神への後遺症をしばしば認める
  • 米国でワクチン入手可能
東部ウマ脳炎
ICD-9 062.2
ICD-10 A83.2
  • 脊椎動物の宿主は野性の鳥類が多いが、ごく稀にウマや飼育中のキジとウズラも感染
  • 媒介蚊はCuliseta malanuraで、米国東部でよく見られるトガウイルス感染症
  • 普通は無症候性で、顕性型は稀だが、死亡率は65%にのぼり、後遺症が頻繁
  • ワクチンが米国で入手可能
St.Louis脳炎
ICD-9 062.3
ICD-10 A83.3
  • 脊椎動物の宿主として、野性や飼育された鳥類(メンドリ、ガン、ハト)がしばしば
  • イエカ属のCulex quinquefasciatus, Culex tarsalisがフラビウイルスを媒介
  • 米国全土の都市部や農村部で様々な流行が認められている。1964年Houston(Texas)の流行では、数百人が発病
  • 全身期には体温が上昇し、この間頭痛、嘔吐、時折はっきりした髄膜炎症候群、意識障害、局所的な神経症状(痙攣、目眩)を呈す
  • 経過は通常良好で、熱発は第7-10病日に解熱し、神経症状も完全に回復するが、時間がかかる
  • 重篤な症例が高齢者に見られるが、それ以外では死亡率は殆ど零。治療は対処療法
豪州脳炎または
Murray渓谷脳炎

ICD-9 063
ICD-10 A83.4
  • 日本脳炎に近縁のウイルス
LaCrosse脳炎または
California脳炎

ICD-9 062.3
ICD-10 A83.5
  • ブンヤウイルス科のラクロセウイルスが米国(Mississippi 上流の盆地)で最も多い病原体
  • 夏期にリスの間でウイルスが増殖
  • 媒介蚊はAedes triseriatus
  • ヒト症例の多くは小児で、無症状または感冒様の症状を呈す
  • 髄膜脳炎は稀だが、重篤な場合は痙攣を主に起こし、死亡することもある
Rocio脳炎
ICD-9 063
ICD-10 A83.6
  • ブラジル(Sao Paulo) で流行性脳炎の病原体となる
  • 宿主は恐らく鳥類のような脊椎動物
  • 媒介蚊Psorophoraferoxがフラビウイルスを伝播
Snowshoe Hare脳炎・
Jamestown峡谷脳炎

ICD-9 063
ICD-10 A83.8

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