日本脳炎の疫学


 日本脳炎はコガタアカイエカCulex tritaeniorhyncusによって媒介されるフラビウイルスによる脳炎。ヒト以外に鳥類や哺乳動物が保有宿主となるが、特にブタが環境中のウイルス増加に大きな役割を果たすと考えられる。ヒト症例は通常孤発的で、農村部の河川沿いの地域に夏認められることが多い。
コガタアカイエカなど媒介蚊は水田に棲息するため、東アジアの農村開発に伴って、浸淫地域は拡大している。1930年代は日本と朝鮮半島、第二次対戦後はそれに中国の旧満州地方などに限局していたが、現在では東南アジア諸国、インド亜大陸西部、ネパール、中国、旧ソ連にも見られるようになった。1998年にはオーストラリア本土のパプアニューギニア対岸部でも初めて患者が確認された。全世界人口の約6割に当たる30億人が浸淫地域に居住する。毎年、およそ3万5千件の感染と1万人の死亡が報告されている。日本脳炎は小児の神経障害の主要な原因でもあり、同地域の公衆衛生上きわめて重要な問題。
 なおマレー渓谷(オーストラリア)脳炎は、日本脳炎に近隣の疾患である。


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