マラリアは、熱帯ばかりでなく、亜熱帯や温帯にも分布する代表的な寄生虫疾患である。英語やポルトガル語でいう'malaria'とは、「悪性の空気」を意味し、フランス語(スペイン語)の'paludisme(o)'は「湿地の病」がその語源に当たる。かつて日本では、瘴気熱と呼ばれていた。
1880年にフランス人軍医Alphonse Laveranが赤血球内にマラリア原虫を発見し(1907年ノーベル医学生理学賞)、1898年にはこの病気がハマダラカの吸血によって媒介されることを、インド駐在イギリス軍医で、後にノーベル医学生理学賞を受けたRonald Rossが実証した。
その後、1940年に初の合成抗マラリア薬であるクロロキンが開発され、第二次大戦中にはDDTの残留噴霧が確立されて、マラリアは一時撲滅可能と考えられた。
しかし、薬剤耐性マラリアやハマラダカの出現、地球規模の熱帯雨林破壊や難民問題、さらには地球温暖化などが影響し、この病気は依然として熱帯を中心とする世界中の人々に多大な苦難を与え続けている。
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