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疫学


 麻疹ウイルスはモルビリウイルスに属する、パラミキソウイルス科のRNAウイルスで、ヒト患者が唯一の自然宿主である。
伝播は患者からの飛沫感染が主で、上気道粘膜に侵入するが、極稀に結膜からも入る。潜伏期は7-18日(平均10日)で、前駆症状の現れる頃から発疹が消失して4日目くらいの期間、感染者は伝染力を有す。
母体からの受動免疫のため、生後6-9ヵ月迄は感受性を示さない。感染した者は顕性の症状を示すものもあれば、母体からの抗体が完全に消失する前の早期に感染した場合は、不顕性の型をとる。
 
 熱帯都市部での麻疹は恒常的な浸淫状態を示し、流行の再発は乾季に見られる(このウイルスは多湿環境では急速に毒性を失うため)。
都市部の麻疹患者は幼少の者が多く、その平均年齢は雑居であればあるほど、または社会環境が劣悪であればあるほど低下する。
 熱帯農村部では麻疹は流行状態を起こす。外来のウイルスが地域に入り込み、感受性のある者に感染して広がる。これが2-3年毎に突発する。孤立した地域では、流行の間隔がさらに開く。それ故患者の年齢にはばらつきがあるが、平均すれば都市部よりも高くなる。

 熱帯の麻疹死亡率は、特に黒アフリカやラテンアメリカで高く、アフリカの熱帯地方では、麻疹は1-4才児の主要な死亡原因の1つとなっている。
アフリカの都市部での麻疹の症例死亡率は、千症例に対して20−30と考えられる。農村部では死亡の危険性がさらに高く、千症例に対して 100を越えることが多い。
ラテンアメリカでも麻疹は黒アフリカに匹敵するほど恐るべき疾患であり、症例死亡率は地域によってばらつきがあるものの、千症例に対して10−50と依然高い
アジアでは麻疹の重篤性はあまり強調されないが、それでも熱帯地方の一部では依然恐るべき疾患であろう。
 
 熱帯地方で麻疹が重篤となる原因として、世界的に共通の原因が挙げられる。まず年齢が重要な要因で、特に都市部では普通3才未満の小児に麻疹が突発する。この年令は死亡率が最も高くなる階層に一致する。クワシオルコルのような栄養障害は離乳の時期に多く、小児の体力を落とし、ビタミンA欠乏症は感染悪化の重大な要因となる。同時に合併する疾患には寄生虫疾患(マラリア鈎虫症アメーバ症)や細菌性、ウイルス性疾患があり(百日咳、感染性下痢症、エンテロウイルス感染症)、これらも予後に関係する。
病気に対する無知は発展途上に認められる必然の問題であり、疾病に良くない風習が原因となる。西アフリカでは子供の麻疹患者は特別の食事をとり、寝具で覆い被せてしまうため、脱水と高熱を助長してしまう。もしくは夜間に寝具を掛けないと呼吸器感染症を合併しやすい。栄養不良は結局、無知が悪化の主要な原因となっている。
  熱帯地方では、麻疹が栄養不良、急性下痢症と共に1-4才児の主要な死因となっている。この死亡率は富裕国のそれの100-500倍にのぼる。


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