非定型抗酸菌症の治療


 エイズに合併した非定型抗酸菌症では、基本的には抗生剤の多剤併用療法に頼るしかない。しかし、HIV感染のない皮膚や腸管病変に対しては、積極的に外科的切除・デブリードマンも考慮する。
 各非定型抗酸菌の薬剤感受性は以下のようにまとめられるが、熱帯の現場では種の同定までは難しい。同定不能の場合は、やむを得ずRFP+INH+EBの3ヵ月併用を勧める。治療のレジメは、結核の治療を参照。

Mycobacterium 併用療法
M. avium comp.
(MAC, MAI)
  • 殆どの抗生剤に耐性
  • RFP+INH+EBの標準3剤併用の他、初期にSMを追加
  • リンパ節炎の病変は外科切除
  • エイズの二次感染には、リファブチン(アンサマイシン)、シプロフロキサシン、クロファジミン、アミカシンが有効なことがある
  • 新マクロライド系のクラリスロマイシンやアジスロマイシンは、入手出来れば投与を検討
M. fortunitum /
M. chelonae
  • M. chelonaeの方がより耐性のことが多い
  • 一般に、アミカシン、セフォキシチンには感受性を示す
  • エリスロマイシン、ミノマイシン、シプロフロキサシン、リファブチンなども有効なことがある
  • 再燃がしばしばあり、3−4ヵ月の投与が必要
M. haemophilum
  • リファンピン、リファブチン、PAS、シプロフロキサシン、サイクロセリン、カナマイシン、ミノサイクリン、ST合剤など
M. kansasii
  • リファンピンが第一選択剤
  • 難治性のため、RIF+INH+EBの15−18ヵ月併用が標準治療
  • INH、SMに軽度耐性が知られており、EBを必ず処方に加えたい
M. marimum
(=M. balnei)
  • RFP、EBには大抵感受性を示す
  • ミノサイクリンとST合剤も処方に適す
M. scrofulaceum
  • in vitroでは多くの抗生剤に耐性を示す
  • 標準3剤の他に、ストレプトマイシン、サイクロセリン、エリスロマイシン、エチオナミド、サルファ剤が検討される
M. szulgai
  • 大半の症例は、標準3剤で良い
  • 上記以外に、エチオナド、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ST合剤、セフォキシチン、アミカシン
M. ulcerans
  • ダプソン+ストレプトマイシン+エタンブトールが標準処方
  • イソニアジド、ST合剤、リファンピン、ミノサイクリン、クロファジミンも感受性を示すことあり
  • 潰瘍病変には皮膚移植が必要
M. xenopi
  • 殆どの抗結核薬に感受性を示す
  • 呼吸器感染症には薬剤移行が不良
  • 標準3剤の他に、ストレプトマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、シプロフロキサシン
M. asiaticum
  • 標準3剤を使用
  • その他に、ピラジナミド、カプレオマイシン、ストレプトマイシン、PAS
M. malmoense
  • in vitroでエタンブトール、エチオナミド、カナマイシン、サイクロセリン、エリスロマイシンに感受性を示す
  • 上記の3-4剤併用療法を18ヵ月以上行なう
M. shimoidei
  • 大半がシプロフロキサシンに感受性あり
  • リファンピンとイソニアジドには耐性
M. simiae
  • 大半の抗生剤に耐性
  • エチオナミドとサイクロセリンが選択薬剤

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