非定型抗酸菌症の疫学


 非定型抗酸菌は、臨床細菌学的には結核菌のそれと類似する部分が多い。現在までに15種の病原性非定型抗酸菌が知られており、その棲息環境は種によって異なる。結核菌と異なり、ヒト-ヒト間の伝染はない

Mycobacterium コロニー発色 病巣 棲息環境 特徴
M. avium comp.
(MAC, MAI)
なし 全身播種 (水道)水、土壌、
家塵、動物?
  • 培養によるM. intracellulareとの鑑別は困難
  • 肺病変は肺結核に類似
  • 皮膚・筋骨病変はPott's病に類似
  • 人種差はあるが、高齢者に多い
  • 播種型は白血病やHIV感染症に併発しやすい
M. fortunitum /
M. chelonae
なし 皮膚、肺 水、土壌
  • 急速に成長(二次培養では1−3日でコロニー形成)
  • 外傷後、手術後の皮膚・軟部組織潰瘍の原因
  • 肺感染は50台以降の女性に多い
  • 抗生剤、殺菌剤、消毒剤に極めて耐性
M. haemophilum なし 皮膚 不明
  • アンモニア鉄と10%CO2を添加して培養、成長は遅い
  • 免疫不全患者の四肢の慢性丘疹の原因
M. kansasii 光刺激で+ 肺、皮膚 水、土壌
  • 肺病変は軽症の肺結核に類似
  • 慢性閉塞性肺病変(COPD)が基礎疾患として重要
  • 皮膚・軟部組織病変はM. marinumのそれに類似
  • 播種型は白血病はHIV感染症に併発しやすい
M. marimum
(=M. balnei)
光刺激で+ 皮膚 (海)水、魚類
  • プールまたは水槽内で感染、'水槽肉芽'をつくる
  • 皮膚結節を作り、リンパ節転移するのがスポロトリコーシスに類似
  • 至適発育温度が28−32℃のため、体表病変をつくる
M. scrofulaceum 発色要素+ リンパ節 水、土壌、
生乳、牡蠣
  • 小児にリンパ節炎をおこす
  • 下顎、咽頭、鎖骨下リンパ節を侵襲することが多い
  • 稀に、肺、骨、軟部組織、肝、髄膜を冒すことがある
M. szulgai 発色要素+
(25℃)
魚貝類?
  • RNA配列がM. malmoenseのそれと99%同じ
  • 肺病変は肺結核に類似
M. ulcerans なし 皮膚 熱帯植物
  • Buruli潰瘍またはBairnsdale潰瘍の病原菌
  • 豪州、パプアニューギニア、マレーシア、アフリカ、メキシコ、ギアナに見られる
  • 至適発育温度は30−33℃で、6−12週間でコロニー形成
  • 感染した草との切傷で感染
  • 無痛の肉芽性潰瘍で、四肢の伸側に衛星病変をつくることあり
  • 可溶性細菌毒素により深部組織破壊をおこす
M. xenopi 発色要素+ 水、動物
  • ヒキガエル、鳥類が保有動物として重要
  • スカンジナビア、イングランド、オンタリオ(加)からの報告が多い
  • 至適発育温度は42−45℃で、発育は緩徐
  • 肺結核様の病変を形成
  • 基礎疾患にはエイズが多い
M. asiaticum 光刺激で+ 動物?
  • 保有動物としてサルが知られている(豪)
  • 慢性肺疾患を有する者に併発
M. malmoense なし 不明
  • pH6-6.5、0.4%ピルビン酸ナトリウム添加(グリセロール要求性)で緩徐に発育
  • スカンジナビア、ドイツ、ベルギー、スイス、英国から報告
  • 白血病やエイズ患者の二次感染が多い
M. shimoidei なし 不明
  • 日本から報告
  • 肺の空洞病変から分離
M. simiae 光刺激で+/- 動物?
  • 保有動物としてサルが知られている
  • イスラエル、米国南西部からの報告
  • 分離株の2/3はナイアシン陽性



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