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輸血に関する諸問題(problems on blood transfusion)
ヘモグロビン症、G6-PD欠損症:勿論ホモの鎌状赤血球症やクーリー病患者の血液は、使用してはならない。しかし軽症サラセミア、ヘテロのヘモグロビン症(AS, AC, AD, AE)、更にホモでも無症状の場合(CC, DD, EE)等は、輸血用に使用可能である。G6-PD欠損症患者の血液は、受血者が酸化剤を服用した場合、溶血する恐れがある。従って、この血液は血漿用や血漿成分(albumine, PPSB)用に使用された方が良い。
一般に熱帯では、輸血は医学的な物流面、精神心理的に特有の問題を提起する。
先進国では供血者は臨床的に異常がなく、トレポネーマ陰性、B型肝炎の血清学的マーカー(HBs抗原、HBe抗原、HBc抗体)陰性、HIV・HTLV-I・HTLV-IIの抗体陰性、抗マラリア抗体陰性(且つ又は流行地に最近滞在していない)などを確かめながら選別することが出来る。しかし熱帯地方では、供血者の血液を不適当とする項目が沢山あり、全てを追求するのは難しい。
輸血や体液の採取は熱帯地域の農村部では文化的、宗教的にタブーであることも少なくなく、例えば中国系の患者はしばしば骨髄液の採取でも魂を吸い取られるとの理由から拒絶することがある。
輸血の医学的正当性を患者やその家族が承知しても、熱帯では安定した血液供給が期待出来ないために、しばしば第三者からの買血や医療従事者への贈賄の原因となる。
輸血によって伝染する疾患:輸血によって感染する寄生虫疾患は大きく分けて7つある。即ち、マラリア、バベシア症、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、ロア糸状虫症、マンソネラ糸条虫症、リンパ寄生性糸状虫症である。しかし伝染後に症状を呈するのは初めの4つのみである。熱帯ではマラリアは余りにも広範に分布しているため、供血者の血液中に赤内寄生の原虫を探すよりも、受血者に抗マラリア薬(chloroquine, quinine)を一律に投与する。トリパノソーマ症とリーシュマニア症も同様に伝染するが、一般にその患者は簡単に見つかる。ロア糸状虫症でも同様である。
トレポネーマが陽性の者は、その殆どが性病や梅毒症状を示さないトレポネーマ症を経ているため、全員に供血を禁止することは難しい。
輸血で伝染するウイルスは大変多い。肝炎ウイルス(B, C, δ型)ヘルペスウイルス(CMV, EBV)、レトロウイルス(HTLV-I, HTLV-II, HIV)等が挙げられる。B型肝炎ウイルスに因る肝炎は、理論上最大の危険がある。その理由は、表面抗原(AgHBs)陽性の集団が、人口の5-20%いるからである。この場合、輸血は避けるべきであるが、抗原測定が困難な上に、小児期に殆どの人が陽性になるような地域(黒アフリカ、アジア)で、B型肝炎の頻度を下げるには、殆ど効果がないだろう。C型肝炎ウイルスに因る肝炎は、輸血後ウイルス肝炎の90%を占める。受血者の血清検査がなされていない場合、肝のtransaminaseが正常の2倍以上、または抗HBc抗体陽性の場合、その血液は使用すべきでない。しかし残念ながら、これら2つの検査だけでは、伝染は完全に防止出来ない。熱帯でのAIDS(後天性免疫不全症候群)の発生は、輸血による感染の危険を有す不安となっている。ウイルス感染の回復期(遷延したウイルス血症)や、天然痘、黄熱、麻疹などのワクチン接種直後の血液は、輸血に供してはならない。
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