Sorry ,This page is written in JAPANESE. English version is not available

G6-PD欠損症の疫学(G6-PD deficiency, epidimiology, ICD 282.2)


遺伝性の赤血球の酵素欠損は、毒物や薬物による急性溶血、または稀に慢性溶血の原因となる。その多くは例外的にしか見られないが、G6-PD (glucose 6-phosphate dehydrogenase)の欠損はある人種に非常に多く、熱帯医学の中でも大きな関心を占める。
G6-PDは嫌気性解糖またはペントース経路に関与する第一の酵素である。G6-PDは赤血球中から過酸化物を除去するのに重要な役割を担っている。実際glucose 6-phosphateが6-phosphofluconateに酸化され、それに伴いNADPがNADPHに還元されて、さらにそれがグルタチオンの還元を起こす。還元グルタチオン自体も、毒性のある過酸化物の消去に必要不可欠である。赤血球中でG6-PDは2-4個の多量体を形成する。2つの鎖からなる二量体はNADPと結合し、活性型となる。その濃度はNADPに依存するので、NADP酸化剤の影響で増加したりすると、G6-PDの酵素活性は高まる。
G6-PDには100以上の型がある。Gd(+)Bと呼ばれるB型は白人種の型で、標準的な酵素活性をもつ。他にA型(Gd(+)A)は黒人に多く、正常な活性を有す。Gd(++)はより稀な型で、B型よりも活性が高い。多くのGd(-)と呼ばれる型は活性が不十分である。それは基質親和性が低いことや、赤血球寿命に伴って酵素が不安定になるからである。欠損があっても通常の状態では無症候の症例が多いが、酸化剤系薬剤の投与によって溶血発作が引き起こされることがある。時には欠損が強く、慢性溶血を認める。最近の検索では溶血は赤血球中に過酸化物が溜まり、ヘモグロビンの酸化(Heinz小体)や赤血球膜脂質の酸化を起こすことが原因とされている。
G6-PD欠損の遺伝形式は性染色体による。X染色体上にその遺伝子はあり、近傍には色盲の原因遺伝子、より離れた部位には血友病の遺伝子座がある。この遺伝子を保有している男性はヘミ接合体(X'Y)であるので、常に臨床症状を呈す。女性の場合はヘテロ(X'X)となり、症状発現はないか、僅かである。しかしながら稀ではあるがホモ(X'X')では重症の酵素欠損があり、G6-PD欠損の二型の重複ヘテロの女性も同様である。
G6-PD欠損症の地理的分布は広範であり、1億人以上の患者がいる。黒人種で広く発生し、基本的にGd(-)A型を示す。米国の黒人では2-12%、アフリカの黒人では10-30%にこの遺伝子異常がある。同様に地中海沿岸や中東の国々でも発生している。ここでは様々な型があるが、Gd(-)B地中海型という1つの型に相当する。患者が発生する主な地域はギリシャ、イタリア南部、シシリー島、サルジニア島、ロードス島、クルジスタン、サウジアラビアの一部地域で、ユダヤ人を祖先にもつ集団にも見られる。極東では中国や東南アジアの一部の国々で見られ、これをGd(-) 広東型と称する。一部の型では丁度ヘモグロビンS症の様に、P.falciparumによる熱帯熱マラリアに対して一定の予防効果がある。

熱帯医学データベースに戻る

AMDAホームページに戻る


      このページは、アムダ企画のご協力により作成されました。

            お問い合わせはmember@amda.or.jpまでお願いいたします。