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糖尿病の疫学(epidemiology of the diabetes mellitus)
疫学(eidemiology)
糖尿病は世界中に見られる。熱帯諸国でも本疾患を免れない。
今日熱帯諸国では糖尿病の罹患率と地域別危険因子の同定の研究が具体化している。
罹患率(prevalence)
方法論上沢山のバイアスがかかるため、熱帯地方の糖尿病の罹患率の正確な調査は難しいと云われる。1980年以前の調査では、利用価値のない基準が設定されたため、その結果は殆ど研究に用いられていない。病院や医療サービスの中で数多くの調査法が打ち出されたが、罹患率の計算には全く利用されていない。都市部で実施された調査が、国全体の疾病頻度とされることもある。農村部の人々は医療機関を受診するのが難しく、不十分な調査になる。住民の移動が大きければ大きい程、世界保健機関が求める空腹時血糖値は、検診によって調べることが難しくなる。人口動態と住民の移動(国内外の移住)が正確に把握されていることも稀であり、この調査はますます困難と解る。季節的な食餌内容の変化もあり、通年調査が出来ない以上、得られたデータが解析不能となることもある。
毛細血1滴をglucose 試薬テープにとり、その場で血糖計で測定する方法は、熱帯地方での疫学調査で信頼性が証明され、大きな進歩をもたらした。
地球規模で大陸別に糖尿病の罹患率を示すことは不可能である。アフリカでの罹患率は西アフリカの1%からマグレブの3%まで、差があると考えられる。これらの数字は欧州や北米の2-3%と比較して低めである。しかし一国の中でも、部族によって相当なばらつきがある。
インスリン依存性糖尿病については、アフリカの罹患率は0.05-0.15%の間と云われる。しかしこの糖尿病は、保健分野の社会基盤、insulineの定期的や使用、経過中の合併症に予後を左右されるので、その数字を一人歩きさせることは非常に危険である。恐らく熱帯では、糖尿病I型とII型の中間型も存在するであろう。
危険因子(risk factors)
世界共通の病因というのは稀で、様々である。内分泌性疾患(先端巨大症、 Cushing症候群、褐色細胞腫、膵腫瘍、膵の手術、アルコール性、高トリグリセリド性、或いは特発性の急性または慢性膵炎)、医原性糖尿病(pentamidine、ステロイド治療)、ヘモクロマトーシス性糖尿病(旧満州、アルコール性飲料の保存に鉄剤を用いるアフリカのバンツー族や他の住民)、それに極稀にビルハルツ住血吸虫症や膵寄生の蛔虫症でも起こる。
栄養不良に関係した糖尿病は、熱帯諸国全域で知られている。小児期の栄養不良と糖尿病は、統計学上非常に相関度の高い危険因子となっている。この関連については幾つかの仮説がある。基本的にはキャッサバやその他の青酸化合物を産生するglucosidesを摂取することが問題と考えられる。栄養不良期の、特に硫黄を含んだアミノ酸が欠乏している時期に、これらを摂食すると、青酸の解毒が正常に機能せず、病的に作用する。このような根菜類の摂取と糖尿病との相関は、統計学上確実である。アフリカでは、キャッサバが殆ど栽培されていないサハラ地域では、この糖尿病原性膵炎は稀である。一方キャッサバがしばしば主食となっているアフリカ中央部では本疾患は頻発している。しかしこの根菜が実験モデルとして確立してはいない。これらの中に青酸を産生するglucosidesが見つかっておらず、病因を適切に説明出来ないため、未だ危険因子のままである。この《熱帯性糖尿病原性膵炎》は典型的にはインスリン依存性糖尿病を引き起こし、通常非ケトン性である。carnitine(vitamine BT)欠乏と相対的なglucagon欠乏をもたらす。
民族的な因子:糖尿病の相対的な危険度は、民族によって異なる。しかしアメリカインディアンのPima族の例を除けば、民族間の差異は規模の大きさからみて重大でないことは疑いない。このような調査研究は、極めて大きな集団に対し疫学調査を実施して判るものである。マリではVolta やSonraiに居住するマンデ族のフラニ語を話す人種(Peuls) に、相対危険度が高いが、民族以外の危険因子はいずれも他の部族と同じである。
世界共通の危険因子:調査の時点で、熱帯の全住民に認められた因子として、(国ごと、民族ごとに公式に証明されたものはないが)糖尿病性遺伝子、体重過多(肥満はアフリカでは稀だが、一部の部族や、農村、或いは成長の著しい都市部に頻度が高い)が挙げられる。糖尿病の脅威は実際には都市部に多い。糖尿病U型の頻度に対する社会経済的変容の関連は、議論の余地がない程深く関わっている。平均余命の急速な伸び、カロリー摂取量の増大(糖質と脂質)、座り仕事の増加が生じ、医療と検診の普及に平行して、本疾患の増加を観ている。
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