Sorry ,This page is written in JAPANESE. English version is not available
蛋白・カロリー栄養不良の治療
治療は有効、簡便、経済的でなければならない。カロリーと蛋白が豊富な食事を摂ることが勿論基本であるが、同時にビタミン欠乏や水電解質異常を補正すること、合併感染症と寄生虫症を治療すること、母親への保健教育も進められなばならない。重症の蛋白カロリー栄養不良症には最低3週間の入院が必要である。
初期治療
初期治療には大体1週間かかる。
高蛋白・高カロリー食:平均的な必要摂取量は蛋白4g/kg/日、カロリー80-150kcal/kg/日である。下痢がない場合は栄養補給は単純で、脱脂粉乳をしょ糖で甘味したミルクが安価でよい(多くの国にUNICEFF からの無料供給がある)。これは一般に消化管の機能が低下している時でもよく吸収される。カロリーの相対的欠乏のある殆どの例で、これは有効である。全粉乳を水溶し甘味したものも同様に良いが、より高価で、脱脂粉乳より保存が効かないが、効果が早く出る(表4−7)。脱脂粉乳に蛋白質を水溶したもの(高蛋白剤:caseine, lactoalbumine, lactoglobulineが92%含まれる粉剤、Alburone*)や植物性脂肪(地域によってピーナッツ、椰子油、綿油)を混ぜて与える。マラスムの場合は、高カロリーを急激に与えると、浮腫と塩の貯留を伴った低albumine血症を起こすことがあるので、要注意である。80ml/kg/日のミルクに40ml/kg/日の水を添加したものを48時間与え、その後消化管に問題が無ければ、子供の食欲を見ながら 150ml/kg/日にミルクを増やす。その時点での体重当たりで計算された量は、本来児がもつべき体重当たりに修正していく。クワシオルコールの場合、食欲不振のために殆ど常に、鼻−胃栄養管を使う必要がある。初めの48時間はカロリー40kcal/kg/日と蛋白2-3g/kg/日(甘味した脱脂粉乳80ml/kg/日に相当)を与える。その後、カロリー 100-200kcal/kg/日、蛋白4g/kg/日、水分 100ml/kg/日に増量する。重症のクワシオルコールの場合、胃管を留置し、自然欠乏は不規則に変化するので、それをよく見極めながら、ポンプを用いた点滴にするのが効果的で、患者もよく耐えられる。またこの場合、蛋白質を非経口的に静注するのも有効である。静注可能な蛋白製剤には注射用Proteolysat, Aminosol Vitrum Glucidique, Vamine, Totamine がある。
補完的治療:ビタミンやミネラルの治療経費は大変かかり、第1週目に正常化する。Kはミルク1LにKCl 1gを混ぜ、Mgは 0.5g/日を経口または50% MgSO4液 0.5-1mlを筋注して与える。他にvitamine A,B,C,Dと、低色素性貧血がある場合、鉄の投与が適応となる。重症例では殆どの場合に不顕性感染があるので、手順上抗生剤を投与する。最も多く処方されるのはpenicilline である。マラリアの浸淫地帯では抗マラリア剤(chloroquine) 投与も不可欠となる。回虫症、鈎虫症、腸管アメーバ症といった腸管寄生虫症で合併頻度が高いものは、検索して治療する。痙攣はその原因によって治療法が異なる。低血糖の場合は50%の高張glucose 液を静注するか胃管から注入する。悪性マラリアの発作ではquinine を与える。下痢が生じると、治療は大変複雑になる。時には中耳炎、尿路感染、マラリアといった腸管外感染が基礎になることがあり、これはよく検索して、緊急に治療しなければならない。小腸粘膜の異常と関係していることもある。これらが軽度ならば、下痢の程度はひどくなく、ミルクによる治療で3−4日中に軽快するであろう。しかし下痢が顕性であると、クワシオルコールの一部の例のように、酸性の糖分の多い下痢便(便のclinitest で判る)を伴い、 lactaseの重篤な欠損に至るので、ミルクなしの食餌療法を10−15日間は続けなければならなくなる。この場合、市販の製品は有効だが高価である。現地の産物を利用した食品(蛋白粉末、穀物の粥、植物性油、glcose、電解質)をうまく利用する方法もある。蛋白4g/kg/日、脂質4g/kg/日、糖質 12g/kg/日を基本とする。脱水の場合、クワシオルコールの患児への水分補給は慎重を期さねばならない。 150ml/kg/日を越える量を与えることは稀である。高分子液の点滴(全血、血漿、albumine)は浸透圧を改善するのに有効で、急性期の治療に大いに役立つ(表4−8)。
補強療法
1週間経過すると、殆どの患児は軽快し、体重増加が始まる。初期のミルク療法に加えて、固形物を加える。それには現地にある蛋白、カロリー、ミタミン、ミネラルが豊富なものを使うのがよい(表4−9)。従って母親への栄養に関する教育が基本的に重要である。病院内での展示やグループ討議、言語に合わせた教育方法、調理の習慣や土地の産物利用を尊重する。治癒を強化し、保健教育を推進すれば、(未だに大変少ないが)栄養状態改善のための施設にかかる経費を削減出来る。患児の体重と発達は1−3ヵ月で正常化するが、退院後も定期的にその栄養法が適切か確かめ、再発を予防しなければならない。
熱帯医学データベースに戻る
AMDAホームページに戻る
このページは、アムダ企画のご協力により作成されました。