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かいせん(scabies, sarcopte de la gale)
かいせんの病原体はヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)で、 sarcoptesはギリシャ語で《肉をえぐる》、 scabiesはラテン語で《掻痒》を意味する。これはヒトを固有宿主とするダニで、人体から離れた後の余命は1-2日程度と非常に短い。人間同士伝染は、直接的なこと(性行為)が最も多いが、不衛生を好むため、汚染された下着や寝具を介しての間接的な伝染もある。
数日の潜伏期の後、著しい掻痒が特に夜間に生じて、これが局所から全身に広がるが、頭部、頚部、背部には起こらない。検査では注意深くかいせんトンネルを見付ける。これは手指の間、手首、腋窩、腰部、足の表皮内に空洞を作るものである。その長さは1cm以下と短く、細い線型で、角皮内に見られる。さらにトンネルの端にインクを1滴垂らすと、毛細管現象でインクがしみ込んで、この空洞が証明される。指間のvesicules perlees(真珠様水泡)も鑑別に挙げられるが、本症には非特異的である。
かいせん性下かんはヒトに特徴的なもう1つの所見で、外陰部に丘疹と掻痒性の擦過傷を認める。二次性の痒疹がしばしば初期症状となり、擦過した線や、大小の線状の表皮剥離に、膿か疹とか皮を見る。いずれの症例でも局所性であることが特徴的である。
かいせんは世界中どこの人にも普通に見られるため、診断は難しい。熱帯地方では小児の合併症として、膿か疹化と連鎖球菌感染による二次性または単独の糸球体腎炎が知られている。
ノルウェーかいせんは消耗状態にある者以外に発症することはない。事実この病名はノルウェーのライ患者に最初に記述した、BoeckとDanielsen によって命名された。か皮を伴った皮疹は掻痒が殆ど、或いは全くないが、非常に感染力が強い。診断はか皮中にヒゼンダニを見付けることである。
かいせんの治療にはbenzyle benzoateの10%液(Ascabiol*)、合成pyrethrinoide 系製剤、lindane が用いられる。丹念に入浴した後、これらの製剤の1つを塗布し、成人や年長児では24時間、それ以下の小児ではこれより短い時間放置する。この治療と同時に、下着や寝具をDDTなどで消毒することが肝要である。日光消毒は効果はあるものの、ダニを殺滅するには不完全である。
また性行為感染症がないか検索し、膿か疹の場合は抗生剤を処方する。
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