HTLV-Iの感染に関する疫学調査の要点は次の通り。
(1)ATL患者は、新生児期にHTLV-Iに感染した場合も含め、90%以上が40歳以降に発病
(2)ATLの年間発病率は0.1〜0.2%と低く、70歳まで累積発病率も2〜5%程度
(3)HTLV-Iは主に垂直感染により伝播するので、感染者の母親はHTLV-Iキャリアであることが多い。一方、夫から感染した場合の発病危険度は極めて低い
(4)HTLV-Iの母児感染は10〜30%と推定される
(5)輸血による感染は、日本では1986年に献血スクリーニングが実施されて以来、激減した
HTLV-Iの感染形式は、輸血、母児間垂直感染と異性間感染が重要。特に垂直感染は乳児期から感染しているため、ATLを発病する危険性が他の感染経路に比べ高いと思われる。母児間垂直感染は主に授乳により起こると考えられ、母乳保育が推奨される発展途上国でも、HTLV-Iキャリアの母親へは授乳させない指導が必要なことがある。異性間感染は性行為によるが、男性から女性への一方的な感染と考えられている。これは40歳以上の抗HTLV-I抗体陽性率に男女差がある(女>男)ことからも推測できる。
HTLV-Iの異性間感染後にATLを発症したという報告はまだない。しかし、それが次世代への垂直感染の予防や、エイズを含めた性行為感染症予防のため、コンドーム使用を推奨すべき。
輸血による感染は高率に起こるので、HTLV-Iの浸淫地域では、献血スクリーニングによる血液感染経路の遮断が重要である。
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