患者の隔離、媒介蚊の防除、ハイリスク群の住民と旅行者を予防接種することが重要。これらが連動して実施され続けなければ、野口英世が活躍した時代の状況に逆戻りする危険すらある。
1.患者の隔離
患者または疑診例の者を、個室に収容する必要はない。ただし、吸血される状況に置かれないよう、蚊帳を使ってことは隔離することは重要。但し、常に現実的に遵守出来るとは云えない。患者の汚物処理と治療看護スッタフの防御まで行なわねば、完全とは云えない。
2.媒介蚊対策
幼虫の棲息地を減らしたり、残留性殺虫剤を用いて、成虫と幼虫の数を減らすことが考えられる。特に
Aedes aegyptiの都市生息種は、環境整備と衛生教育によって駆除することが計画できる。しかし森林生息種に対しては、事実上手の施しようがない。
3.ハイリスク群への予防接種
いつでもこれが最も有効な手段。実際に利用されている黄熱予防接種は、Rockefeller
17Dという弱毒ワクチンである。ウイルスは鶏卵胚で培養され、超遠心された、凍結乾燥ワクチン。ワクチン供給の問題点として、高価なこと、5℃に低温維持のため、冷蔵庫保存が必要なことが挙げられる。保存温度は-40(-22F)−+5℃(+41F)だが、出来れば氷点下で保存したい。水溶後は熱帯の気候中では30分以内に使用しなければならないが、室温が20℃未満ならば、1時間は良好である。投与法は皮下注射(0.5ml)
。17D株は1才から利用出来るが、感染の危険性が高い地域では、6ヵ月から使用される。免疫不全状態や卵白アレルギーのある者にも、感染の危険が高ければ、必ずしも禁忌でない。免疫力は少なくとも10年間有効だが、恐らくそれ以上であろう。抗原安定剤のゼラチンや卵白アルブミンが微量含まれているため、時折アレルギーが引き起こされる(早期のアナフィラキシー反応、投与後9日目に遅延型過敏反応、通常のアレルギー性症状)。接種例の10%は投与後4-6日目に熱発する。
旅行者では、特に妊婦と9ヵ月未満の乳児に積極的に接種を考慮する。クロロキンの予防内服と交叉反応は生じない。
黄熱ウイルスの浸淫地帯では、その森林サイクルに手が付けられないなめ、黄熱を撲滅することは事実上不可能である。浸淫地帯で唯一行なわれていることは、集団予防接種である。優先順位の高い住民に予防接種が出来るかが成功への鍵で、周到な疫学調査が必要である。このやり方でブルキナファソでは、1983年以来流行を急速に抑制することが出来た。
4.国際防疫管理
WHO(世界保健機関)は、黄熱ウイルスの国から国への拡散を防ぐため、現地での保健管理を確立しようとしている。これには黄熱の浸淫地帯全域で行なわれることが不可欠(外部から疾病が持ち込まれると、予防接種運動を脆弱化する)なため、黄熱の被害がない国々でも、黄熱ウイルスの媒介蚊が豊富な地域では、伝染が生じ易いため、より厳重に監視されねばならない。WHOによれば、黄熱の伝播可能な地域は、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカ(アンチル諸島を含む)全域に広がっている。インド半島、東南アジア、オセアニアは理論的には起こり得る。感染が見られる地域や浸淫地帯から感染が起こり得る地域へ旅行する者は、浸淫地域到着時の10日以上10年以内に、黄熱予防接種の国際証明書(イエローカード)を、到着時に提示しなければならない。この条件に満たない者は、到着時に予防接種を受け、5日余り媒介蚊のいない所に隔離ねばならないことになっている。
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