腎症候群性出血熱の疫学


 病原体はブンヤウイルス科のHantaウイルス。これには、Hantaan(アジア)、Dobrava(またはBelgrede、新ユーゴスラビア)、Puumala(ウラル山脈西側の欧州全域)、それにSeoul(ほぼ全世界)など多数のウイルス抗原が知られている。Hantaanとは韓国を流れる漢江に由来する。本疾患は、主にアジア諸国とバルカン地域に見られる。
欧州で流行性の腎症が起こり、症例死亡率が1%未満の軽症型の場合、プーマラウイルスによることが多い。
 歴史的には、第二次大戦前の旧満州(アムール河付近)、朝鮮動乱時の朝鮮半島での流行が有名で、近年でも韓国では年間千人、中国では4-10万人の患者発生が認められると云う。流行には季節的消長があることに注意。アジアでは晩秋から冬にかけて見られる一方、バルカン地域では春から初夏に多い。

 ハンタウイルスの保有動物はげっ歯類で、ウイルスごとに次のように分類される。ヒトが宿主になるのは偶発的でしかない。農村型での保有動物は野性のハツカネズミかハタネズミで、ヒトへの感染の季節的なピークは、人間の活動性(植え付け、刈取り)とげっ歯類のそれ(交尾)の時期に一致する。都市型の保有動物はネズミで、港や鉄道駅での流行が記録されている。実験室内での感染が、げっ歯類を実験に扱う者の症例として報告されている。

Apodemus spp. Clethrionomus spp.
Rattus
  • Hantaan
  • Dobrava
  • Puumala
  • Seoul

 感染形式は、感染ネズミの排泄物(唾液、尿、糞)に汚染された食物、水、食器からの飛沫感染が最も考えられる。潜伏期は2-4週間で、ヒト-ヒトの伝染はない


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