デング熱の症候


古典的デング熱:潜伏期は平均5-7日で、頭痛、関節痛、顔面の発赤咽頭炎といった前駆症状を見る時がある。発病は急激で、悪寒、40℃の熱発、骨関節痛、背部痛(この痛みで患者が体を屈る。dengueroとはスペイン語で、「気取って歩く人(dengoso)」意味)、頭痛、いろいろな消化管障害、時には眼窩部痛、羞明を訴える。理学所見ではしばしば脈拍解離、肝腫大、リンパ節腫大を認めるが、脾腫は決して認められない。経過は特徴的で、第3-4病日に熱発と疼痛が突然治まるが、第5-6病日には両方とも再燃し、しばしば向心性の斑状紅斑を合併する。数日後には軽快し始めるが、回復には時間がかかり、衰弱や疼痛は数週間持続するが、経過は良好。血算には目立った特色はなく、病初期に白血球が増多し、二次性にリンパ球が優位となった好中球減少と血小板減少を認める。トランスアミナーゼは中程度の上昇を示す。軽症型は発熱だけで、無症候型も頻繁。
 
デング出血熱:発病は普通のデング熱と同じだが、改善傾向で一段落したかに見えた患者が第3-5病日に急激に悪化する。全身状態が悪くなり、顔面蒼白、口唇チアノーゼと共に、点状または斑除の出血性紫斑が出現(ターニケット試験で著明)し、時おり粘膜出血や消化管出血を認めるが、後者は予後不良で、ショックからの解脱に時間がかかる。管理不能の心不全が生じる恐れもある。肝腫大、心筋障害、肺胸膜の所見、脳炎症状(意識混濁、興奮、痙攣、昏睡)も見られることがある。血算では出血傾向にも拘らず、赤血球数はほぼ正常である。これは血液濃縮によるためである。白血球数は増多し、時おり好塩基球増多を認めることがある。血小板数は5万/ μl 前後で、ターニケット試験陽性(マンシェットで上腕を圧迫すると紫斑をみる)、出血時間延長ヘマトクリット上昇が常に認められる。低蛋白血症、トロンビン時間延長、血清トランサミナーゼ上昇はさほど重要でない。症例死亡率は流行により異なるが、2-15%程度で、治療が行き届いた症例では死亡率はもっと低い。大半の研究者が、デング出血熱者は、以前に異なる血清型のデングウイルスに感染していることを報告ている。これは、初感染では感作されるたけで免疫反応は起こらず、2回目に免疫機構が働いて出血現象が生じるという論理に結びつく。デング出血熱の経過中の抗体価の変移は、この仮説を肯定するところが興味深い。


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