化学療法はいずれも無効である。発熱と麻痺が見られる間は筋注を控え、患肢や関節を不用意に動かさぬよう、厳重な安静が必要である。鎮痛剤を処方する際には、サルチル酸製剤は体温の変移を解らなくするとの考えから、使用しない。呼吸補助は限局的に、呼吸器障害のある症例に施行する。
患者の隔離は伝染遮断に限りがある。一方、ウイルスに汚染された器物の衛生管理は、軽症例や無症候例も対象となる。
予防接種が唯一の合理的な手段である。このワクチンには2種類あり、不活化ワクチン(IPV)は皮下接種し、弱毒生ワクチン(OPV)は経口投与する。これら2つのワクチンは、3つの血清型に均等な効果を示す。かつてはコールドチェーン(低温輸送路)の管理が出来なかったため、発展途上国では注射用ワクチンがよく利用されたが、現在WHOは安価で投与が簡単な経口ワクチンを推奨している。2種のワクチンはいずれも、1回の接種で9割以上の者が免疫を獲得する。生後3ヶ月目以降、1ヵ月間をあけて3回は投与したい。
注射用ワクチンは免疫低下状態にある者では特に適応がある(経口ワクチンは生ワクチンのため、医原性のポリオを引き起こす恐れがあるため)。予防注射をしても、ウイルス侵入直後や、経口接種後の乳児の便にはウイルスが混入しているので、おむつを取り替える者は免疫がないと二次感染の危険がある。OPVはこの現象を利用して、迅速に集団免疫を付けられる利点がある。
両方のワクチンを選択できる地域では、初回はIPVを接種し医原性ポリオを防ぎ、2回目以降は液性免疫を高め、小腸上皮に作用して予防効果をより発揮するOPVにすることも可能。ポリオワクチンの詳細については、
CDCによる1997年版勧告を参照。
ワクチンの選択と投与時期は、現地の予防接種スケジュールと社会水準による。初回接種を注射、追加接種を経口というように、回数を減らして両者を利用することも考えられる。予防接種は確実に全員へ実施されるよう、National Immunization Day等に接種キャンペーンを行う。
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