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症候
腸チフスの潜伏期は平均10-15日だが、発病前に抗生剤が投与されていると21日ほどに遅れることがある。一方、摂取したS.Typhiの量が特に多いと、1週間で発病することもある。
普通腸チフスの発病は、全身性の熱感や疼痛が少しづつ進んで起こる。特異的症状はない。症状が増強してはっきりしてくると、診断が付き易くなる。衰弱は重篤で、頭部全体に強い頭痛を伴うが、筋肉痛は滅多にない。消化管障害は極めて稀で、下痢、便秘、食思不振、悪心、嘔吐、腹痛が軽度に起こる。鼻出血は希だが、本症を想起させる症状である。呼吸症状(乾性咳嗽)、有痛性の嚥下困難、神経精神症状(目眩、精神錯乱)といった非典型的な症状も多く出ることがある。典型例では発熱の変動は夜間に高め(晩は+1℃、朝は-0.5℃)で、40℃に達する。1/3の症例で悪寒を認める。急速に熱発するものなど、実際には全ての熱型が見られる。
理学所見が全て正常なことは稀である。腹部はふつう鼓腸があり、硬直や緊張はないが圧痛がありグル音を聴取する。脾腫は患者の40%、肝脾腫は25%に認める。頚部リンパ節炎をみることがある。レンズマメ状のばら疹を認めるのは50%以下である。紅斑は散在性で、数は少なく(10個くらい)、非常に小さな(直径2-4mm大)円形で、掻痒はない。この病変は一過性(数時間)で、有熱期に背部、腹部、胸部に容易に見つけられる。これが認められれば、診断に非常に価値がある。Duguetアンギナは扁桃腺前部の潰瘍病変の一種で、稀である。逆に、気管支性ラ音がよく聴取され、しばしば脈拍は解離しており、これが本症に極めて特徴的な解離とされる。患者 100人中10人に意識低下が認められる。ツゥーフォス(tuphos)は、せん妄期の間に見られる意識混濁状態で、場合によっては昏睡まで進むことがある。
自然経過は種々の合併症が第2週から第3週にかけて多く見られ、そうでなければ3-4週で軽快する。倦怠とるい痩だけは残る。従来行なわれる治療をすれば、ふつう急速に無熱となるが、再発や慢性保菌者となる可能性もある。抗生剤治療によって、合併症は15%から1%以下になり、有病期間も短縮される。(梅毒治療のJarish−Herxheimer反応のような)中毒性の合併症は、不用意な治療の結果である。中毒性心筋炎、エンドトキシンショック、腸チフス性脳炎、劇症肝炎、脊髄性麻痺があれば予後不良である。
消化管障害には小腸の出血と穿孔があり、治療中の患者の1%以下に突然起こる。肝膿瘍、膵膿瘍、化膿性胆嚢炎、肺の障害、耳下腺炎、髄膜炎、心内膜炎、骨髄炎、甲状腺炎が合併する頻度はさらに少ない。
再発は頻繁で、抗生剤の出現前は8-12%に見られた。 chloramphenicolやampicilline といった従来からの抗生剤でも、再発の割合を下げられない。ふつう再発は、治療を中止または症状が自然に消失してから8-30日後に、再び発熱する形で再発する。最初の発病よりも症状は急速に減弱し、経過は速やかに好転する。再発例ではS.Typhiの潜伏部位の検索が必要だが、最も多いのは胆嚢である。
腸チフスから慢性保菌者になる割合は1-3%である。慢性保菌者は糞尿からS.Typhiを数か月から1年排泄する者をいう。このような保菌者の1/3は、腸チフスの最初の既往がはっきりしない。特に高齢者と女性、胆道系尿路系に以前疾患(浸淫地域のビルハルツ住血吸虫症)を患った者ではその割合が高い。

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