野兎病の疫学


 野兎病は、好気性、グラム陰性、多形性小桿菌である野兎病菌 Francisella tularensis (旧称Pasteurella tularensis)が病原体。
この疾患は南北両半球の緯度30-70度帯に分布し、スカンジナビア半島、ユーラシア大陸、日本、北米大陸を中心に広く見られる。F.tularemisis には、以下のように3つのバイオグループが知られている。

Biogroup var tularensis var palearctica var novicida
Jellison分類 Type A* Type B N/A**
毒性
ラット LD50 <10個 1,000万個 N/A
分布 主に北米 世界中 世界中?

*グリセロール発酵(+)、シトルリンをオルニチンに変換
**かつてF.novicida と分類されたため

 野兎病の感染形式は極めて多様なため、集団発生事例では徹底した調査が必要である。主に農牧業者は(スウェーデンのAedes cinereus)、サシバエ(deer fly= Chrysops discalis)やマダニ(wood tick= Dermacentor andersoni, dog tick= D.variabilis)による夏季の媒介感染と、農作業中におこる病原菌飛沫の吸引感染。狩猟者やペットを扱う者は、感染動物の血液暴露咬傷からの感染が多い。その他、感染動物の肉を調理不充分で食したり、汚染水をそのまま飲んでも感染することが知られている。
 沢山の保有動物が知られているが、ウサギ、ビーバー、マスクラットが重要。また、これらの感染動物を肉食したイヌ、ネコ、リス、コヨーテ、スカンクなども咬傷源として無視出来ない。
吸血して感染したサシバエは最低2週間感染力があり、感染マダニはその後一生感染を続ける。汚染肉(摂氏-15度以下)は冷凍しても感染源となる。
 ヒトが感染した場合の潜伏期間は1-21日(通常3-5日)とされる。


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