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疫学
炭疽菌、即ちBacillus anthracisは、莢膜を有し、運動性のない、大きさ2-10μm の真四角の細菌である。Gram陽性菌で、小鎖状に連なって分離される。通常の培地で発育し、蛋白分解能をもち、糖で発酵して、18-42℃の好気培養では10時間で胞子生殖する。in vivoでは発芽しない。
毒性は胞子形成により生じるが、幾つかの要素が関係する。42.5℃以下で培養しないと発芽しない。動物(ハツカネズミ)に接種されると、毒性を増強する。モルモットは最良の接種動物とされる。ウサギとハツカネズミも同じくらいの感受性をもつ。皮膚または粘膜から侵入しさえすれば、どんな接種法でも有効である。
皮下接種の数時間後、広範な浮腫を見る。30-48時間後に敗血症によって、接種動物は死ぬ。解剖すると、ゼラチン状の浮腫、巨脾、黒ずんだ血液、全臓器の鬱血と大量の菌を認める。
病原菌の免疫学的研究では、抗原の複合体と毒素が証明され、炭疽に罹った動物の多様な死因(治療が遅れた場合、その動物は死ぬが除菌される)が調べられている。

動物への発病:本質的にはヒツジの病気だが、ごく稀にヤギやウシも罹る。動物が発病すると、喉頭の出血性浮腫、高熱、痙攣、特に尿路系へのびまん性出血で短時間で死ぬ。感染した動物の血液が土壌やその毛皮を汚染する。空気に触れると、病原菌は発芽する。感染動物由来の胞子は野原に放出されて、再び地表に戻される。数か月から数年して、この野原を通った草食動物が胞子を摂取し、同時に小枝、茎、棘で喉頭を傷つけると、胞子が発芽して侵入する。厳格な畜産防疫のおかげで、炭疽は欧州や北米では消失したが、発展途上国では依然として非常に多い。

人間への発病:人間への感染は、常に感染した草食動物かその骨、毛皮、皮革との接触で起こる。侵入部位は一般に皮膚で、微細な擦過部から入ると、皮膚炭疽になる。呼吸器と消化器からの侵入はずっと稀だが、内臓炭疽という恐るべき疾病の原因となる。欧州では人間への発病は極めて少なく、羊毛、皮、皮革、骨粉を扱う業者に認められる(Dunkerque, 1967年)。獣疫の管理が不十分な国で多く、熱帯地域ではアジア(イラン)、黒アフリカ(セネガル、モーリタニア、マリ、ニジェール、ベニン、トーゴ、チャド)、南米とアンチル諸島に特による見られる。このような地域では、感染した動物に直接触る家畜業者だけでなく、屠殺解体作業員、獣医、鞣革工らがよく罹患する。

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