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 疫学


  メジナ虫(ギニア虫)の成虫は皮膚に寄生する。雌が唯一臨床症状を呈し、その大きさは35−100 cmである。虫体は白く、円筒形で、多数の幼虫を内蔵した二重の卵巣を有す。中間宿主は淡水棲の大きさ0.5mm-1mm のケンミジンコ(cyclops)である。ヒトは唯一の寄生虫保有者である。感染したケンミジンコを含んだ水を飲むと感染する。この甲殻類が消化されると、幼虫は成虫になる。本症では寄生数が20を越えることは希である。雌虫は人体の最下部を好みむことがよく知られており、9−12ヵ月で成熟して表皮に至り、体表に穴を開けて、水に触れたときに幼虫を放出する(図1)。この幼虫はケンミジンコに取り込まれて、4−6週間後に感染可能となる(図2)。
図1 図2

  感染が生じやすい条件は、水溜まりや雨水を貯めた覆いのない井戸からの水を飲用することである(図3)。さらにメジナ虫症は熱帯・亜熱帯地域に限局して見られる。幼虫の最善発育温度は25−30度で、19度以下では成長しない。
図3

  本疾病の罹患率には顕著な季節的変動があり、これは伝播形式及び雌虫の成長と関係している。
  主要な浸淫地帯は東端はガンジス川、西端は西アフリカまで広大な地域にわたる。この地域内にはインド半島、ペルシャ湾岸諸国、紅海沿岸の中近東、及びアフリカ大陸をたすき掛けにした地方が含まれる。
  アジアでは罹患数は減少しており、インドの大浸淫の地域はラジャスタン、マハラストラ、オリッサ、マドラス、ウッターパラデシュ、アンドラパラデシュとアンダマン・ニコラス島となっている。パキスタンでは北東と南東地方に多く、カラチでもしばしば診断される。サウジアラビアではジッダより南方と紅海の北方沿岸、及び内陸部にある。イランにもラリスタン地方に流行地域があり、イラクではチグリス・ユーフラテス川に挟まれた西部の狭い砂漠地帯に見られる。イエメン、アラブ首長国連邦、シリア南部にもある。
  アフリカではメジナ虫症はギニア地方と西アフリカサヘル地方に広く浸淫している。モウリタニア、マリ、セネガル東部(この3国からのフランスへの移民労働者が大半のメジナ虫症を持ち込む)、ギニア東部、ブルキナファソ、ナイジェリア、チャド南部、象牙海岸、ガーナの北西と北東部が大きな被害を受けている。メジナ虫は同様にリベリア、トーゴ、ベニン、カメルーン、ナイジェリア(イバダン地方)にもある。東側ではスーダン南部、エリトリアにまで達するアデン湾北側近く、となっている。
 東アフリカではついにはソマリア、ウガンダ北部にまで見られるようになった。
  メジナ虫症は奴隷交易によって、アンチル諸島やギアナ、ブラジルにも広まったが、今日ではこれらの地域からは消失している。
 


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