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症状


  回旋糸状虫 症は再感染を繰り返すことによって、3つの症候群を引き起こす。皮膚の症候群はオンコ皮膚症で、腫瘤症候群はonchocercomeと呼ばれ、眼症候群では角膜炎、虹彩炎、脈絡網膜炎、眼神経病変を生じる(図1)。
図1

 
 無症候性ミクロフィラリア皮膚症
  浸淫地域で集団検診で皮膚生検を行なうと、臨床症状を示さないミクロフィラリア保有者を頻繁に見付ける。この現象は《無症候性ミクロフィラリア血症》に分類され、その他の糸状虫 症でも観察されるもので、恐らく同様な機構で起こるものである。このような寄生虫保有者は疫学上重大な役割を果たしている。
 
 皮膚症候群
  掻痒感が生じることがあり、擦過傷を広範に引き起こす(図2)。他の皮膚病変も合併する。早期から持続して見られ、ときには発疹になる。
図2

  アフリカでは皮膚病変は体幹下部が主体で、臀部、大腿、脛骨前部に多い。初期の色素沈着部位は黒色の肌では見分けにくい。痒《craw-craw 》という糸状虫 性痒疹は強い掻痒感があり、いろいろな形の丘疹が身体に多数出るのが特徴で、ときには水疱や膿疱を作る。《橙皮》様の限局性のリンパ浮腫が合併することがある。ある患者では皮膚が肥厚し、乾燥して落屑を生じて、《とかげ皮》様に苔せん化する。晩期には下肢や会陰部が脱色して《豹皮》様になる。最終的には萎縮して、乾燥して脆くなり、弾性のない皺だらけの皮膚になる。
図3

  イエメンではSowda (アラビア語で黒)が地域的にあり、病変はふつう下肢で、時には全身に生じる。皮膚は掻痒感があり、黒ずんで肥厚し、丘疹で覆われる。
  ラテンアメリカでは皮膚病変は体の高いところに出来るのが興味深い。若年者の顔面には《側面丹毒》と呼ばれる丹毒様の有痛性痒疹が生じる。年配者には《mal morado》という斑状丘疹が頭部、頚部、上腕、胸部に生じ、皮膚は軽度の黒ずみに脱色を伴う。
 
 腫瘤症候群
  オンコセルコーマ(同義語:回旋糸状虫 性結節または嚢胞)は糸状虫 の成虫のいくらかが嚢胞化して出来る(図4.結節の割面に多数の成虫を見る)。その数は1−100と様々で、平均10個である。大きさはエンドウ豆大からソラ豆大で、無痛性で固く、指で弾力性を感じる。幾つかの結節が多数の分葉を呈することがあり、時には皮膚または皮下組織に癒着することがある。骨面の表層にあれば容易に触知され、アフリカではしばしば長骨転子部、仙骨部、腸骨頂部、胸廓に、アメリカでは頭頚部に見られる。化膿することはなく、石灰化は希である。切除は容易である。
図4

 眼症候群
  回旋糸状虫 症の眼病変または《河川盲》は罹患期間と感染の重篤度に依存する。本症は恐らくミクロフィラリアの死骸が眼および宿主組織(遅延性過敏反応及び/又は自己免疫性反応)に作用するためである。アフリカ、ラテンアメリカ、イエメンでよく認められるようである。発症する年令は、集団中の感染の重篤度に平行している。アフリカのサバンナ地帯では、超浸淫中の村落は水辺に沿って位置しており、両眼へのミクロフィラリアの侵襲は幼少期に始まり、最も若い者では20歳前に失明する。西アフリカでは、サバンナ地帯の集落での失明の危険度は森林地帯でのそれより高い。眼症状の出現は幾つかの疫学的な因子に依存する。職業(農民)、年令、性(男に頻度が高い)、頭部に結節があること、側頭眼瞼接合部の皮膚生検でのミクロフィラリアの重篤度が挙げられる。
 眼球からのミクロフィラリアの検出:眼球を指圧して、スリットランプを用いると、ミクロフィラリアが前房内に動いているところが明らかとなる。頭を1分間低くして行なうとさらに効果がある。角膜、水晶体後部、ブドウ膜部にミクロフィラリアを検出することは希である。
 
 角膜炎:潰瘍性角膜炎では角膜は混濁し、直径0.5-1cm大の円形で綿玉のような病変を作る。この混濁は上皮直下から角膜の縁辺に向かって選択的に深くなる。視野狭窄はなく、最終的に消失することもある。
 硬化性角膜炎はより重篤で、一般に晩期に始まり、角膜下部に《半月様角膜炎》を形成する。角膜の白班は当初蒼白だが、色素沈着し、血管増殖して、急速に角膜の下から上全体に広がる。この《回旋糸状虫 性パンヌス》は両側性で、失明を招く。
 
 虹彩炎:良性のブドウ膜炎は頻繁で、他の病因との鑑別が難しい。毛様体の貫入を伴った重症の弾性部の炎症(角膜周囲の赤色環が時折周縁部の色素沈着を遮蔽する)、前房からの浸出(下方が蒼白或いは色素沈着して血管増殖した、偽性前房蓄膿症として認められることがある)、不同瞳孔(洋梨型の変形としばしば癒着があり、二次性緑内障の元となる)が見られる。虹彩の萎縮は一定して見られることが多いが、特異的なものではない。
 
 網脈絡膜炎:眼球底部の検査で見つかる。ふつう初期には乳頭部外側で黄班部の側頭寄りに生ずる。その後後部極に広範な病変を形成するが、長期間黄班に影響しない。網膜は縁辺が単純性の浮腫を呈す。その上皮は色素沈着して破壊され、不整となる。最終的に黒色または赤褐色の色素が周辺全体に集積し、班板は境界明瞭に脱色して見える。脈絡膜は網膜の色素沈着が消失していればはっきりと観察され、顆粒状に見える。血管は黄色または白色化している。最も進行すると、乾いた泥状を呈し、亀裂のある Hissette-Ridley型網脈絡膜炎となる。
 
 後部神経萎縮:ふつうは眼部の他の病変と合併する。乳頭は萎縮し、蒼白で蝋状となり、その周囲は色素沈着する。網膜の血管は厚く被覆されたようになる。(図6)
図6

   その他の臨床症状
 リンパ管に見られるもの:回旋糸状虫 性皮膚炎の領域にあるリンパ節に、無痛性のリンパ節炎が多数見られる。アフリカでは鼠径部と大腿部に生じ、時折《鼠径下垂》が起こる。組織学的に、炎症を伴ったリンパ節は次第にミクロフィラリアを内包して、繊維性変化を示し、好酸球と上皮性巨細胞を多含した肉芽を作る。回旋糸状虫 性象皮病はカメルーン南部を除いて見られないようである。
 全身性回旋糸状虫 症:O.volvulusのミクロフィラリアが時々血液、脈管、肝、脾、腎、尿肺、髄液、喀痰、膣分泌液などに認められる。その頻度や臨床上の重要性については未定である。

 


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