成虫の皮下跛行:不快な蟻走感や局所の掻痒が生じる。成虫は索状に触れ、可動性があり、毎分1cmの速さで移動する。これはいずれ軟部組織内で石灰化することがある。治療はdiethylcarbamazineによる。この薬を使うと、成虫が皮膚表面に再び現われる。
Calabar 浮腫: Calabarはナイジェリアのビアフラ地方にある地名で、 Calabar浮腫は一過性で移動性の病態生理不明の症状である。上腕、顔面、胸に突っ張り感を伴い、数時間から数日続く。
論争中の合併症
神経学的合併症:半身不随、髄膜炎、脳炎症状が認められたとの報告がある。疾患の経過は15年を越えるため、たくさんの所見が出現することがあり、誤って寄生虫に因るものと見做される。しかしながら、ミクロフィラリアが濃厚な場合、diethylcarbamazineを用いた治療で脳炎が引き起こされたり増悪したりする事実が確認されている。ミクロフィラリアが急激に殺滅されると劇的なアレルギー反応につながったり、一過性の構音障害になったりする。
ロア糸状虫 症の髄膜炎症候群では全く異なる問題点がある。幾つかの誤謬の元は、原因と結果の2つの間を安易に結びつけることにある。腰椎穿刺をすれば血管を損傷し、血中由来のミクロフィラリアが髄液中に明らかとなるかも知れない。この他にも非寄生虫性の障害に因り血液−脳関門が破られて、髄液中に虫が入り込む可能性がある。アフリカの糸状虫 症の経過中には結核性髄膜炎が特に見られる。結論として、髄液中にミクロフィラリアが存在することは、強く臨床所見として引用されない。一方で同様に糸状虫 性脳炎または脳髄膜炎の診断を慎重に検討する余地も残されている。
心症状:Loefflerの好酸球性壁側繊維性心内膜炎はアフリカでは欧州ほど希でない。全室性ときに右心性心不全が基本となり、血中の好酸球が増加する。この血行動態では収縮性心外膜炎を引き起こす。剖検では、弁を中心に濃密な壁側繊維性心内膜炎が常に見られ、心筋の繊維症と心室内血栓を認める。閉塞性大動脈炎と小動脈炎が異なる血管に散見され、しばしば近位の血管周囲部に境界不整の血管周囲炎が合併する。(欠乏性、細菌性、ウイルス性など)異なる病因で糸状虫 抗原の免疫反応が惹起されるのであろう、という仮説が好んで引用される。それでも心内膜の繊維化は晩期の合併症で現われるため、証明は困難である。このような場合、血中にミクロフィラリアは存在せず、免疫学的検査が重要な方向付けとなる。
腎症状:ロア糸状虫症には腎症の記載がある。これは時として、その起源が本症に因るものか確定が難しいことがある。それでも、寄生虫に感染後数年して、蛋白尿が出現したり、糸球体や間質に多数のミクロフィラリアが観察されたり、特異的治療の開始時に一時的な蛋白尿の上昇が認められ、治療後はある程度の改善があることから、この因果関係が支持されている。腎生検で明らかになる病変は特異的なものでない。間質性腎炎や糸球体毛細管の変性に類似した、他の腎性疾患にも見られるような病変がある。電子顕微鏡下では基底膜外に沈着物を認める。
病原性には議論が多い。毛細管外にミクロフィラリアが抜けるための外傷性、糸球体にミクロフィラリアが詰まるための機械性、ミクロフィラリアが溶解して放出される基質の抗原によって引き起こされる免疫性、といった考え方がある。 フィラリアの抗原複合体の免疫蛍光で基底膜外に抗体があるか否かの証明が、この最近出された仮説を支持する論拠となろう。
腎病変の治療は微妙である。もしも腎症の原因を糸状虫 とするならば、それを治療するのが理屈に適う。しかし免疫学的機構が作用していると考えるならば、腎病変を悪化される恐れがある。
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