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疫学
  糞線虫S.stercoralisは、雌の単為生殖によって子孫を増やすという特異な寄生形式を取る。雌成虫は長さが2-3mmで、食道は1ヵ所に膨大部を有す。これはヒトの十二指腸粘膜の奥深くにはまり込むようにして寄生しているが、吸血性ではない。生活史は特に複雑である。単為生殖の雌成虫は虫卵を有し、これは小腸内で産卵する。そこを離れた幼虫は、その食道に2つの膨大部をもつので、ラブジチス型という(図1)。この先には3つの運命が可能性としてある(図2)。

図1 図2

  性別のない自由生活世代は、外界の条件が発育に望ましくない(気温20℃以下で湿度が十分高くない)ときに、直接発育する。ラブジチス型幼虫が糞便から現われ、外界で直接感染型のフィラリア型幼虫(図3)に変態する。裸足でぬかるみの中を歩いたり、庭先の水溜まりや池で行水することで、ヒトには経皮的に感染する。経口感染は例外的である。表皮を突き抜けた後は、幼虫は血流に乗って右心から肺に至り、ここで方向を変えて細気管支、気管支、気管、気管−食道分岐部と上行する。さらに嚥下され、幽門を越えて、病原性のある雌虫になるのである。

図3

  性別のある自由生活世代(図4・雄と雌虫)は間接発育または異種生成(heterogonique )といい、外界の条件が発育に好ましい(気温が20℃を超え、湿度がある)場合出現する。ラブジチス型幼虫は脱皮をして雌雄の成虫になる。成熟した雌は卵を持ち、《第2世代》にあたるラブジチス型幼虫が孵化する(これとは逆に、生れつき《第1世代》のラブジチス型幼虫は、病原性の雌ということになる)。この幼虫はフィラリア型幼虫に変態し、経皮的にヒトに感染する。つまり外界で、寄生虫が増殖する生殖方式を取る。生活史の最後の段階は先に述べたものと同じである。

図4

  寄生世代の生活環、或いは体内での自家感染は短絡的な生活環を形成し、感染者の腸管内でラブジチス型幼虫からフィラリア型に、外界を経ずに直接変態する。さもなければ、おそらく肛門周囲部か腹壁の皮膚あたりで、直接に経皮感染している。このことは、雌虫の寿命が比較的短いにも関わらず、30年以上も感染が続いた、という事例からも説明がつく。
  糞線虫は地球上の暑くて湿度の高い地域に分布する。中南米、アンチル諸島、アフリカの熱帯地域、マグレブ、ナイル川流域、マダガスカル、イベリア半島、イタリア、バルカン、東南アジアがそうである(図5)。この寄生虫は鈎虫やビルハルツ住血吸虫とだいたい同じ所に一緒に分布し、東南アジアからの難民、西アフリカやアンチル諸島からの旅行者では、しばしば好酸球血症の原因となっている。

図5

 


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