寄生の生活史は3期にわたる。まず外界にあり、第2期にはヒトの臓器の組織中に、第3期は消化管にである(図4)。小腸上部にいる成熟した雌は糞のなかに卵を産み落とす。この虫卵は4-8分裂するが、幼虫包蔵卵ではない(図5・8分割した卵)。外界で望ましい条件となると(温度の上昇、湿り気、適当な土壌、十分な酸素)、虫卵は成熟して24時間中に孵化(図6)して(食道の2ヵ所に膨隆部をもった)ラブジチス型幼虫(図7)となる。これは24時間以内にフィラリア型幼虫(食道膨隆部が1つ)に変態する。そして5−10時間後にはフィラリア型幼虫は脱皮を経て、被鞘化する。動き回ったりじっとしたりして、最終的には特に湿った土や泥のなかで、感染型幼虫になる。ヒトへの感染は 一般に鈎虫は2種とも経皮、経口の両方で人体に侵入すると考えられている。感染幼虫の授乳、経胎盤感染も稀に起こる。日本語の図説には、A.duodenaleは経口、N.americanusは経皮が主と書かれている。
。被鞘化したストロンギロイド型幼虫は皮膚で活発化され、脱鞘する。血流、リンパ流にのって心臓から、肺動脈のすっと末梢にまで至る。血行路を離れて気道に入り、肺胞壁を越えて(図8・肺内の幼虫)細気管支、気管支、気管を上行して気管−食道分岐部に、感染第4日に到達する。咳嗽と嚥下運動がうまく連動すると、幼虫は食道、胃、十二指腸と消化管を上下に動く。2回の脱皮後、幼虫は成虫に変わり、感染40日後から糞便中に虫卵を排出するという。
鈎虫症は高温多湿の国ではどこでも流行している(図9)。熱帯地域ではN.americanusが特に猛威をふるい、アフリカの中部、アメリカ大陸(奴隷交易のとき持ち込まれた)ではそうであるが、アジア、オセアニアでは均等に分布している。亜熱帯、温帯地域ではむしろ、A.duodenaleを見付けることが多い。地中海沿岸や中東、インド、日本がそうである。熱帯の鈎虫症の頻度はいくつかの要素を持っている。高温多湿の気候は幼虫の成長に好ましい。伝播は年中通して起こっているが、雨期の終わりに最高となる。糞便の衛生が欠けていたり、ましてや人糞を農作に利用する(東南アジアで顕著)ことは土中に回虫の幼虫を膨大な数に増やすことになる。そして、農作業などで土仕事をしたり、子供たちが裸足で歩くことにより、感染が繰り返される。温帯では鈎虫症は稀で、炭坑の坑道や地下道のような局所的に高温多湿の、職業病の起こるような所で、流行するに過ぎない。
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