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 アメーバ症の治療


治療薬
抗アメーバ薬にはA)組織移行型(全身型)、b)接触型(腸管型)、c) 抗生物質の3つの型がある(図1)

図1


組織移行型抗アメーバ薬:本剤は血行性で組織に深く浸透して、病原型に作用する。
emetineはイペカに含まれるアルカロイドで、毒性が高い。今日では以前ほど用いられない。運動神経に感受性の高い多発性神経炎や重症の心筋炎を起こすことがある。
2-dehydroemetine (Dehydroemetine) は emetineの合成物の1つで、速やかに排泄されるため、天然のemetine より毒性が少ない。本剤は急速に利用されなくなっている。投与方法はふつう注射で、皮内注射または筋肉内注射で、薬用量は1mg/kg/dayである。重症例では増量して用いられる(1.5mg/kg/dayかそれ以上)。12時間ごとに1日2回投与する。2-dehydroemetineは同様に、10mg錠で経口投与することが出来る。処方は、腸アメーバ 症では1mg/kg/dayで10日間、肝アメーバ症では1.5mg/kg/dayで10−15日間である。
5-nitro-imidazole系は組織内アメーバの特効薬で、dehydroemetineと同等かそれ以上の効果がある。投与方法は経口または静脈内で、肝に選択的に蓄積する。本剤は肝アメーバ症に特に効果があり、肝の代謝経路で分解されることなく組織に広く浸透するが、大腸の粘膜面へはごく僅かかゼロである。 5-nitro-imidazole系の筆頭に挙げられるのがmetronidazole (Flagyl)である。剤形は 250mgと 500mgで、大人には1.5gから2gを1日何回かに分けて、7-10日間投与する。小児に日常用いられる薬用量は、30-40mg/kg/day、分4とする。消化器の副作用(悪心、嘔吐)やときどき目眩が見られる。secnidazole(Flagentyl)、tinidazole(Fasigyne)および ornidazole(Tiberal)化学的に同族で効果も同等であるが、排泄時間が長く、短期間の投与(1-5日)に制限される。投与法は500mg 錠と(ornidazoleでは注射用アンプル)で、1日1回2g、小児には40-50mg/kg/dayとする。アメーバ赤痢には1日で十分であるが、肝アメーバ症には3-5日間治療が必要である。
この他の組織移行型抗アメーバ薬、amino-4-quinoleine系(chloroquine(Nivaquine), amodaiquine(Flavoquine))は用いられていない。

接触型抗アメーバ薬:大腸の粘膜面に寄生する非病原型に効果がある。投与法は全て経口である。difetarsone(Bemarsal)はときおり治療が長引く原因となり、頭痛、下痢、びらんを引き起こす。oxyquinoleine系とhalogenee系(沃素または臭素系)は広く用いられている。沃度中毒は稀で、本剤よりも沃度を多含しているdiiodohyroxyquinoleine (Direxiode)でも同様である。 chloroiodoquineまたはclioquinol (Entero-Vioforme)はいろいろ論争があったが、亜急性脊髄視神経障害(SMON)の原因であるとされ、1985年に発売中止となった。 chloroiodoquine(Enterovioforme)或いはその含有剤(Mexaforme, Mexase, Mucibacter) は例外的に商標化されており、この他のmethylbromo oxyquinoleine系(Intetrix)でも同類の事故が起こる可能性があろう。
これら以外の抗アメーバ薬として以下の薬剤がある。furazolidone(Furozane)はmonoamine oxydase 阻害剤で、sulfate de paromomycinea (Humatin)は抗生剤の一種である。amides誘導体で、フランスでは商品化されていないが、英米やラテンアメリカ諸国では接触型抗アメーバ薬とされている。これらにはdeloxanide(Furamide)、clefamide(Mebinol)、 etofamide、teclozanがある。経口の2-dehydroemetineと nitro-imidazoleは接触型よりも組織型抗アメーバ薬と考えられている。これらの使用は薬用量が増加したり、治療が長引いたりすることになる。

補強剤:経口抗生物質は細菌の重感染を防ぐのに用いられる。cycline系(Tetracycline)は大人には2g/day、小児には 50mg/kg/day投与される。 spiramycine(Rovamycine)は同じ薬用量で前者より頻繁に使われているが、便培養で分離された病原菌に対しては、より強力な抗生剤に依存することが多い。消化管薬(kaolin, attapulgite)、吸着剤(charbon)、抗蠕動薬、鎮静剤の投与と栄養管理が対症療法となる。

治療薬の配合:接触型抗生物質と抗アメーバ薬の合剤は、tetracyclineとoxyquinoleine iodee(Direxiode)とphosphate de chloroquineが配合されたDiapax以外にない。処方は、1日4カプセルを4日間、大人ではそれ以上とすることもある。

治療の適応

腸アメーバ症

急性腸アメーバ症:真性赤痢または下痢があり、病原型が糞便中から検出されたときには、組織移行型抗アメーバ薬で治療に入らねばならない。
metronidazole(Flagyl)またはその配合体、或いは2-dehydroemetine(Dehydroemetine)の適応がある。きちんとした治療を行なえば、必ず臨床症状、直腸鏡所見、糞便検査上改善を認め、急性期を乗り越える。抗生剤、止痢剤、吸着剤はほとんど用いられない。これに反し、補助的処方として、接触型抗アメーバ薬は不可欠である。次のような処方例がある。
1)第1週目:組織移行型抗アメーバ薬として、5-nitro-imidazole系, 30mg/kg/day
2)第2週目:接触型抗アメーバ薬と腸管の保護剤

亜急性腸アメーバ症:悪性型は稀であり、2-dehydroemetineを多めに(2mg/kg/day)、または5-nitro-imidazole系の静注用(Flagyl, Tiberal)、および経口または注射の抗生剤を用いる。電解質異常や栄養不良のときは輸液を行い、一時的な盲腸や大腸の人工肛門造設術や場合によっては大腸吻合術を行なう。このような治療にも拘らず、予後は芳しくない。

アメーバ性肉芽腫:臨床上疑いのあるときは、組織移行型抗アメーバ薬で溶解を試みる。しばしば内科的な対応では診断が付かないことがあり、その際は癌に準じた大がかりな外科的切除が行なわれる。

アメーバ後慢性大腸炎:対症療法だけ行なう。セルロースや腸管に刺激を与えるもの(脂肪、コーヒー、ソース、香辛料、牛乳)を避ける。なかには腸管へ局所的に、炭、カオリン、チタンを進んで使う者がいる。抗蠕動薬(atropine, Buscopan)は疼痛のある型に適応がある。阿片カンフルチンキのDiarsed またはImodium は下痢が合併したときに用いる。パラフィン油や粘漿薬は頑固な便秘によい。便培養の結果によっては、消毒薬や抗真菌薬を処方する。鎮静薬は心因性の大腸症状に効果がある。Plombieresや Chantel-Guyonには温泉療法の信奉者が集まる。糞便中から非病原型や嚢子が見つかった場合以外は、接触型抗アメーバ薬の適応はない。急性の株が急激に増殖したり、周囲へ感染を広めるのを防ぐためである。幾つかの抗アメーバ薬(Bemarsal, Direxiode) は10-20日間使ったら変更することもあろう。

アメーバの不顕性感染:無症状の嚢子または非病原型の保有者の治療は、接触型抗アメーバ薬を10日間1クールで行なえばよい。

肝アメーバ症
内科的治療: 5-nitro-imidazole系または2-dehydroemetineが全ての症例で必要である。正しい治療を行なえば、それだけで臨床症状の改善をみる(7日以内に解熱する)。また臨床検査上も(6週間以内の血沈正常化は稀)、画像上も(病変部は3−6ヵ月以内に消滅)同様である。糞便検査の結果次第では、接触型抗アメーバ薬による補助的な治療が必要となる。

排膿:抗アメーバ薬の治療がうまく行かない症例では行なわねばならない。右葉の膿瘍の穿刺では、大半が危険を伴わずに効率よく行なえるが、出来れば超音波画像で貯留部を観察しながらするのがよい。不都合もなく繰り返して行なうことが出来る。外科的排膿法はうまく体系化されている。腹側に近いところにある膿瘍は、穿刺してから造影剤を注入して、辺縁と胆道との関係を明確にする。次に大きく開いて、膿を回収し、壁の性状を寄生虫学的、細菌学的、病理解剖学的に調べる。膿は出来るだけ完全に吸引する。ドレーンを数日間留置すれば、ふつう空洞部は完全に縮小する。例外的に肝切除術、または硬化した壁の古いアメーバ性膿瘍や嚢子の排膿処置をしなければならないことがある。穿刺するか外科的切除とするかの選択は、個人の慣れに依る。下方や左葉の膿瘍は、超音波画像下で探針し穿刺しないと危険である。これに対し、多発性や陳旧性(ときどき嚢子か何かが含まれている)の膿瘍を外科的に排膿するのは好ましくない。一度排膿すると、膿瘍は密集するようになり、いつも結果的に内科治療となる。

ある種の合併症に対する特別処置:膿瘍が破裂し、腹腔内に穿破、穿通した場合は、緊急の開腹術をしなければならない。後腹膜への膿瘍の流出でも、同じように吸引しなくてはならない。遷延性黄疸か大血管(下大静脈、門脈)の圧迫を合併する。膿胸と心外膜炎は手術の適応となる。胸膜は漿液性繊維化、肺には同様の膿瘍(気管支と交通している)が見られる。内科的治療で改善することもある。非常にたくさんの多発性膿瘍が左葉にあると合併症やその他の危険が高くなり、大がかりな手術となる。

その他の寄生部位

肺胸膜や皮膚への感染では、組織移行型抗アメーバ薬で十分である。タンポナーデを伴った心外膜炎、脳やひ臓の膿瘍では、ときどき外科的な切開排膿を加えなければならないことがある。


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