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 歴史と現状


  このアメーバが正式に発見されるまでは、イペカ(学名;Uragoga ipecacuanha*)の根の抽出物で治る赤痢様症候群として知られていた。フランスのDauphin はこれを詳細に記載している。1875年にLoesh はロシアで、患者の糞便中から血球貪食性アメーバ(図1)を初めて分離した。 これより少し後にKochとKartulisはこれの病理的役割を証明した。1893年Quincke とRossは嚢子(図2)を発見し、これが感染型であることを証明した。さらに大きな進歩となったのは、長い間 Entamoeba dysenteriaeと呼ばれていたのが、 E.histolyticaと生物学的に認識されたことである。しかしながら、非病原性が病原性に変化する過程の決定因子などは、不明確なままであった。臨床医学や病態生理学で数えきれない程の研究がなされ、ごく最近赤痢アメーバのザイモデームの研究が、 BlancとSiguier とDeschiens の一派から発表された。治療については、1922年Sir Leonard Rogersによって emetineが使われてから、長い間にいろいろな体系が作られた。一方でヒ素系治療薬が、1960年の2-dehydroemetine合成体と、特にmetronidazole に代表される5-nitro-imidazole系の登場以降、ますます豊富になっている。
  今日に至っても、アメーバ赤痢は最も広く見られる寄生虫疾患となっている。WHO(世界保健機関)によれば、世界人口の10%に当たる人々が感染しているとされる。
 *ipeca; 吐根とも呼ばれるブラジル産アカネ科の低木で、催吐性がある。  

図1


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