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 診断


  寄生体の存在を証明するために、血液、骨髄、神経節、胎盤、ときには脳からの検体を使って、直接検査を行なう。組織片は塗抹標本にして、 May-Grunwald-GiemsaまたはRAL555で染色するか、直接免疫蛍光法か免疫組織化学法で観察する。ハツカネズミの腹腔内に接種して分離する方法は胎盤を用いた検査では微弱な反応しかなく、他の組織からのものではさらに弱い。最終結果を得るのに3週間かかる。これよりもっと早く判定できる、細胞系培地に置き替われつつある。
  血清検査は本症の診断に欠かせないもので、経過判定に用いられる。トキソプラズマは細胞に混入する微生物なので、血清学上たくさんの膜抗原が抗原分画に認められる。宿主が生き続ける間、特異抗体が存在するのは、トキソプラズマが生存し続けるからである。
  溶解試験(Sabin-feldman 色素試験)は1948年から典拠反応となっている。これにはハツカネズミの腹水から得られた、生きたトキソプラズマが抗原として用いられている。それ故、抗体が存在する(感染者の血清)とき、補体様因子(溶血性の補体、血清学的に陰性のヒト血清)があるときに寄生体の膜表面での免疫学的な干渉があり、トキソプラズマは死滅する。この破壊により、メチレンブルーの鮮やかな発色は殆ど得られない。然もなければ、屈折性のないコントラストのはっきりした発色が見られる。抗体価は50%の虫体溶解した最大希釈倍率をとる。WHO(世界保健機関)から標準血清が国際規格として用意されている。検出される抗体はIgGが主であるが、これは後天性トキソプラズマ症の場合、感染後1週間しないと血中に出現しない。抗体価は1〜3ヵ月間上昇し、2,000-4,000IU/mlに増加している。その後3ヵ月から1年間は高値で留まる。これは急激に減少して、最終的に10−200IU/mlに落ち着く。専門の臨床検査技師以外はこの反応は実用的でない。間接的免疫蛍光法は膜抗原を捕らえるものである。ホルマリン処理されたトキソプラズマの懸濁液をスライドグラス上に取る。検体の血清と混ぜた後、青菫色の蛍光処理を施した抗ヒトグロブリン溶液と混ぜ合わせる。特異抗体は寄生体の膜表面と結合し、周囲を青っぽく縁取る。逆性の色素がコントラストを付けるために、好んで使われる。ある一定以上の蛍光を発する最大希釈倍率を抗体価とする。この結果は溶解試験のそれよりも主観的である。この反応は簡便で迅速である。本法は典拠試験に価する、優れたトキソプラズマの検出法である。Neilによれば、国際単位で表記する場合、その結果は溶解試験よりも本試験で表されることが多い。蛍光付き抗IgM抗体を用いて、特異抗体のIgM分画を検出するため、寄生体と結合すること以外は滅多に反応しない。 Remington試験はこの免疫蛍光法の変法で、最近の感染はほとんど捉えないが、成人の検体で量の多少による誤診がほとんどない。
  トキソプラズマの直接凝集反応(Fulton法)は、血清を2-mercapto-ethanolで処理後検査するが、疑わしいもの全てに反応するわけではない。
  HS凝集は感受性が新たに上がったが、検査の質を求めるものには殆ど用いられず、IgGを大量に調べるときに使われる。補体結合の手法を用いており、簡便で、特異的で、感受性が非常に高い。結果は、世界保健機関のレポートや証明書では、IU/mlで表記される。   ELISA法は、寄生体の膜抗原と細胞質抗原を適当な割合に混合したものを用いる。標準的な抗原をうまく調合してあり、典拠試験との比較は困難でない。自動的に、しかも客観的に、大量の検体を処理できる利点がある。ELISAはNaot-Remington法の免疫蛍光抗体法よりさらに特異性が高い、《逆の》方法である。
ISAGA(Immuno-Sorbent Agglutination Assay)はトキソプラズマ全体を免疫学的に捕捉するもので、より感受性の高い、IgMを調べる検査である。Desmontsらによれば陽性となる物質が長期にわたり存在するため、結果の判定には誤りが生じ得る。新生児での診断には欠かせないものとなっている。
  改良型の血球凝集試験は、近年再び脚光を浴びている。感受性があり、大量の検体に利用される。血清を2-mercapto-ethanolで処理し、IgMを調べる。結果は使用する抗原の赤血球への感受性に依りばらつきがある。
  この他のアイソタイプによる特異抗体の検査には、ELISAやISAGAを用いたIgAとIgE検出があるが、これらにも限界がある。
  ラテックス反応は、IgG−IgM結合体を感知する検査である。もともと準備が簡便で、感受性が良く、精密な迅速診断法である。
  トキソプラズマの皮内反応は、事実上行なわれていない。遺伝子増殖法(Polymerase Chain Reaction, PCR)は現在開発段階で、将来トキソプラズマ症の診断法に加わる可能性がある。
  小児や大人の症例では、抗体価が長期にわたり上昇し続けるため、いつ頃感染したか推定が難しい。それ故、事前に血清陰性を知っておけば、血清交替を確認できる。3週間ほど間をおいて、うまく検体を2回に分けて取れば、抗体価の上昇を認め、最近の感染を証明するのには望ましい。中程度の抗体価上昇、数週間以内の抗体上昇では判定が難しい。igMを調べても、大体いつ頃感染したかを決めるのには、補助的な要素にしかならない。
  妊婦の場合、胎児の重篤度と治療の必要性は、本症が潜在性のため、集団検診での結果にかかる。妊娠中の集団検診が望ましい。フランスでは集団検診は、婚前検査の一項に法律で規定されている。もし初回の血清検査で、妊娠中の感染の可能性があるときには、検査を繰り返し、胎児への危険性と治療の必要性を考慮する。
  新生児の場合、臨床所見がなくても神経・眼科的な病変が進行する恐れがあるため、寄生虫学的な診断はきちんと付ける。生下時の血清は母体由来の抗体があるため、それだけで幼児の健康状態を即断できない。生後6−10ヵ月で母体からの抗体が消失し、母体内感染により幼児自身が産生した抗体が最終的に残存する。この段階で、全身治療は不可能である。感染した幼児の体内で抗体が着実に産生されていくカーブは、母体由来の抗体が急速に消失していくのと交差する形となる。早期診断上重要なことは、 Pinonによれば次の特別な検査を付け加えることである。臍帯血をハツカネズミに接種すること、母体血と臍帯血の抗体価を比較すること、連続希釈による特異的IgM値を調べ、抗体価の変化から免疫学的に最近の経過を評価すること、血清の免疫電気泳動を行なうこと、である。妊娠20−24週の間、臍帯からの胎児血や羊水の摂取は、新たな感染の可能性がないか調べるのに使われる。ISAGAによる特異的IgMの検出、Daffosの接種法が行なわれる。
  後天性免疫不全の場合、トキソプラズマ症では普通の血清学的な変化を示さないが、特異的な感染の経過は認められる。
 
  脳トキソプラズマでは髄液検査を行い、髄液と血清の細胞数を比較するが、しばしば期待外れの結果に終わる。脳生検はたまに行なわれるに留まっている。
 
  治療による免疫低下状態では、抗体は痕跡しかなく、不可解な反応を示すのが普通である。

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