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Melarsoprol(Mel B, Arsobal)
代表的な抗トリパノソーマ薬で、実用される唯一の砒素製剤である。本剤は三価の砒素、melarsen-oxyde、BAL(British Anti-Lewisite) の合成からなる。propylene glycolの3.6%溶液に調製され、3.6mg/kg/day又は1ml/10kg/dayで 5.5mlを越えない量で経静脈投与する。丸2日間で3回注射する。この投薬法は1回、2回又は3回繰り返すことが可能である。その際は15日の休薬期間を置き、注射の合計が12回を越えないようにする。主要な注意点は、必ず静注すること、皮下組織に漏れると痂皮を作る。注射器と針は完全に乾燥させること、Mel Bは水に沈澱する。合併症を予め治療しておくこと。病院での治療では臨床記録を付け、注射後12時間は絶食とする、そしてステロイドを投与(prednisone, 0.5-1mg/kg)することである。静脈塞栓や皮膚の壊死といった局所的な障害は頻繁に生じる。初回投与で熱発、悪心、目眩がしばしば見られる。真の不耐忍は治療の第3−4日か第15日、さらに2クール目の初回注射に現われる。汎発性の疼痛、消化管障害、いろいろな発疹(紅斑、紫斑)を伴った発熱は、注意により減らすことが出来る。出血性症候群、無尿は希である。砒素性脳症(頭痛、発熱、連続性痙攣発作)が2−5%の症例で見られ、不幸なことに常に致死的である。要領過多の場合、末梢神経障害、下痢、紅皮症の可能性も考慮する。治療上の問題が生じたときは、直ちにArsobal の投与を中止し、ステロイドを静注して、病気を元の状態にする。アドレナリン1mgを皮下注射で、最初の6時間は1時間毎に、次に4時間毎に投与すると、砒素性脳症に良い効果が出る。これらの危険性はあるが、Mel Bは抗トリパノソーマ剤のなかで最もよく用いられ、全ての病期で一番優れた効果を発揮する。リンパ血中期には1クール3回の注射で十分である。脳髄膜炎期には2−4クール必要となる。この薬用量で90%以上の寛解率を得る。《橙色髄液》を見たら、これは時折Mel Bで引き起こされるので見逃してはならない。これは細胞増多と高蛋白髄液を合併した薬剤性髄膜炎で、数ヵ月間遷延するもので、トリパノソーマ性の脳精髄膜炎が進行したものではない。
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