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 診断


  実験室では原虫そのものを証明する(直接法)と、病原体の寄生により惹起される反応を見る方法(間接法)がある。疾病の時期により検体の採取部位は異なる。汎発期では血、リンパ節、骨髄に発見の糸口があり、中枢限局期では脳脊髄液にある。

 リンパ−血中期、汎発期

 疾病を疑う間接的検査
 血算;赤血球の自己凝集を伴う貧血がある。単球と時に形質球の増大している、白血球増多症がある。形質球の一部は桑の実状に空胞を含有して容積を増した細胞に変化する。これをMott細胞と呼び、特に本症を想起させる(骨髄からも同様に検出される。)。酸性下でSchiff染色を行なうと、PAS陽性顆粒を含むリンパ球が、健康人では最大6%のリンパ球のところが15%まで上昇している。
 血清グロブリン;γグロブリン、さらに精密に云えばIgMの増強が明らかになる。トリパノソーマ症の95%の症例で、この免疫ブロブリンのペア抗体が正常の4倍(しばしば8−16倍)に増大している。この血清IgM比の増加は本症の検査或いはトリパノソーマの発生源調査に特に利用されている。 Mattern式二重拡散法は最小限のガラス器具以外必要としない特別な手技だが、高価な抗IgM抗体がいる。実際には予め抗IgM抗体で処理した寒天上で、放射状免疫拡散法を行なうのが好まれる。寒天を流した器の中心の窪みに抗血清を入れ、周囲に血液を吸収させた後乾燥した濾紙を配置する。拡散環はIgMが上昇した検体ではより強大に出る。濾紙に吸収させ乾燥させた血液なら、現場での採集後実験室までの長距離を持ち帰ることが出来る。

 血沈;1時間に100-150mm と大変亢進している。 Sia反応、Gate反応、Papacostas(ホルマリン−白血球ゲル化)反応が陽性となる。綿状反応*は肝性の血清蛋白の異常に因り変調を来す。
 *Les reactions de foculation.抗原と抗体の濃度が一定のとき混濁が最も速く現われることを利用した、毒素の力価判定等で用いられる沈降反応検査。

 特異的免疫法;間接的免疫蛍光法が(特に T.gambienseの)トリパノソーマ症に、直接凝集法(trypCATT試験)は診断と疫学調査に其々よく用いられている。免疫酵素法(ELISA)は研究段階にある。これはカラ・アザールやシャーガス病の患者血清との交差反応が生じ得るからである。

 確定診断への直接的検査
 血中のトリパノソーマ検出;新鮮血を一滴スライドグラスに取り、カバーグラスをかけて検鏡すると、生きたトリパノソーマが血球間を動いているのが見られる。薄層塗抹標本でも原虫血症が高ければ陽性となる。白血球凝集法、毛細管凝集法、濾過凝集法の三つの凝集法と、 Tobie培地やBrandt培地を使った血液培養、DEAEセルロース管を通す血液濾過は寡少感染の診断に用いられる。感受性のある動物(ハツカネズミ、ガンビア産ラットなど)に血液を腹腔内接種することは、その齧歯類に自然感染(T.lewisi)していない保証がない限り、価値がない。これらは家畜の睡眠病に罹るもので、接種後3日余りして小腸内にトリパノソーマを見る。この実験動物診断法は殆ど用いられない。

 リンパ節内のトリパノソーマ検出;リンパ結節を吸引して得た検体を素早く処理すると、きれいに動いているトリパノソーマが容易に鑑別出来る。逆に塗抹染色は、たくさんの生体産物(フィブリンの沈降物、弾性繊維、結合織)があり紛らわしい。直接法での確定診断は培養か実験動物への接種である。骨髄または脾臓穿刺でトリパノソーマが検出されることもある。
      
 脳脊髄液検査
  理論上は第1期では脳脊髄液は正常である。それでも神経性疾患を予見するための生化学検査として、腰椎穿刺は欠かせない。

 脳脊髄膜炎期、中枢限局期
 血液;普通トリパノソーマは余り多く含まれておらず、形質細胞を見かける。間葉性脳炎期にはガンマグロブリンの全般的な上昇が電気泳動検査により認められ、これは白質脳炎期には特異的なものになる。IgMの割合はずっと上昇したままである。これらの特徴的な血清学的反応は診断に価値がある。

 脳脊髄液;清澄だが高圧で異常となる。リンパ球が増加又は多様化していたり、時折Mott細胞を認める。蛋白量は増大しているが、100mg/dlを越えることは希である。髄液中の蛋白分画には(普通脳脊髄液には存在しない)IgMがしばしば認められ、その割合が10%を越えるときには、トリパノソーマ症の診断は疑いのないものとなる。脳脊髄液からトリパノソーマ症を証明するのは微妙である。大量の髄液を遠心分離して得た凝固塊を観察したり、ガンビア産のラットに接種したりする。免疫学的反応には、髄液を用いた特異的免疫蛍光法がある。
  脳波は両側性にデルタ波が活発化し、睡眠を妨げる(睡眠発作型の睡眠)。CTスキャンでは、びまん性で不均一な低密度域が中心部に楕円形と白質周囲に脱髄の所見として認められ、脳浮腫の所見も合併する。晩期には時折、脳皮質の萎縮の所見を見る。

  ヒトのアフリカ型トリパノソーマ症での生化学的検査では、血液と脳脊髄液のIgM値と特異的抗体の測定が行なわれるが、寄生虫学的な直接検査は常に実施されねばならない。

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