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 トリパノソーマ


  トリパノソーマは細胞外に鞭毛を有す原虫である。ヒト血液中では、錐鞭毛型(trypomastigote, trypanosoma)は紡錐形を呈し、血球間を鞭毛と波動膜を見事に動かして泳ぎ回る。細胞質の発達は鞭毛により外壁と制限されて、鞭毛は後端の動原核(kinetoplaste、又は運動基質ともいう)に前方は自由末端となっている。体長は変化が大きく、最も長く薄い型で40μm、最も短く厚い型で15μm 程度である(カラー図譜IVと第1部、第10章を見よ)。神経節や脳脊髄液中では形態学的に同一である。ヒトに病原性のある、 T.gambienseT.rhodesiense の2種はT.brucei亜科に属する。これらは生息域、伝播形式、臨床症状が異なるが、形態学的な変異は殆どない(表2−1)。 T.gambienseはヒトへ固有に寄生するものと考えられていたが、豚のトリパノソーマでヒトのと同じ酵素配列を示すものが見つかり、疫学上の結果に感染動物の可能性を検討する必要が出てきた。 T.rhodesienseは長い間レイヨウ類*との人畜共通感染症と考えられてきた。本種は実際に家畜に寄生し、ウガンダでの流行の場合、これが必然的にヒトに広まったと云われる。
 
 *レイヨウ類 (les antilopes)とは、ガゼル、ヌーなどのウシ亜科とヤギ亜科を除いたウシ科反芻動物を指す。

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