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疫学
  Toxocara canis(イヌ回虫)は熱帯諸国のイヌの80%に感染しており、フランスでは17%、ベルギーやドイツで18-20%、となっている。成虫は幼若な子イヌの小腸におり、沢山の虫卵(図1)を宿主の糞便中に排出する。幼虫包蔵卵は外界で数ヵ月間感染力をもつ。新たな宿主に経口摂取されると、孵化して幼虫を放出し、小腸壁を通過して肝に至る。子イヌの体内では、これらの幼虫は移行を続け、血流に乗って肺に進み、気道から嚥下されて、小腸で成虫になる。免疫のある成犬では、幼虫は肝や他の臓器で行き止まりとなり、妊娠したイヌは経胎盤または母乳で、子イヌに寄生虫を感染させる。

図1

  ヒトへの感染は、偶発的にT.canisの幼虫包蔵卵を土や水、感染した子イヌの排泄物で汚染された食物を経口摂取することで起こる。小腸内に放出された幼虫は他の臓器に移行し、被殻化またはそのままで数年間生き続けるが、決して成虫にはならない。反復感染の場合、しばしば宿主組織に広範な肉芽反応を引き起こす。
  トキソカラ症は世界中に分布している疾患である。土食症の子供やイヌと雑居している人にこれが頻繁なことから、この感染経路が説明出来る。トキソカラ症は家族内や集団生活をする子供たちで、特に生活水準の低い者に、小流行が起こることがある。   T.cati(ネコ回虫)、ブタのA.suum、ウマのA.equorum、ウシのNeoascaris vitulorumと、恐らくイタチとヘビの回虫が、内臓の幼虫移行症の原因となる。


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